疼痛マッピング(肩関節編)
痛みの範囲から疾患を想像することって大切だと思っています。
疾患別で痛みが出る範囲に違いがあります。
本日は、肩の痛みの範囲を研究した面白い論文を紹介したいと思います。
疼痛に関しての基本的な問診の取り方や、簡単な説明はこちらの記事にも記載していますのでぜひ先に確認していただければ幸いです。
https://note.com/azuazu0508/n/ndeded95b6ef3
本日紹介する論文は以下の論文です。
『Pain Mapping for Common Shoulder Disorders』
https://cdn.mdedge.com/files/s3fs-public/Document/September-2017/040070353.pdf
こちらは、肩に症状訴えている患者に以下のマッピングシートに痛みの部位を記載してもらい、医師が診断した疾患との関連性を研究した論文です。
このように、肩から前腕にかけてをそれぞれの区画に分けて、さらに痛みの質を以下のカラー分類のように表現して、患者自身に記載をしてもらいます。
疾患の内訳は、以下のようになっています。
・肩峰下インピンジメント症候群(SAPS)
・腱板断裂(RCT)
・変形性肩関節症
・肩関節不安定症(SLAP損傷やバンカート損傷を含む)
・肩鎖関節症
・石灰性腱炎
・肩峰下インピンジメント症候群(以下SAPS)
SAPSに関しては、肩関節の前後面の鋭い痛みが特徴的なことと、上腕などに放散する鈍い痛みです。(いわゆる関連痛)
ここで少し気になったのは、手背に生じる針で支えれた痛みを訴えた患者がいるということです。
私はあまり臨床ではこういった経験はありませんが、問診時に肩の痛みかつ手も痛みも訴えている患者には少し注意が必要かと考えます。
・腱板断裂(以下RCT)
SAPSに次いで、症例数が多かったのがRCTです。
痛みの範囲や質も非常に似ているため、鑑別が重要になってきます。
ちなみに
SAPSを鑑別するテストで有名な、Neerテストとホーキンステストというものがありますが、
https://europepmc.org/backend/ptpmcrender.fcgi?accid=PMC4935057&blobtype=pdf
Neerテスト:感度59〜72%
Howkinsテスト:感度60〜79%と決して高くはありません。
除外診断として有効な特異度に関しては、Howkinsテストが有用とされています。
また、Neerテストと比較して、ホーキンステストは、棘上筋と肩峰下の距離が大幅に減少しているとも言われているので肩峰下の衝突を促すにあたってどちらのテストを選択するかはよく考えなければいけません。
・変形性肩関節症
変形性肩関節症や肩関節周囲炎は基本的に範囲が広い、鈍痛といった印象です。
動作時や病期によっては鋭い痛みが出るのも特徴的です。
・肩関節不安定症
肩関節不安定症(スラップ損傷や、関節唇損傷を含む)に関しては、
鈍い痛みと、鋭い痛みが混ざった痛みが、主に肩関節周辺に限局して出現します。
逆に肘より遠位の痛みが合併していた例は、いなかった様です。
・肩鎖関節炎
肩の痛みで意外と出くわすのが肩鎖関節由来の痛みです。
非常に鋭い痛みで、しつこい痛みが特徴な疾患です。痛みは肩鎖関節周辺に局所的に生じます。
こちらは肩鎖関節の診断や治療に関して、非常に細かく記載されている論文です。
興味がある方は是非、目を通してみてください。
https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/rg.2020200039
肩鎖関節はレントゲンの取り方なども特徴的ですので
押さえておきましょう。
・石灰性腱炎
石灰性腱炎(calcific tendisitis)とは、腱板の変性や、軟骨化生を基盤にして同部に石灰が沈着する病態をさします。
沈着した石灰が吸収される過程で炎症反応が惹起され、腱の内圧も亢進されるため非常につよい疼痛が生じるのが特徴的です。
石灰の観察には、超音波診断装置が非常に有用です。
医師の先生方は、石灰の状態に応じて行う処置を検討しています。
超激烈な痛みであれば、内服や、専門医の先生であれば『石灰洗浄(吸引)』という処置を行う先生もいます。
・それぞれの疾患の痛みVASスケールについて
今回紹介した論文では、それぞれの疾患についての患者が訴えた平均のVASも取得していました。
こう見ると、どの疾患も6~7と疼痛レベルは高そうに見えますが、正直臨床で経験する疾患別で比較した場合は、あまり鵜呑みにはできないなというのが私の私見です。
石灰とかはほんとめちゃくちゃ痛がります。
他動運動なんてしようものなら『動かさないで!!』と患者さんに怒られます。( ; ; )
本日は以上です。
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