空白
何も記さなければ、何もなかったことになってしまうのだよなぁ。記憶をたどって、何かを残しておくとするのなら。
8月は、本と映画の数をノルマみたいにして鑑賞するのをやめた。中途とくり返しを自分に許せば、それはゆるやかな夏休みになった。
9月は、仕事がちっとも無事にはならず、大体3年ぶりの風邪、ということになった。祖父がまた、誰にきかれるでもなく自分のことを幸せだと言っていた。
私の脳が怯えるための装置は多々あって、例えばそのひとつは時代劇だったのだが、この秋、三船敏郎の魅力によって克服された。ビリヤニだの、つづけ字だのと、体が目新しいことを求めている。あとは単純に、爪をじっと見ている時間が長くなった。
自分の意思で追った、『いだてん』以来ふたつめの連続テレビ小説だった。心を寄せる俳優の演技がとってもうつる、お芝居の脚本がこんなことになっていて幸福と思った。日々のネタバレとの闘いと同時に、上半期のおしまいが来た。