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東京俳句紀行 その3 夏の始まり

今年は昨年に比べるとソメイヨシノの開花から満開は遅かったのですが、その後の花々は競うように一気に咲き誇り、週末の街歩きで花の移り変わりを楽しみにしている私には、毎週主役が交代、ときには見過ごしてしまう花も出てしまうという忙しさ。そんななかでも街歩きをしながら感じた季節を詠んでみました。


「へそ曲がり? もう咲いている 坂の藤」
(へそまがり? もうさいている さかのふじ)

季語:「藤」(夏)
4月中旬の新宿区下落合の七曲坂での一枚。つい先日、桜が散ったと思ったらもう藤が満開!ということで、「へそ曲がり」な藤なの?と詠んでみました。

「花の名は? 知らんけど 紫蘭かな」
(はなのなは? しらんけど しらんかな)

季語:「紫蘭」(夏)
ダジャレのようなまたはオヤジギャグのような一句。
鮮やかな緑色と明るめの紫色の組み合わせがきれいでこの季節は街角でよく見かけました。
そのたびに心の中で、「紫蘭?知らんけど」がリフレイン(^^♪

「朱夏の陽に 手かざし探す 富士の嶺」
(しゅかのひに てかざしさがす ふじのみね)

季語:「朱夏」
ゴールデンウィークのとある一日。西日暮里の富士見坂上からの光景です。海外からの旅行客の彼女たちが手をかざしてみる先には富士山…と言いたいところですが、ここの富士見坂からはもう富士山は見えません。でも坂の上にある案内板(英語表記もあり)をみて、彼女たちはMt.Fujiを見ようとしたものと思われます。
ちなみにどうでもいい情報を一つ。ここ西日暮里の富士見坂は23区内でも最後まで富士山が見えた坂だそうです。

「春夫忌に 来りてみれば 跡もなし」
(はるおきに きたりてみれば あともなし)

季語:「春夫忌」(夏)
明治から昭和にかけての詩人であり小説家の佐藤春夫氏の旧居跡。文京区関口に数年前まではありましたが、今年訪れるとこんな状態に。文京区の案内板があるだけ。もとはモスピンク色の外壁をした洋館でした。

「鯉のぼり 西瓜とビーチボール 夏来る」
(こいのぼり すいかとびーちぼーる なつきたる)

季語:「西瓜」(夏)
地元の八百屋ならではの光景。鯉のぼり、スイカ、ビーチボールと夏の要素がたっぷり詰まっている風景です。

「天高く 旅立ち見守る クレマチス」
(てんたかく たびだちみまもる くれまちす)

季語:「クレマチス」(夏)
東京駅丸の内口側の駅舎の丸天井です。見上げると、真ん中に丸い車輪のレリーフ。その車輪を取り巻くように白い半円形のものが取り巻いていますが、ここにクレマチスの絵が描かれています。
クレマチスの花言葉は「旅人の喜び」。旅といえば、鉄道というところから東京駅にクレマチスの花がマークとして使われています。駅舎についているステーションホテルにも何ヶ所でクレマチスが使われています。

「人多し 下見て迷子 五月祭」
(ひとおおし したみてまいご ごがつさい)

季語:「五月」(夏)
東京大学の夏の学園祭といえば、5月に行われる文京区本郷キャンパスの本郷祭。ちょうどその日に街歩きツアーに参加して本郷キャンパス内を歩いていたら、「東大」の名を刻んだ汚水枡蓋が一列に並んでいるではありませんか!感動して思わずパシャパシャ撮っていたら、一行はどこかへ?顔をあげて遠くを見ても本郷祭にやってきた人、人、人の波で見つからず。迷子になってしまいました。。。
歩くコースはわかっていたのでその後再合流できましたが。。。(^-^;

「すぐそこに 山の花筏 富士登山」
(すぐそこに やまのはないかだ ふじとざん)

季語:「登山」(夏)
文京区護国寺にある音羽富士。遅咲きの桜の花びらが散り、山道にあたる部分に積もって桜色の絨毯を演出していました。写真の右手には一合目の石碑。上っていくと二合目、三合目と順路にそって頂上までたどり着けることができます。

夏の始まりの8句でした。



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