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東京路地紀行 5 文京区小石川

小石川跡の谷と小石川台をつなぐ階段&路地へはいっていきます。ここには下からのアプローチがいいのか、上から行くべきか迷うところでもありますが、下から入っていきます。
路地の入口に立ってまず目にはいってくるのが、煉瓦塀。シダ類が煉瓦と煉瓦の隙間から緑色の葉をのぞかせて褐色と緑のコラボがいい味を出しています。路地と煉瓦塀という組み合わせが異な感じがしますね。煉瓦塀といえば、明治時代に建てられた建造物(官公庁、邸宅、工場の外壁、寺院の外壁)にはよく使われたりしていましたが、庶民の町ではなかなかみかけない印象です。江戸期の地図をみるとこの一角には堀内蔵助または堀内膳の館があったということなので明治にはいってからはそこがお屋敷となり、煉瓦塀で敷地を囲っていたのかもしれません。それからいろいろなことがあって、庶民の生活する住宅地に生まれ変わったのかもしれません。いま目にしている煉瓦塀はその名残りなのかもしれませんね。
さて、坂と階段の路地を奥へ進むと次に目に入ってくるのが、これはなんだという階段だらけの空間。どれも各個人宅へ通じているアプローチ階段なのですが、これだけ多様な階段が集まっている光景は壮観ですね。
違った時間につくられてきたこれらの階段ですが、そこに通じる家々も古いものあり、新しいものあり。それもそのはずで数年前までは古い住宅が残っていたらしいです。そのころはまだここの路地を訪れておらず、実物を見ていません…涙
再び前を向いて奥へとゆるやかな坂をのぼっていくとさまざまな色がまざった紫陽花とその向こうに階段がちらりと見えてきます。どんよりとした鉛色の雲には紫陽花が似合います。この雰囲気は梅雨の今だけの光景です。

階段面は上り下りしやすいように半分坂のように改修されている。お年寄りが多いこと、路地の中の住人の自転車利用などに配慮してのことだろう。煉瓦塀のいたるところからシダの緑色の葉が顔をのぞかせているのも色のコントラストが良い
路地にはいってまず目につくのがこの階段だらけの空間。素材も形状もさまざまで階段専用ショールームのようだ
淡い色合いの紫陽花が多く咲く路地。
奥に階段があがって舞台はせりあがっていく

この路地にはすてきな階段があることで知られ、松本泰生さんの著作「東京の階段」でも紹介されています。そちらは階段メインですが、東京23区の場合、狭い空間に路地と階段が同居することが多く、渋い路地と味のある階段の組み合わせは多いのかもしれません。

参考文献
 「東京の階段」 松本泰生著 日本文芸社

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