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ドラゴンポテトがおれのドラゴンの記憶を呼び覚ました

全ての始まりはこの記事だった。

ドラゴンポテト……おれの意識の外から突如飛来した新手のスナック菓子だ。しかしおれの手元にはすでにドリトスとマイクポップコーン、アーモンドチョコがあり、「ドラゴンポテト~??また現れてはすぐに消えていくポッと出のスナック菓子だろ~?」などとのたまい、胡乱なバーの扉を押し開いた瞬間、バーカウンターから振り向きざまに放たれた「オクトパストラベラー」「ロード・トゥ・ドラゴン」、そして「ドラゴンポテト」という3発の銃弾に撃ち抜かれ、おれはあっけなく死んだ。そして荒野のリスポーン地点で目覚めたとき、握りしめていたのがこの記事だ。おれはこのときから認識を改め、ドラゴンポテトについて調査を始めた。

おれはジャパンフリトレーの過去のプレスリリースまで遡りドラゴンポテトについて徹底的に調べ上げたため、このスナック菓子についてかなり詳しくなった。ドラゴンポテトは構想に3年をかけた、独自製法によってドラゴンが空高く舞い上がるような3D形状をしているのが特徴だ。おれは当初カールのようなサクサクした軽い食感をイメージしていたが、実際手に取ってみるとそれは1枚のポテトチップスを複雑に巻き上げた形をしており、開発者のドラゴンに対する並々ならぬ執念を感じた。こいつは生半可な気持ちで食べるような菓子ではない……ドラゴンポテトを食べるときは決して丸腰で挑まず、信頼のおける飲み物と他のスナック菓子、そしてゲームや映画といったエンターテイメントを用意するべきだ。想像以上に芋の風味があり、量のわりに満腹感もある。その調査の中で、ドリトスもマイクポップコーンもまたジャパンフリトレーで製造されているという驚愕な事じつを知った。すべてはやつの掌の上だったのだ……。そして知られざる開発コンセプトさえおれは入手した。それが以下の文だ。

ドラゴンポテトは、現代最後のマス世代、団塊ジュニア、真性団塊ジュニア(1971~1980年生)に贈るスナック菓子です。この世代を語るうえでフォーカスされる事実は、就職氷河期と勝ち組負け組。しかし、フォーカスされにくい事実として、戦後最も恵まれた子供時代(バブル期)を過ごした世代とも言えます。そんな楽しかった子供時代のキーワードは「ドラゴン」。彼らは、ゲーム、アニメ、映画、プロレス…、様々なコンテンツを通し、様々なドラゴンにワクワクしました。今なお続くコンテンツも多く、大人になった今もワクワクは止まりません。そう、彼らはドラゴンにワクワクする世代、言わば「ドラゴン世代」なんです。ドラゴンポテトは、「おいしく、楽しく」というスナック菓子の原点に立ち返った、ドラゴン世代をワクワクさせる商品です。

ドラゴンズ&ダンジョンズ……ドラゴンスレイヤー……そしてドラゴンクエスト……なるほど確かに「ドラゴン」の名を冠する名作ゲームは軒並み80年代、70年代に発売されている。しかしおれが物心ついたときにはすでに竜退治は崇高な使命ではなく、様々な模造品が作られ陳腐化し、薄まり……大衆俗世に染まったカルチャーでしかなくなっていた。そうした偉大な物語が消滅したロストジェネレイション世代のおれが、果たしてこのスナック菓子を食べる資格があるのか……そのような引け目を感じながらドラゴンポテトを一つ口に放り込んだ。その瞬間、おれの脳裏に、ウェイアードの世界の最北端に位置するマーズ灯台の頂上で、吹き付ける猛吹雪の中、恐るべきドゥームドラゴンと対峙したかつての記憶が飛来した。

