随想好日 第二十三話『 氷下魚 』
氷下魚と書いて「カンカイ」と読む。別名"こまい"とも呼ばれるが、その昔調べたところでは、どうやら「姫ダラ」というのが正式だったはずだが。
北緯43度付近の冬の定番と云えばこれが出て来るのが通り相場である。
真っ赤に焼けた達磨ストーブやルンペンストーブの蒸発皿の脇にこの"ナマボセコマイ"を載せて炙る。
漢字で書くともう一丁雰囲気が出る『生干せ氷下魚』となる。
気をつけたいのは「生干し」ではない点だろう。ここは「なまぼせ」に拘りたいところである。
さて炙り始めると部屋にはたちまちのうちに芳ばしい匂いが漂い始める。
皮が焦げ始めた頃合い、小さくパチパチっと皮が爆ぜる音が流れる。焦げすぎないうちにひっくり返し、表面を焼かなくばならないのである。
くだらない話に花咲かせ、ゲラゲラとどうでも良いことで嗤う。
左党は辛口の日本酒だろう。コカ・コーラとの相性も良い。
さて、焼き…… いや、炙りあがった頃合い。
そのまま持つのは熱いのだが、北緯43度近辺の者たちはそのまま指先でつまみ上げると、腹側から尻尾にかけてを軽く揉むのである。
軽く揉むと、腹が割れ、中骨に沿って身離れするのだ。
スルっと、骨を外して頂くわけだが……
さて、ここからが肝心なところとなる。
マヨネーズ派
マヨネーズ・醤油・七味派
大根おろし派
と、食べ方が分かれるのだが、私はマヨネーズ、醤油、七味が鉄板である。
丁度、今ごろの季節から春にかけて。
北緯43度付近の港の防波堤は「こまい釣り」の人々で夜は賑わう。
下処理したものを寒風吹きすさぶ外に一夜干す。
チョロリ、凍るぐらいが余計な水分が飛んでうまくなるのである。
あー、カンカイ喰いてぇなぁ……
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良いお正月でありますように。
世一