MC型カートリッジ派?MM型カートリッジ派?
レコード再生でよく上がる話のひとつに、MC、MM、どちらの型のカーリッジが音がいいのか?というものがあります。
個人的に色々なカートリッジを試してきた経験からすると、MM、MCカートリッジどちらも一長一短で、結局は方式にとらわれずに気に入ったものを愛用するのが一番、という身もふたもない結論に至ります。
発電方法の違いから、原理的にはMC型が優位だ、というのがよく言われます。しかし、MCカートリッジを使う上での最大の障壁は、兎にも角にも昇圧機器(MCヘッドアンプやMC昇圧トランス)とフォノイコライザーのSN比にあり、再生音質が非常に大きく左右されると感じます。出力が小さいカートリッジほどクリティカルになり、ノイズフロアの多寡で聞こえてくる音が全く異なるものになります。入力換算雑音が10dBも違うだけで、今まで聞いていたのは何だったのかと愕然とすると思います。(道理でアナログオーディオ全盛期のプリアンプが高値安定で取引されるわけです…)
比べるとMM型カートリッジは出力電圧が大きいのでSN比を稼ぎやすく、フォノイコライザーのSN比も確かに再生音質に影響を与えるものの、MCカートリッジほどクリティカルでないので、個人的にノイズ感の少ない再生を優先するならMM型推しです。ただしMM型は、カートリッジの先からフォノ入力に至る静電容量の突合せがとても面倒です。カートリッジの指定する最適容量を超えてしまうとメーカーが想定していたであろう音から逸脱して音場が歪んでしまったり、微細な音が消えて聞こえなくなってしまいます。
尚、細かいところまで低歪で再生できるかどうかは、発電方式の違いよりも先に、カートリッジの針先のチップ形状およびカンチレバーの軽さによる差が非常に大きいはずです。
これはオーケストラもの、それも合唱付きのものを比較試聴するとだれでもすぐにわかる違いであり、例えば振動系実効質量がほぼ同じもので特殊楕円針のついたMCカートリッジと、マイクロリッジ針(マイクロリニア針、SAS針ともいう)のついたMMカートリッジとで聴き比べれば、前者だと合唱でダマになってしまっているものが、後者だとちゃんと解れて聴こえることに気づくはずです。
つまり、針先~カンチレバーで拾えなかった・歪んでしまった情報は、いくらその後の発電機構が優秀でも拾えなかったまま・歪んだまま増幅に至ってしまうのです。
冒頭の話に戻ってしまいますが、なので結局のところ、MC型かMM型か?は商品パッケージのある部分を見ているにすぎず、車でいえばFFかFRか、4WDか、駆動方式だけを見て、実車に試乗することなく車の良しあしを語っているようなものになってしまいます。トータルパッケージとして、その商品が好きかどうかを自分の耳で判断するのが良いということです。そしてレコード再生でのいい音とは何か?という各々の世界観と密接にかかわっているものですから、求める人の数だけ答えも様々ということになるでしょう。
というわけで、ビバ!アナログライフ!