話の花咲く幸せの味
初めての出逢いは、私がまだ小学生だった頃。親戚が手土産として両手いっぱいのドーナツを買ってきてくれたのがきっかけでした。
それまでドーナツといえば駄菓子のヤングドーナツしか知らなかった私は、箱を開けてびっくり仰天。そこには、今まで見たこともないようなドーナツが所狭しと並べられていました。
浮き輪型の大きなドーナツは見るからにフワフワしてて美味しそうだし、中にクリームが入ったやつはコロンとして可愛いらしい。チョコレートをまとったドーナツも素敵だし、くるんとした形のチュロスも見てて楽しい。
こんなにもたくさんの種類のドーナツを見たことがなかった私は、すっかり嬉しくなってしまいました。キラキラした目で飽きもせず箱の中のドーナツを眺め続ける。そんな私を見て、母は苦笑しながら一言。
「どれか一つだけよ。」
そう言われ、真剣に選び出したのがコロンとした形のエンゼルクリームでした。慣れない大きなドーナツを紙で挟んで、そっと持ち上げる。ドキドキしながら一口齧ると、柔らかい生地と白いクリームが口いっぱいに広がってとっても美味しい。
周りを見ると両親をはじめ、手土産を持ってきてくれた親戚たちもドーナツ片手に談笑の真っ最中。和やかな一時に甘いドーナツ。これがミスドとの初めての出逢いでした。今でも優しくて暖かい、大切な思い出です。
あれから数十年。今では親戚で集まる際の定番の手土産がミスドのドーナツになっています。いろいろな種類のドーナツを箱に詰めてもらって皆に手土産として振る舞う。
年月とともに、親戚の顔ぶれもだいぶ変わりました。それでも変わらないものもある。いろんな種類の中から思い思いに好きなドーナツを選んで、それぞれの話に花を咲かせる。顔ぶれは変わろうとも、そこに流れる和やかな空気は変わらない。
今はご時世的に難しいけど、また皆で集まれたら。その時はミスドのドーナツを片手に、話に花を咲かせたいと思います。