推し、ジム辞めるってよ。【1.その日が来た】
コロナ禍で休業していたジム(某暗闇ボクシング)が再開して1週間ほど経った6月初旬。私は恵比寿でのレッスンに出た後、代官山蔦屋で本を買い上階のカフェでナポリタンをお腹いっぱい食べてから元気よく旧山手通りへとあるき出した。夜は始まったばかりだ。
ふとスマホを見るとさっきまでレッスンを受けてた推しパフォーマーが久しぶりに公式のインスタに投稿したという通知が来ている。「何だろ、新しいPGM(ブログラム)の宣伝か久しぶりの挨拶かな」と気楽にそのアカウントを見に行った。
「急なご報告になるのですが、この度◎月◎日のプログラムを最後にジムを卒業し、新たな挑戦をすることに決めました」
その瞬間、周りの景色も時間も一切が止まった。たぶん私の呼吸も一瞬止まってた。
そこから自宅まで歩いて帰ったけど、ほとんど記憶がない。ふと気づくとLINEやTwitterには同じジムの友達から私を気づかうコメントが続々と来ていた。
それをぼんやり眺めながら最初に思ったことは「ついに私の番が来ちゃったな」だった。
私たちの通う暗闇ボクシングジムはパフォーマー(※インストラクターのこと)の退職がわりと頻繁で、友人たちは誰しも「推しの卒業」を体験している。その悲しさつらさは近くにいて痛いほど感じていたけど、ついに自分がそれを体験する日が来てしまったのである。これはかなり苦しい1週間になるな。そう思った。
…と、ここまで読んでくれた皆さんは
「たかだかジムのインストラクターの退職が何でそんなにショックなの(笑)」
と、どっ引いてることと思います。分かります。私もこの日から幾度となくその言葉を夫や身内に言われました。アーティスト、芸能人、そのあたりならまだ分かるけどインストラクターって一般人じゃん。そのへんの兄ちゃん姉ちゃんじゃん(笑)と。ほらよくあるじゃないですか。近所のジムで若いインストラクターにマダムやおじさまたちが群がっている図。まさにあれを想起しますよね。
でも違うんです。
いや、違わないかもしれない。一緒です。別にマダムやおじさまたちのはくだらなくて私たちのはくだらなくない、なんて言うつもりはないのですから。
でもその「たかだか」ジムのインストラクターの進退になぜそこまで感情を揺さぶられるのか、その理由(言い訳かもしれん)を次の回で書こうと思います。
(※「たかだか」という言い方ですが、もちろんこれはジムのインストラクターという職業とそれに就いている方々のことを貶めているわけではありません。この揶揄は私に向けられているものですし、「メディアに出て何万人もファンがいるような有名人ではなく、一般男性女性である人たちだし、たかが一個人の退職・転職ではないか」ということです。そしてそれが決して「たかだか」ではないということこそが、次回書こうとしていることです)