推し、ジム辞めるってよ。【4.伝える力とYUUKIさんの話】
少し時間があいちゃいました。推しがジム辞めてから1ヶ月過ぎてるじゃないか…でもまだ最終回じゃない。前回の「パフォーマーという存在がいかに強い推しになるか」の続きです。
先月退職した推しパフォーマーの他にも、私はこの暗闇ボクササイズジムで推していた人がいました(去年退職しちゃったけど)。2人はパッと見、真逆のタイプにみえますが、私の中では確固たる共通点がありました。
私には素人グルメ評論家じみた、またはレコードプレーヤーの前でうんちくをかたむける音楽マニアみたいな(すいません実際に遭遇したことがないので完全にイメージです)しちめんどくさい独自基準があって、例えば
・前説で必要事項の説明を毎回必ずする人
・身体の中に「踊り」がある人
・(いい意味で)音楽の奴隷になれる人
・人から与えられたセットリストでも自分のものにできる力がある人
・音に振り付けをうまくはめる技術が優れている人
(単に音に既存のコリオを当てはめてるだけじゃだめで、音楽に身体をのせた時に「これしかない」と思わるくらい自然でかつ独自性のある動きになっている)
などですが、それより何より大事なポイントが、
「伝える力」
でした。
■本当に「聞かせたい」「届けたい」と思っているか
これはジムのパフォーマーに限らず、仕事上でも好きなアーティストでも友人でも、あらゆるジャンルの人に「惚れる」ポイントでもあります。
具体的には「目の前にいる誰かにちゃんと聞かせようとしているか、聞いてもらえるようにしてるかどうか」だと思います。そしてこれをやれる人は意外なほど少ない。だから、いたら惚れます。前述の2人の共通点はまさにそこ。
例えばお店に行って、何らかのルールやらキャンペーンやらを店員さんから説明される時。携帯ショップとかでもありますよね。
店員さんは同じセリフ同じ文章をもう5億回くらい繰り返してる。なのでものすごくよどみなく話してくるのですが、よどみなさすぎてもはや「説明」ではなく「歌」や「読経」みたいになってて、全く頭に入ってこないことないですか。すげーありますよね。その人はもう「その言葉の羅列を口に出すこと」がルーティン化してて、聞き取りやすさとか相手が聞いてるかとかがどうでもよくなってる。そして相手の年齢属性目的などおかまいなしで、同じことを同じトーンで繰り返してる。
例えば仕事のプレゼンや何かの発表の場。
発表者の後ろにスライドが出ていて、前には聴衆がいる。でも発表者は自分の手元の資料、またはスライドの方をずっと見たまま、書いてある文章を読んでいる。これもすげーありますよね。目の前の人たちを見ることなく、ただ読んでるもんだから言葉は聴衆の頭上を素通りしていく。
私こういうのがとても嫌いです。
(聴く側としてね…自分ができているとはとても思えないです!)
