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「社長、一瞬いいっすか?」 「どうぞ」 「あのですね」 「はい、終わり」 話を遮られた横山は苦笑いを浮かべた。 「一瞬なんだろ?」 「いやあ社長、意地が悪いなあ」 「言葉は正しく使おう。で、何かな?」 「あのですね」 口癖のような切り出しに続けて、横山は娘のことを尋ねてきた。昨日偶然、駅の改札口で見掛けたらしい。 「心配になったんで呼び止めたんです。そしたら、一人で静岡まで行くって言うからびっくりして」 「もう五年生だからね。しっかりしてきたよ」 「いや、まだ五年生っすよ