夢枕獏先生の「陰陽師」を読む

先日、地元の図書館にて夢枕獏先生の「陰陽師」を見つけ、借りてきた。
何冊かのビジネスハウツー本を読んだ後、ようやく1話目を読了したのだが、その筆力に震撼した以上に、どうしても気になったことがある。

改行が、多い。

私ならばまとめて描写する事象を、改行の連続でさらりと書き連ねていく。その手法に驚いた。

陰陽師シリーズは、まだ総ての本を立ち読みできた古き良き時代の地元書店で、漫画版から読み始めた。飄々とした陰陽師・安倍晴明と、その相棒の武士・源博雅が繰り広げる、軽快でいて幽玄な怪奇譚は、中2病で燻る私の心を強く惹きつけた。
あれから十数年。私は齢を無駄に重ね、地元書店は万引きに抗えず閉店していた。失われた青春の1頁は実にぶ厚く、大きかった。
陰陽師の原作小説をシリーズ第一巻から読もうと思ったのは、この喪失感を今更ではあるが埋めようとしたからかも知れない。
しかしながら、私は夢枕獏先生の文体に触れるのも初めてで、とてもビックリした。余りにも独特な平安京世界が展開されるので、2話目を読むのが怖い。あれほど軽快な文調にもかかわらず、である。否、読書中は深夜で、魑魅魍魎が夜闇に紛れてわんさか押し寄せてきそうな恐怖感もある。正直な話、私はホラーが大の苦手で、今宵はこれ以上先へと読み進められそうにない。
ところが、である。図書館の所蔵物である本書には返却期限があり、それはなんと明日であった。
今回は渋々、返却することになりそうだ。無念だが、図書館の検索画面で調べたらシリーズが膨大にあるみたいなので、また挑戦したい。



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