ところが「伝える力」のすぐれている人は、
・目の前にどういう人たちがいるか
・その人たちは今日はどういう状態で聴いているのか
・その中で自分が伝えなきゃいけないことは何か
・それをいかに無理のないように(しかし興味深く)聴いてもらうか
・そのためにはどういう態度、言葉づかい、言葉選びをすべきか
を瞬時に掴みます。そしてとても分かりやすい説明をします。
お店でもプレゼンでも、「伝える力」がすぐれた人は目の前のマスを「1人1人個別の人間」としてとらえて、しっかり相手の目線をつかまえて、たったひとりに語りかけるように話してくれる。だから話が入ってきやすいし、その人自身に惹きつけられます。
私の通っていた暗闇ジムだとそれは主に「前説」と「キューイング」に集約されます。
前説は、基本的な流れとルール、今日のプログラムの説明、そして初めて受けるトライアルの人がいる時は各種パンチ&ディフェンスの説明。キューイングはレッスン開始後に音楽の合間に出し続ける指示です。
これが「まったく意識してない人」と「めちゃくちゃ意識してる人」では天と地との差がある、と私は思っています。
もちろんどのパフォーマーも頑張っているのです。でも前説では「毎度同じ説明をしすぎて言葉が流れちゃってる人」「同じ説明が飽きたのでもうしない人」。キューイングでは「慣れてきたがゆえに変な格好つけやクセが出てきて聞き取りづらい人」というのが結構います。
もちろん常連なら分かってるからそれでもいいんです。でも中には「このパフォーマーさんが初めての人」や「このジム自体が2、3回目の人」も絶対いるじゃないですか。私はそういう人の存在を絶対に忘れないパフォーマー、どんな人でも置いてけぼりにしないパフォーマーにプロフェッショナリズムを感じ、惚れてしまうのです。
■YUUKIさんのこと
去年退職してしまったYUUKIさんというパフォーマーさんは私が入会直後から推していた人であり、私の基準の「永遠の座標軸」になっている人です。彼はとにかく真面目でちょっとシャイで、ガンガン煽ったり派手なPGMをやる人ではありませんでしたが、とにかく説明とキューイングが素晴らしい人。(もちろんその前にレッスン内容がピカイチだったのは言うまでもない)
入ったばかりの時に「前説がこんなに親切かつ優しいひとは初めてだ…!」と安堵感がすごかった。さらにレッスン開始後、途中にある「ジャンプロープ」という動きのキューがこれまでどーしても聞き取れなかった(爆音の中でサラッと言われると何言ってるかわかんないんですよ最初は…)のですが、YUUKIさんだけは「ジャンプロープ、なわとび」って言ってくれたんです。このたった四文字!このたった四文字ですべてが氷解して「な る ほ ど !」ってなった。この「なわとび」で本格的にYUUKIさんに惚れましたね…。
(キューイングの声もめちゃくちゃ滑舌がよく涼やかで、叫ばないのにどこまでも聞き取りやすい声で、あれもまたプロの技術…って思いました)
ずっと受け続けるうちに、彼はもしかしたら「自分ができなくて悔しかった経験」や「怪我をして何かを諦めなきゃいけなかった経験」がある人なんじゃないかな…と思うようになりました。それくらいいつも「皆が分かりやすいように」「無理な動きや無茶な心拍数の上げ方をさせないように」を心がけてくれる人でした。
最初はついてくのが難しいくらいキツくした方が「やりきった感」があるので人気は出やすい。「キツい、激しい、忙しい」。これらは「強度が高いレッスン」として評価されたりします。だけどYUUKIさんは自身のvol.1〜4のどのレッスンでも頑なにそれをしなかった。ゆえに「YUUKIは強度低いからなー」なんていう声も聞こえてたけど、しっかり取り組んでいれば彼のレッスンがいかにバランスよく、何かに振り回されることなく、気持ちよく己の身体を鍛えてゆけるか(そして真剣にやれば地味にキツいか)が分かったはず。ある友人は「強度=うわべのキツさじゃない。YUUKIさんの強度が低いって言うのは分かっていない人だ」と言っていて激しくうなずきました。
こういうレッスンの組み立て方もまた、「言葉の伝え方の丁寧さ」に通じるちからだと私は思います。そういう人なので人柄も本当に優しくて誠実。彼は彼で唯一無二のパフォーマーだったな…と思っています。
ちなみにYUUKIさんは現在、パーソナルトレーナーとして開業したばかり。既に通っている友人たちによれば、お客さんをマニュアルや枠にはめることなく、1人1人の「なりたい姿や実現したい未来」を細かく聞いてそれはそれは丁寧にトレーニングしてくれるそうで、「伝える力」のみならずYUUKIさんの良さは健在なんだなと嬉しくなりました。
他のパーソナルに比べてリーズナブルでもありますし、ご興味ある方はぜひトライしてみて下さい。申込みは下記HPから。不安、不明点などあったら彼のインスタDMへ。
★パーソナルのHP「G2 Fitness」
★YUUKIさんインスタ
さて次回がラスト。いよいよ推しの話です…(笑)