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カフェのキャッチボール。

去年のはなし。
カフェで隣の席にいた20代前半であろう女性2人組。金髪と黒髪、どちらも異なる個性があって、いかにも今どきの「若い女子」なのだけど、声が甲高くなくていいなあと思っていた。真隣なのでおのずと会話が全部聞こえてしまう。幼なじみの久しぶりの再会っぽい。最初は共通の友人の話などしていたけれど、

「あのとき先生たちってすごく大人に見えたけど、いま思うと子供だよね」
「よく考えたらあれ、ハラスメントじゃんって思ったよ」

というところから、彼女たちの会話は深度を増していく。

「大勢での飲み会とかで…何かあっても『笑って受け流さなきゃいけない』って空気あるよね。そういうのすごく嫌だなって。誰かのことをネタにしてさ、それがその場にいる人でもいない人でも「ああこれは傷つくだろうな」ってことを言ってても、周り笑ってるから笑わなきゃいけない感じ。だから私、大人数になればなるほど、引いてくんだよね」

「分かる。私もだから大人数の飲み会って行きたくない。でも、学生の頃は行かないで済んでも、社会人になるとそうはいなかったりするよね」

「私さあ、こういうこと言うとお母さんに『そんなんじゃ生きにくいよ』ってすぐ言われちゃうんだよ」

「LGBTの友達が、会社に入ったらいわゆるヘテロセクシャルの会話…『彼女いるの?つくらないの?』みたいなことすぐ聞かれて、仕事は大好きだけどそれがつらいって言ってた」

彼女たちは、さしさわりない世間話の水面には無理に戻ろうとせず、でも深刻ぶらず愚痴っぽくもなく、そういう会話を淡々と続けていた。

女性特有の「お互いが好き勝手に話したい事を話し、時に前後の会話の脈絡が全くなく、どんどん多方向に広がっていく」というあの感じ(決してキライではないしダメだとも思わない。あれこそが女子パワーだと思ってる)がほとんどない。

なんというか、ひとつのボールをしっかりと投げ、しっかりと受け止めて返す、そういう感じの落ち着きがあった。
あなたはあの時どうだった?どう感じてた?うん、それはこうだったよ。ぽーん、ぽーん。ボールはとても丁寧に投げ返され、お互い相手の目をちゃんと見て、笑顔で受け止める。

日本ではない国で暮らした人たちっぽいなあと思いながら聞いてた。なんとなく流すことなく、I think や I feel をはっきりと伝える国で一定期間を過ごした人たち。

「みんなと遊ぶのも楽しかったけどずっとやってたら飽きちゃって、じゃあ私は何がしたいんだろうってバーッて書いてみたの。そしたら○○をやりたいんだって分かったら、ひとりで論文とか読んで」

「すごいなー。紙に書くって大事だよね」

「そうなの。紙にペンがすべる音とか聞くのもすごく好き」

「分かる!紙が必要なんだよね…私には」

会話ぜんぶ聞こえてしまって本当にごめん。
おそらく私の半分くらいの年齢だろうけど、ああ今この会話に混ざりたいなあという気持ちと、友達になりたいなあという気持ちと、私なぞが混ざると濁るからこのまま横でずっと聞いていたいなあという気持ちがあって、自分が読んでる本の内容がちっとも頭に入らなかった。

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あゆみ
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