のりもの
総括してみるに今シーズンは振り返るに足る事柄はなく、手に入れたかったもののいくつかを失くしてしまったけれど、ほとんどの人が口をとじている早朝の、広いテーブルの端にひとりすわっていることは、すごくいいものだと思える。
忘年会の前にひとりカフェのテーブルにつき、外を眺める時間も同じだ。たとえそれがいたたまれないものでも、時に笑えるものであっても、だ。
喫茶店に車輪が付き、揺れ動いて私を前に送ってくれればもう、何も言いたいことはない。
くたびれているのは、ほとんど全員一緒だ。
きれいな場所にいたい。
朝の連続テレビ小説をみて、大河ドラマをみて、あとは働いた。
嘘だ。でも今までだって消費しているだけだった。それなりに楽しいことが、少しまずい。口が重たいのは私で、余分なことを決して言わない品性を宿しているのは大伯父さんだ。そして洗い物を二乗にして、手を広げて持て成し、笑うのが大伯母さん。
目新しさに心奪われる時分はまだ続く。
たしかなものは、決して置いていかないように。