ライディング・ホッパー #3
承前
ライディングギアレース:
ジャンクストリートの若者の間でひそかにブームになっていた、独自改造したライディングギアを用いたパルクールレース。企業管轄の立ち入り禁止区域をパトロールドローンに見つからずに周回するという度胸試しが起源とされているが、真相は定かではない。旧世紀の娯楽文化が瓦礫と化した大崩壊後の世界において、全世界が熱狂する一大娯楽事業となった。
「なんだありゃ……ふざけてんのか!?」
廃ビルをようやく抜け出したトウヤは、隕石のようにゴール地点へ落下するワタルの機体を認めた。キラリと光の反射がこちらを見た。カメラアイだ。見られている。見下されている。
靴の裏。カビ臭い床。ぼやけた顔の嘲笑。「……ふざけるなよ」奥歯をがりりと噛む。「成り上がるんだ…こんな地面に這いつくばってる場合かよ」蜘蛛のように四方に伸びた多脚が嘶き声のような軋み音をあげながら形を変える。
這いつくばるような姿勢から徐々に視点が昇ってゆく。常人ならまともにバランスが取れない姿勢でも、彼の機体はスピードを緩めない。「暴れ馬」と呼ばれる所以はそこにある。
鋼鉄の蹄が石を踏み砕いた。しなやかに伸びる四肢に人工筋肉が張る。既に蜘蛛の面影はなく、騎馬のようなギアに座したトウヤは、さながらケンタウロスの如きシルエットだ。
四脚走行型カスタムギア『ダークホース』は瓦礫を踏みしだきながら、流星目掛けて射られた矢の様に、ギャロップ走行を開始した。
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