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ゲーム『レッド・デッド・リデンプション 2』の手記
(これまでのあらすじ)地底世界を旅立ったazitarouを待ち受けていたのは、大がかりな強盗に失敗しピンカートン探偵社の奴らから身を隠すための雪山生活だった。一行に失意と不安が広がる中、おれたちは最後のフロンティアに足を踏み入れるのだった―――
おれはかつてシカゴを暗躍するヴィジランテであり、ハイラルの時の勇者であり、恐るべきDOOM海兵隊員であり、光に導かれしガーディアンであったが、ここロックスター・ゲームスの世界ではその経歴は一切通用しない。『レッド・デッド・リデンプション 2』は西部開拓最後の時代を舞台にした真の男のための血も涙もないサヴァイヴァル・ゲームであり、安直にポップコーンをほおばりながらプレイしようものなら、名も知らないおっさんとの決闘で銃を抜くことすらできずに荒野の地に屍を晒すことになるだろう。
CASE①
緑豊かな森にキャンプを設営したおれはさっそく付近の探索に出かけた。身を隠していた雪山は遥か遠くになり、目の前には美しい丘陵。キツネやシカが走り飛び跳ね、川からは静かなせせらぎが聴こえる。なんてすばらしい楽園なんだここは―――。それから半日後。おれは崖下で息も絶え絶えに上り道を這いつくばっていた。乗っていた馬が足を滑らせ転落したのだ。雪山で厳しさを共にした愛馬は命を落とし、キャンプから数十キロ離れた地点でおれは絶望的な気分になった。近くに野生の馬はいない。携帯していたコーン缶を貪り飢えをしのぎ、疲労で激しい眩暈を抱えながら丸一日かけてキャンプに戻った。途中何度行商の馬を強奪しようと思ったか。
一日のスケジューリングは大事だ。その日の行動指針をキッチリたて、余計な寄り道をしない。さもなくば予期せぬアクシデントに見舞われ、途方もない苦労をすることになる。
CASE②
バレンタインの町に着いたおれは、ホテル前に繋がれていた見事な馬を見て感心し、乗り心地を確かめるために跨ってみた。すると馬の持ち主から『馬泥棒』の容疑をかけられ、周囲の住民も疑いの目をおれに向け始めた。ちょっと待て。おれはちょっと乗ってみたいと思っただけで盗もうとは考えていないぞ。持ち主に懸命に弁明するが全く取り合ってくれない。まずい。このまま通報されれば賞金を掛けられてしまう。おれは視界の隅のL2:銃を構えるの文字を見た。仕方ない。銃で脅して口封じをするしかない……おれは銃を構えた。つもりだった。BANG!静かな町に一発の銃声が響き渡った。馬の持ち主は死んだ。通りはパニックとなり、逃げる住民と入れ替わりに屈強なシェリフがこちらに向かってきた。ちょっと待て。おれは銃を構えたつもりなだけで発砲する気はなかったんだ!シェリフは問答無用でこちらを殺す気満々だ。全部で5人もいる。逃げろ逃げろ逃げろ!結局おれは隣のエリアの境界目前であえなく銃殺された。END OF FRONTIER・・・これがおれのRDR2における初めての死に様だ。
街中でも常に緊張感を持て。町の住民からしたらおれたちはよそ者だ。目立つような真似はせず、奥ゆかしさを忘れるな。さもなくば屈強なシェリフが地獄の底まで追ってくる。
CASE③
川のほとりを馬で駆けていると、河原で佇む老人を見かけた。「おい!何をしてるんだ?」「砂金を取っているのさ!」老人が答えた。なるほどこの辺りは砂金が取れるのか。「上々か?」「全然ダメだ!」老人が笑った。それにしても砂金取りは初めて見た。おれが物珍しいそうに近寄っていくと「おいおい、それ以上近寄らないでくれ」と言った。構わず揺り板の中を覗き込もうとすると……「近寄るなと言ってるだろうが!」老人がいきなり殴りかかってきた!完全に不意打ちだ。右ストレートをまともに受けたおれはカッと頭に血が上った。―――気が付くと老人は頭から血を流して倒れていた。死んでいる。おれが殺したのだ……。揺り板の中には砂金は全くなかった。何故老人は殴りかかってきたのか……おれは川に映った自分の顔を見た。厳めしいギャングの顔があった。こんな顔の奴が馴れ馴れしく近寄ってくるのは恐ろしいことだ。激しく痛みつけられ身ぐるみはがされる―――そんなビジョンが浮かんだに違いない。必死だったのだ。おれは老人の死体を河原から引き揚げ、立派な木の根元に寝かせてやった。これで罪が晴れるとは思っていない。だが精いっぱいの手向けだった。静かにおれはその場を立ち去った。
人には人の営みがある。それに干渉するのなら相応の覚悟が必要だ。特に町や集落から離れて暮らしている人は何かしら事情があり、時にはそっとしておくことも選択の一つだ。
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この他にもろくでなしの対立ギャング、コルム一味との諍いなど語ることはいくらでもあるが、ひとまず今日の手記はここまでにしておく。おれはこの広大な開拓地に足を踏み入れたばかりだ。
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