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「世情」(中島みゆき)君は時の流れと戦うつもりかい?


中島みゆきの「世情」は、1970年代の社会情勢や時代の流れに対する鋭い観察を元に、時代の変化や不変を求める人々の葛藤を描いた詩です。この詩は、個人と社会、そして時代の流れの中での「変化」と「不変」の対立に焦点を当てており、変わることへの恐れや、変わらないものを求める人々の苦悩が表現されています。

1. 変化と頑固者の悲しみ

「世の中はいつも変っているから 頑固者だけが悲しい思いをする」


この冒頭部分では、時代や社会が常に変わり続ける中で、変化に対応できない「頑固者」だけが孤立し、悲しい思いをしていることが描かれています。ここでの「頑固者」は、古い価値観や習慣に固執する人々や、変化を拒む人を指しています。時代の流れに逆らおうとすると、その流れに押し流されてしまい、苦しい思いをするという警告が込められています。

2. 変わらないものを求める虚しさ

「変わらないものを何かにたとえて その度崩れちゃそいつのせいにする」


人々は「変わらないもの」に執着し、それを象徴する何か(伝統、価値観、システムなど)に例えます。しかし、時代が進むにつれてその象徴も崩れ去り、その度に失敗や挫折を誰かや何かのせいにしてしまう。ここでは、人間が「変わらないもの」に頼り、それが崩れてしまうと責任転嫁をしてしまうという、人間の弱さが描かれています。

3. シュプレヒコールの波(デモ行進の叫び声)

「シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく」


「シュプレヒコール」とは、デモ行進などで群衆が声を揃えて叫ぶスローガンを意味します。ここでは、その波のように流れ去っていくデモ行進が描かれています。これは、社会運動や抗議の一時的な高まりが、最終的には大きな変化を生み出すことなく、過ぎ去ってしまう様子を表しています。つまり、人々の声が社会を変えようとしても、そのエネルギーは一時的であり、時代の大きな流れには逆らえないことを示唆しています。

「変わらない夢を 流れに求めて 時の流れを止めて 変わらない夢を 見たがる者たちと 戦うため」

ここでは、「変わらない夢」を持ち、時代の流れを止めようとする人々が描かれています。これらの人々は、社会や価値観が変わらないことを求め、時の流れに逆らおうとしています。しかし、時代は変わり続けるものであり、その流れを止めようとすること自体が戦いであり、虚しい努力であるという視点が込められています。

4. 世の中は「臆病な猫」

「世の中はとても臆病な猫だから 他愛のない嘘をいつもついている」


ここで「世の中」を「臆病な猫」に例えています。猫のように世の中は臆病で、変化や不安に対して防御的な態度をとり、現実を直視することなく「他愛のない嘘」で自分を守っているという描写です。人々や社会が本当のことを認めるのを恐れ、安心感を得るために小さな嘘をついて生き延びようとする姿が浮かび上がります。

「包帯のような嘘を見破ることで 学者は世間を見たような気になる」

「包帯のような嘘」とは、社会がその不安を隠すために纏う、表面的な嘘のことを指しています。そして、それを見破った学者や知識人が、自分は社会を理解したと思い込む様子が描かれています。学者たちは、世間の表面的な嘘を見破ったことで満足しているが、実際にはもっと深い問題が隠れている可能性を見逃しているという批判が込められています。

5. 不変を求める者との戦い

「時の流れを止めて 変わらない夢を 見たがる者たちと 戦うため」


ここでは、時の流れを止めようとする人々、つまり変化を拒む者たちとの戦いが描かれています。時代の変化は避けられないものであり、その流れに逆らおうとすること自体が無意味であることを示唆しています。しかし、そのような不変を求める人々と、時代の流れに沿って変わろうとする人々の間には、常に葛藤や対立が存在します。この戦いは、変化を求める側から見たときの不満や苛立ちを表しているとも言えます。

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総括

「世情」は、時代の流れとそれに対する人々の反応を鋭く描いた詩です。変化を避けようとする人々の頑固さや不安、そしてそれに対する社会全体の臆病さが描かれており、時代の変化に適応できない人々の苦しみが表現されています。同時に、表面的な問題にしか目を向けない学者や、抗議の声が時代の大きな流れに逆らえず消えていく無力感も描かれています。この詩を通じて、中島みゆきは、変化を恐れずに進むべきだというメッセージを暗示していると考えられます。

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