おまえは『黄金の太陽』というゲームを知っているか?それは2001年にゲームボーイアドバンスで発売されたロール・プレイング・ゲームだ。全2作が存在し、1作目は灯台に火を灯すのを食い止めるため、2作目は灯台に火を灯すために主人公が奔走する話だ。なぜ灯台なのか?それは世界に4つあるすべての灯台に火を灯すと太古の錬金術の封印が解けてしまうためだ。詳しい話は省くが、世界のバランスを保つため、錬金術の封印を解くか解かないかで主人公たちは意見が割れる……そういうはなしだ。ゲームボーイアドバンスによる過去のGBとは比較にならない圧倒的グラフィック、頭を悩ませるダンジョンの謎解きギミック、モトイ・サクラバによる魅力的なBGM、そして精霊ジンによる奥深いバトルとジョブ・システム……つまり真の男のためのロール・プレイング・ゲームだ。そして日本語が少しおかしい。このゲームの旅の終着点に立ちはだかるのがラスボス、ドゥームドラゴンというわけだ。

ドゥームドラゴン……つまりDOOMだ。やつは3つの首を持つ巨大なドラゴンで、当然のように複数回行動をしてくる。苛烈な猛攻をしのぎ、ダメージを与え続けると、一つ、また一つと首が爆発エフェクトとともに消滅する。しかしやつの真の恐ろしさは首が一つだけになってからだ。やつのふるう『ジンヘルストーム』、そして『ルインクラスト』の前におれは数多の屍の山を築いた。

前述の通り、『黄金の太陽』はジンによるジョブ・システムが特徴的だ。例えばおまえが真っ当なけんしならば、地属性のジンを8体装備することで、おまえのジョブはドラゴンスレイヤーとなる。ドラゴンスレイヤーは単体攻撃のスキル、地属性の攻撃魔法、そして単体回復魔法に長けたジョブだ。大地母神の恵みによりヒットポイントと攻撃パラメータに大きな補正がかかり、おまえは蘇生魔法すら自在に操るだろう。ところが、けんしのおまえが火属性のジンを4体、風属性のジンを5体装備するとマスターニンジャの力に覚醒する。ニンジャ……つまり習得技もすべてジツとカラテとなり、素早さをはじめとする全ステータスが飛躍的に向上する。圧倒的な素早さから繰り出されるしんイズナおとしはドゥームドラゴンに対しても有効であり、その攻略のためにも必要な力の一つだ。

ところが、ドゥームドラゴンがふるう『ジンヘルストーム』は、味方全員が装備しているジンを強制的にリカバリー状態にするという凶悪な技であり、つまりマスターニンジャだったおまえはせいぜい村一番のけんし程度の腕前に成り下がり、ドルイドの地位までも登りつめたおまえもただのうらないしに逆戻りというわけだ。当然のように習得した魔法や技の数々も忘却し、ステータス補正も消滅する。そして次の瞬間、ドゥームドラゴンは光に包まれながら天高く飛翔し……空中でその力を開放する。大爆発のエフェクトとともに、地表に向けて光の柱をまるで雨のように降らせ、世界に滅びをもたらすのだ。この技こそ『ルインクラスト』だ。おまえたちが浴びた光はその一柱に過ぎず、その威力にして200+対象の最大ヒットポイントの40%のダメージを与える。この攻撃に対してただのけんしのおまえが耐えられるか?半分程度のヒットポイントでは間違いなく息絶えることだろう。ドゥームドラゴンはこの『ジンヘルストーム』と『ルインクラスト』の凶悪なコンボを毎ターンのように仕掛けてくる。DOOMだからだ。

『黄金の太陽』はまさしくおれのR・E・A・Lな体験であり、その黄金の記憶をよみがえらせたドラゴンポテトは本物だと感じた。この世の生きとし生けるものは皆ドラゴンの記憶がありそれが忘却されることはない……。その記憶を呼び覚ますのがドラゴンポテトというわけだ。最終的にラストダンジョンに眠る伝説のソルブレードとオリハルコンから精錬した聖剣エクスカリバーでもって、おれはドゥームドラゴンに決着をつけ、巨体を討ち滅ぼし、その正体に驚愕した。ワイズマンとかいう一つ目の岩石野郎をぶん殴れなかったのがこのゲームの心残りだ。

おれは再びあの胡乱なバーを訪れるだろう。しかしあの時おれに向かって銃弾を放った客はすでに荒野の旅に戻った後かもしれない。だが、おれの心にはドラゴンポテトが残った。その確かな息吹を感じながら、おれは今日もエンターテイメントとともに過酷な現代社会を生き抜くのだ。


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