俺舘魚の胡麻煮
太刀魚、銀色で白身の魚。煮ても焼いてもよし。ふと食べたくなったが、一尾丸ごとはどかた家の家族構成では食べきれないと思っていたら、よく行く魚屋で切り身にしていました。丁度良い量を入手したので、太刀魚を煮ながら、昭和の終わりから平成にかけて、多くの人々を魅了したドラマを中心に令和の現代でも活躍されている俳優の歴史を妄想した記録。
太刀魚の切り身 20センチ
白摺り胡麻 50グラム
唐辛子 1本
生姜 半欠け
酒 大匙2
醤油 大匙2
フルーツ酢 大匙1
味醂 大匙1
出汁つゆ 1カップ(2倍濃縮)
昭和二十五年(1950)愛知県名古屋市の医師の家に生まれた舘廣が後の俳優、舘ひろし。
医大を受験するも受からず。幸いというべきか弟が医師の道へ行くこととなり、ひろし氏は千葉の工業大学へ。
岩城滉一らとバイクのチーム、クールスを結成。矢沢永吉率いるキャロルの親衛隊を務めた彼等はバンドとしてデビュー。ひろし氏はボーカル。
その後、東映と契約して俳優の道へ。
「暴力教室」で映画デビュー。教師役は松田優作。ひろし氏は生徒役でしたが、この二人、年齢はほぼ同じ。
運命の出会いとなったのが、渡哲也。
共演することになった時、挨拶に出向いたひろし氏に渡は立ち上がって
「舘君ですね。渡です。よろしく」と握手。
それまで挨拶をしても、ぞんざいな態度を取る大物ぶった俳優が多かった中、きちんと立って挨拶された。そのことに感動したひろし氏、渡が所属する石原プロに加入。
実はこの逸話、渡哲也が新人時代、石原裕次郎に挨拶した時にまったく同じ経験。それに感動して石原プロに加わったということがありました。
歴史は繰り返す。というか、渡は自分がされて嬉しかったことを、後輩に返したということか。
石原プロがテレビ業界で大躍進した時期であり、ひろし氏も石原プロ製作の「西部警察」に出演してブレイク。
同番組終了後、代表作となる作品。
昭和六十一年(1986)日本テレビで「あぶない刑事」が放送開始。
舘ひろし演じる鷹山敏樹、柴田恭兵演じる大下勇次の刑事コンビが横浜を舞台に活躍するバディ物の刑事ドラマ。
それまでの刑事ドラマと一線を画すドラマで、正に日本のテレビドラマ史、刑事ドラマ史に残る傑作。現在でも根強い人気があり、私を含めてファンが多い。
タカとユージという二人の刑事、軽く、おしゃれな風でありながら悪や犯罪を追い詰める姿勢は真剣。銃撃戦やカーチェイス、しっかりと練られた脚本等から大ヒット。
主役の二人だけではなく、脇を固める仲村トオル演じる町田透や浅野温子演じる真山薫等々、魅力的な登場人物。
夢中になって見ていました。
私が今でも大型自動二輪に乗っているのも、あぶない刑事でタカがよくバイクに乗っていたのを見ていたから。
かっこいい大人だなあと憧れていました。
番組終了後、あぶない刑事は何度も映画化。私は二作目の「またまたあぶない刑事」が好きです。
カーチェイスや緊迫感ある銃撃戦、伊武雅刀演じる国のエージェントが暗躍する陰謀に立ち向かうというスリリングなストーリー。
当時、ボクシング引退後、俳優に転向したばかりの赤井英和もこの映画に出演しています。
ダンディー鷹山、セクシー大下という呼び名もこの映画が初出。
二度目のテレビシリーズ「もっとあぶない刑事」そして三作目の映画「もっともあぶない刑事」を経て、あぶ刑事シリーズは一旦、休止。
この後のことですが、私は横浜市民だった時期があります。残念ながら放送も撮影も終わっていたのでロケに出くわすようなことはありませんでしたが、聖地巡礼のように撮影された場所をよく訪ね歩きました。
中華街、元町、山下公園等々。
今でもごくたまに横浜を訪れることがありますが、あぶ刑事の頃とは随分、変わったと感じます。
昔の横浜はもっと猥雑で、本当にあぶない魅力があったと思います。
今は綺麗ですっかり町全体が観光地化されたように感じます。
特に隔世の感があるのは、赤レンガ倉庫。
今は観光スポットとなり、おしゃれな店が中に入り、周囲には遊園地やら大型商業施設、カップヌードルミュージアム等。
昔は本当に廃墟だった赤レンガ倉庫、わざわざ近づくのはあぶ刑事ファンだけ?
倒壊寸前の赤レンガ倉庫には多くの落書き。明らかにあぶ刑事ファンが書いたと思われるものもありました。
あぶない刑事休止中も「ゴリラ」とか「刑事貴族」で刑事を演じたひろし氏。
シリーズ休止7年を経て、「あぶない刑事リターンズ」で再開。
平成二十七年(2015)「さらばあぶない刑事」であぶ刑事は完結。
令和二年(2020)には渡哲也死去。
令和三年(2021)には石原プロ解散。
とひろし氏にとって近年は別れが続いています。
渡哲也の死去に際しては、遺族の意向により葬儀等には参加出来ず。
石原プロ解散についても、上が決めたことだからと何も語らず。
愚痴を言いたいこともあるかもしれません。それでもそうしたことはすべて吞み込んで語らない。口を開けば、今まで石原プロのために生きてきた渡をせめて遺族だけで送りたいという気持ちを傷つけるかもしれない。
石原プロ解散についても同様の配慮をしているのでしょう。
気障とかええかっこしいではない、流石はダンディー鷹山。
太刀魚が柔らかく煮えている。元々、クセがあまりない魚ですから、生姜の風味や胡麻の香ばしさがしっかりと乗って旨味向上。
唐辛子から出た辛みが味を引き締める。
太刀魚にはEPAやDHAという不飽和脂肪酸だけではなくビタミンDやEも含まれる。
舘ひろし氏、現在は73歳。それでもまだまだ現役で活動されているのは素晴らしい。髪こそ白くなったものの、腰が曲がるようなこともなくまだまだダンディー。
昔、ひろし氏が出演されたスズキ自動車カルタスのCMで
「俺タチ、カルタス」というセリフがありました。
今回のタイトルはそのレベルのダジャレです。
舘ひろし、そして自分自身のことを含めた妄想をしながら、俺舘魚の胡麻煮をご馳走様でした。