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ジニのパズル/崔 実

 面白かった。

 在日朝鮮人の少女の視点で描かれる青春小説。
 ジニの祖国、アイデンティティ、記憶、所属、すべてがばらばらで、白紙のパズルみたいなもの。それらのピースを淡々と見せられている感じ。パズルを解くかどうかは、読者にゆだねられている。

 ジニは一九八五年生まれ。母親が朝鮮籍だ。中学で朝鮮学校へ進学した。物語の冒頭ではアメリカの高校へ通っており、退学をほのめかされる。ときどき挿入される、単身北朝鮮へ帰国した祖父からの手紙や、ジニの書き溜めた詩、きおくのかけらがまるでスクラップブックのような印象を受ける。本文中にパズルという単語は出てこないが、パズルのようだと思った。

 ジニは韓国語を話せない。朝鮮学校では韓国語で授業をすることになっているのだけど、日本語しかできないジニのために日本語で授業が行われる。そのせいでクラスメイトからいじめをうけそうになる。が、撃退する。

 なんていうか、とてもタフな女の子だ。私はすごく好き。みんなが見て見ぬふりをしている違和感に、ジニはひとりで立ち向かい続けた。テポドンが日本に向けて発射されたあの時、その記憶が克明に描かれている。革命をやりそこなったジニは隔離入院措置を受けるわけだけれども。

 見て見ぬふりをし続けられる、私たちの方が、狂っているんじゃないか。街中で向けられるヘイトスピーチ、嫌悪感の表明。見ているはずなのに、知らないふりをしているられる私たちの方が。

 ジニは自分のしたことが間違いであると思っている。これは彼女が自分の過去を受け入れるまでの物語だ。ただそれだけの、ごくごく短い物語なんだけど。ジニが目を逸らさないから、自然と多くのことを見せつけられるし、苦しくなる。私は彼女みたいな怒れる少女が大好きで、危なっかしくて見ていられなくて。

 率直で嘘がなくてとてもいい。騙らない物語という感じだった。

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