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なんとなく積み上げたキャリアでも、なんとなくうまくやっている私
私は、一企業の正社員としてフルタイムで勤務しているのである。
この業界には、夢も希望も特になかったとき、熱い思いなんてものもなく、ただ、正社員になれるかもしれない、という理由だけでなんとなく入った。医療福祉業界。
それまで、なんとなく入学した専門学校を卒業し、入りたかった会社にも入れず、契約社員で雇ってくれる会社になんとなく入った。
契約社員も、正社員も、違いも良くわからないまま、毎月安定したお給料が入ってくるなら、と、とりあえず入った。
時が経ち、正社員と契約社員の待遇の違いなんかも理解できるようになり、手取り13万円、ボーナスなしなんてやってらんねーよ、と思いながらも、転職する勇気なんてなく、ダラダラと責任のない仕事を、ゆるく1年半続けていた。
祖父のお葬式の際に、親戚のおばちゃんから、「いつまで契約社員でおるつもり?正社員にならんといけんよ」なんて言われた。
へー、そうなんか、と思った。
お節介なその親戚のおばちゃんが、ちょっとした口利きをしてくれて、今、私がいる医療福祉の業界へ足を踏み入れたのだった。
結婚や出産、転居などに伴い、いくつかの会社を渡り歩いたが、同じ業界だったのでキャリアだけは積み上がり、気付けば20年以上になっていた。
経験年数が経つと、お給料が上がるかもしれないからと、なんとなく資格試験にも挑戦しながら、大人になってから久しぶりに勉強したりもした。
この業界だって、いろいろと進化していて。法整備されてくる。法律に従って仕事をするのだから、制度改正もたびたびあれば、それに伴って私達のそれまでの知識をアップデートしないといけないわけだ。
常に勉強しないといけない環境にいるのである。
とはいえ、結構古い知識のまま、なんとなくで毎日の業務をこなしている私なのであった。
そんな私も、今の職場はもう7年目である。
少し人材育成するような立場になっていた。←少しってなんや
ちょっと経験値があるので、新人さんへの指導係的なことだ。
上司たちからは、「指導的立場なのだから、後輩たちに背中を見せていかないといけない」みたいなことを言われるのだ。
私の背中を見て新人が育つだと?
適度な手抜きの仕方なら教えられますけど、状態である。
私は、3年前、ある女性オンラインコミュニティに所属していた。高額課金したマインド講座とビジネス講座のことである。
要は、お金が欲しかったから、手っ取り早く稼ぎたくて、起業女子に憧れたのだ。
そこのマインド講座では、
「頑張らない方がうまくいく」
「罪悪感を捨てて自分らしく生きる」
こんな教えだったように理解していた。
私は、頑張らなくなってしまった。
意味をはき違えていたのかもしれないが、仕事も頑張らなくなっていた。
テキトーにするようになった。うまくサボるようになった。
ここの職場の人達とは違うんだ、私はめんどくさい仕事を頑張らなくても、楽に好きなことで稼げる起業女子になるんだ、なんて夢見心地になっていた。
尖っていた。
腹立つやつだった。
でも、心の奥底では、そんなんじゃだめだ。上司や会社からは評価されたい、との思いは消えていなかった。
そもそも、私の人間性として、真面目なんだから。
お金をいただいている仕事をサボるなんて、良心が許さなかったし、真面目でいることの方が心地よかったのだ。
マインドをこじらせている女性たちの集まりだったわけだが、この講座の主宰者に惹かれるということは、居場所を求める、どこかしら社会不適合者が多かったように思っていた。もちろん私もその一人。
でも待てよ。
私は、結構、世渡り上手だし、協調性もある。真面目に、周りに合わせることもできるし、社会適合者なんじゃないか、と気付きはじめてからは、今度はこのコミュニティに嫌気がさすようになる。
年に一度、上司たちとの個人面談がある。
昨年の個人面談の時、私は、「最近、怠惰ではないのか」「以前は頑張っているなと思っていたが」「新人たちに指導していく立場なのだから背中を見せて」などと、完全にダメな評価を下されていたのであった。
マジで、クビになるんじゃないかと焦った。
焦ったのだ。
起業して、好きなことで稼いでやるんだ、なんて、調子のいいことを言っていたのはどこのどいつやねん。
会社員を手放すなんてできないし、手放したくない、と思った。
なんだかんだあるけど、やっぱり組織に守られて、できることで貢献したい、という気持ちのほうが心地よい。
なんてことを考え、自分と向き合ったこの1年だった。
今日は、あの、クビになるかと焦った昨年の個人面談から1年経ち、また個人面談の日を迎えた。
何をそんなに緊張しているのかと、自分でツッこみたいほど、朝から嫌な気分だった。
また今年も何か言われたらどうしよう…と。
どうしようっつったって仕方ないのだが。
何言われても、受け止めるしかないな、と迎えた面談。
結果、頑張っているね、と。
昨年より、成長しているね、と。
もういい歳だけど、上司に褒められると嬉しいものだった。
あんなに緊張していた面談だったのに、褒められてホッとした。
でも、よくよく考えてみると、上司たちだって完璧な人間ではないし、なんなら私がフォローするような場面だってある。
私の方が得意なことだってあるし、劣っているわけではないのだ。
びくびくしちゃってさ。
なんか、もっと、自分に自信もってもいいんじゃないかなって思う。
自己卑下しすぎなんだよな。
自分のセルフイメージと、他者からの私のイメージって、当然のことながら異なっているんだろうけど。
そんなことを考えながら、今夜は眠る。