見出し画像

MM型の究極?

今回はSHURE ULTRA500の話です。

きっかけは「1番トラッカビリティーに優れたカートリッジでレコードを聴いてみたい」ことに始まります。
色々とカートリッジを物色してみた結果、「針先がマイクロリッジ針/同タイプの針を採用したもので1番針先実効質量が軽い」Shure V15V-MRに白羽の矢が立ち、その流れでその上位モデルに当たるULTRA500を入手しました。

その前にSHURE V15V-MRの話から。音像がコンパクトに決まり、スピーカーの奥方向に位置する音場の広さ。シャープに決まる音楽は、MC型に殴り込みをかけられる(?)ハイエンド級です。とにかく驚かされたのが、とにかくどんなレコードでも難なくトレースしてしまう基礎能力の高さです。大音量での歪、内周での歪耐性が今まで所有してきたカートリッジの中で1番優れており、「このカートリッジでトレースできないものは盤面のせいだ」といった雑誌の主張も頷けるものです。これより実効質量の軽いモデル(V15V-MRは0.17mg)は特殊楕円針か楕円針しかありません。手元の0.105mgのモデルより厳しい条件ほど優位性が見えてきます。意外と(?)国産の針先実効質量が超軽なモデルでありがちな低域共振周波数が低すぎるということもなく(つまりミディアムマスの一般的なトーンアームで問題なく使える)、針先の前方にセットできるブラシ上のスタビライザーのお陰で低域共振を充分に制動できるという至れり尽くせり。

これをULTRA500にかえてみます。V15V-MRよりも2.7gも重くなる(9.3g)というハイコンプライアンスモデルではネガになるところを吹き飛ばしてしまうくらいの音質の改善ぶりに驚きました。
とにかくあらゆる表現を取りこぼしなく精緻に描きます。エネルギーのロスがなくなり、楽器の響きが一層鮮明になります。合唱つきのオケもので分解能の違いが顕著で、合唱がダマにならず綺麗にほぐれてくれます。それでいてトラッカビリティーは軽量ヘッドシェルに装着し、スタビライザーを使うことで低域共振に対しても常に安定した再生を実現するという相変わらずの素晴らしさ。というより、ミディアムマスのアーム(e.g. SL-1200系)なら軽量シェル+スタビライザー必須な気がします。音のふくよかさ、3次元的展開をよく感じられる様になるからです。MC/MM型の分類関係なしに、ひとつのリファレンスたる地位を占めるモデルなのだと感じました。

好みが分かれるポイントですが、レコード盤に対して正確に情報をすくい出すモニター調であり、音をよく聞かせたり感動を喚起する演出は一切ありません。f特は指定静電容量に従う限り可聴域でフルフラットです。低域は常に音源に忠実な様に制動された感じがします。いい録音なら恐ろしいくらい素晴らしく、3D的精緻な音像/音場が現れますが、反対につくりが雑な盤だと何じゃこりゃという音しか再生してくれません。音が平面だったり、エコー成分が別れて変、だったり…
トラッカビリティーや再生の正確性だけを取ればShureなら後期の製品群の方が優れているはずですが、弾む様な楽しさを求めてロックやジャズならV15 type Ⅲに限る!という方が少なからずいらっしゃるのも頷けます。ここにアナログならではの再生の難しさを感じるのでした。

ちょっとしたネガポイントは、何故かここのところ中古相場(フリマやネットオークション)が高騰してきており、未開封/中古の正規交換針が気軽に入手できなくなってきていることでしょうか。
円安が行きすぎて、海外の方が輸入代行業者を通じて入手/落札するパターンが増えてきている(外国の方にとっては送料/税込でも安いということでしょう)と思います。まさに国富流失(中古品ですが)というのに直面しているワケですね。

ところで、SHURE V15V-MRとULTRA500の違いはハウジングです。そう、これってどこか他社でも見たことありませんか?
…そうです、オーディオテクニカのAT-VM700シリーズと500シリーズ(かつてならAT150シリーズと下位モデルのAT140以下の各シリーズ)です。
ハウジングの素材変更は音質改善(というよりロスの最小化)にかなり効くのですね。(実体験済み)
尚、オーテクは無共振に相当気を使っている様で、VM700シリーズはShure V-MRより背景が静かな感じがします。

相変わらず取り止めもない文章ですが、この辺で。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?