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コラム 星野リゾート代表 星野佳路(よしはる)氏の発言に隠れた"本質"

さて、久しぶりに「それらしい」ものを書いてみようと思う。わたしの専門分野であるからして書き口は大上段から振りかぶり、バッサリやらせて頂くので些か読みにくいものとなるであろうことは押さえておいて欲しい。linkの産経新聞さんの記事からも抜粋させていただく。

1.持続可能な訪日市場の姿

星野氏は次のように解説している。
『インバウンド(訪日客)が急増してきた背景に円安があり、足元の円高基調が「必ず(観光業に)マイナスになる」と危機感を示した。持続可能な訪日市場を形成するにはリピーターを増やす努力が欠かせず、来年4月開幕の2025年大阪・関西万博には、大阪市内や地方の魅力発信や周遊観光につなげる役割が求められる~中略~星野氏は「(円が)安いからいま日本へ行こう」という訪日理由が増えている現状に触れた上で、足元の円高基調によって訪日客の伸びが鈍化する可能性を指摘。』

さて、ここでわたしの考え方を書いてしまうと論点の散逸を見ることにもなりそうであるからして、先に星野氏による主要な解説を抜き出してしまおうと思う。

2.需要を減らすべきは正しいのか

『円安が理由の訪日客の増加は「需要の先取りでもある」とも述べ、持続可能な訪日市場の形成には「(為替に)左右されない訪日観光のあり方を考えねばならない」と強調した。~中略~一方、訪日客向けと日本人向けで異なるサービス価格などとする「二重価格」が、オーバーツーリズム(観光公害)対策として日本国内でも注目されている。これに関し、星野氏は「本来は全体(の価格)を高くし、需要を減らすべきで、訪日客だけを高くする仕組みは慎重にすべき」と指摘。そのうえで「日本のもてなしの姿勢として悪い印象を持たれないよう配慮した方法を考えることが大事だ」とした』


 ここで数的根拠を並べてみたところで自己満足の足しにしかならず、旅をされる人々を相手にマウントをとる程度の役にしかたたぬことから、訪日旅客の進捗であり訪日観光消費支出等は置き去りのままに話しを進めたい。
 同時に、星野氏の記者会見の原稿のどの程度が新聞記事に反映されているか判らぬこともあることから、一方的に否定することは控えなければならないだろう。
 産経新聞さんの原稿を搔い摘んでみると……
「インバウンドが増加した要因として円安があり、この状況が続くうちにしっかりとゲストがリピートするための下地づくりをしなければならず、延いてはそれが為替変動をはじめとする影響を及ぼす因子に対するヘッジとなり得る」ということになるのだろう。

 結論を書かせて頂くなら「持続可能な訪日市場」という言葉に対し、今更ながらに違和感を持つ。相変わらずの事業者目線から抜け出せない泣き所を見る思いである。事業者であるからして仕方がないという側面もあるが。
 ただ、云わせて頂くなら、この目線で制度策定に進んでいるうちは「持続可能」も「リピートの蓋然性」も実現は遠い。
 例えば星野氏の言葉に「2025年大阪・関西万博には、大阪市内や地方の魅力発信や周遊観光につなげる役割が求められる」というものがあるが、相変わらず具体的方策であり具体的施策にまでは踏み込んでいない。
■事業者・事業者団体が取り組むべき方策施策
■行政・公共団体が取り組むべき方策施策
■産官学の横断により取り組むべき方策施策
この辺りのグラウンドデザインを日本として何に基づき仕上げるべきか。
星野氏、いつもこの辺りを曖昧にしたままに喋るのである。
本来、星野氏のような立場の人は大きなビジョンをグラウンドデザインとして可視化すべき立場にあられると考えるのだが、どうにも着眼点が小さく狭い。スキなんだけどね。わたし。星野氏。

 リピートとオーバーツーリズム対策が、持続可能な観光市場の成長維持に欠かせないというのであれば「訪日市場」目線は一先ず棚上げし、ゲストの安心と安全の責任担保に対するガバナンスを構築することに汗されてみては如何だろうか。
気候変動による災害レベルの降雨被害、災害レベルの熱波、地震をはじめとする災害。リピートして頂く前提として人命を守り、財産を守るという前提を置き去りにするべきではない。それが正常なホスト国のあり様だ。
 いや、寧ろ人命への責任と財産を守るという責任を可視化することが出来たらゲストはリピートするのである。安心なのだから。それが根っこだ。

お金の使い方は人それぞれの経済力によって左右される。
本来は全体(の価格)を高くし、需要を減らすべきとなると、経済力のない者たちの旅がオーバーツーリズムの原因と云っているようではないか。
それは"ホスト"の責任放棄に繋がるということに気がつかぬか。
Tourismという最も"多様性"に近い文化に取り組む者の言葉としては些か驚かされた思いである。
Tourismとは自己実現機会そのもの。ismである。
国際観光立国として多様なismを受け入れることが出来る切り口を持ち、大きなグラウンドデザインを書き上げて欲しいものである。

"あっち"では何度も書いているが「旅を終わらせないこと」「旅の続きをイメージさせること」そのためには安全で安心できること。
これがTourismに関わる者たちの根っこであるべきことを忘れて欲しくないものである。

文責 飛鳥世一

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