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mitateasobi
「対人の世界と対物の世界──心を整えるために大切なこと」
前回のnoteでは、筋トレの魅力について、「努力した分だけ成果が現れる正しいフィードバックが得られる点」に注目し、それが仕事や人生の不確実性と対照的であることを述べました。特に、孤独や不安を抱えがちな経営者にとって、筋トレは心と身体を安定させる重要な習慣であり、「継続が結果につながる」というシンプルな真理が、日々の安定感をもたらすのだと書きました。
今回は、それと少し似た話として、「対人の世界」と「対物の世界」について考えてみたいと思います。これは、養老孟司氏が語っていた考え方です。
この世界には、大きく分けて二つの世界があります。
一つは「対人の世界」。つまり、自分と他者との関係性の中で生きる世界。
もう一つは「対物の世界」。つまり、自分と物との関わりの中で生きる世界。
どちらも大切ですが、バランスが崩れると生きづらくなります。その理由は、対人の世界には「嘘」があるのに対し、対物の世界には「嘘がない」からです。
人間同士の関係には、良くも悪くも嘘が含まれます。社交辞令や気遣いの言葉、時には優しさからくる嘘もあるでしょう。そうした駆け引きに疲れた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
一方で、物や自然は常に中立です。誰に対しても変わらず、偽りがありません。だからこそ、人は自然に触れると心が落ち着くのだと思います。
この「中立であること」「正しいフィードバックを返してくれること」は、前回の筋トレの話とも通じるものがあります。筋トレは、努力に応じた結果を確実に示してくれる純粋な対物の世界の営みです。だからこそ、精神を安定させ、心を整える力があるのではないでしょうか。