2015年のブログの記事をたまたま読み返したので、ここに残しておきます。
惑星の逆行中は、過去に向き合う事も多くなります。
過去は時にとても大切な何かを教えてくれます。
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2015-03-26 22:30:35
テーマ:あゆらのにちじょう
誰も居ない大きな部屋には壁一面の祭壇
灯るお線香に
北向きで眠る祖母
淡いピンクの棺は小さく
眠る祖母はそれよりもずっと小さかった
隣の親族控え室からは親戚の笑い声
通夜の中で最も穏やかなひと時だった
溢れる生命力をたたえた祭壇の生花たち
見る度に表情の変わる遺影
祖母は確かにそこに居て
その時を楽しんで居る様に感じた
私は斎場にあったメッセージカードに絵を描いた
眠る祖母の真正面で
少し下がった場所に置かれた椅子達の1番端で、私の彼(今の主人)は祖母の為に折り鶴を折っていた
何も言わずとも、穏やかで正された時間だった
祖母は親戚が集まる時が好きだった
いつも祖母の周りには誰かが居た
彼女は皆の中心で、皆の支えだった
そんな祖母の願いは
皆で一緒に集まり笑い合う事
それは祖母自身のお葬式という形で叶った
親戚の中には、縁、暮らす土地などの事情により、同時に同じ場所で笑い合う事が難しい人々が多かった
だけれどこの日、全ての事情など祖母の前では無いものになった
祖母は会いたい人
全員を集めてしまった
それは、とても凄い事
大人になるとわかる
これは凄い事
全ての人が、自分の思いよりも祖母への気持ちで一つになった
祖母にはお供が居る
彼らはきっと祖母を迷わす事なく導いてくれるだろう
二つとも、私が生前祖母へ送った人形
倒れてからも、ずっと病院で一緒に居てくれた彼らならば、心強い
その日彼らは私に、リボンを巻かれ祖母の胸元へと預けられた
彼らもまた旅立つので、亡くなった翌日は私が抱いて眠り、祈りを込めた
お供である彼らに不安があってはいけないので
なるたけ暖かい思いで抱いて眠った
棺には祖母への絵も一緒に
祖母が亡くなる数日前に私が描いた
祖母と私の母
病室で母は祖母にずっと笑顔だった
明るく、献身的な母は
時々泣きそうな笑顔だった
その光景は愛以外の何物でも無かった
祖母と母は愛し合っていて
言葉を持たずに互いを励ましあって居た
苦労の多い2人の女性が、互いを見つめ合う姿
私の頭からは一生消えずに残るだろう
私の母は、しっかり立って
通夜と告別式を終えた
いく度となく涙を流し、受け入れられない現実と戦って居た
集骨の際、母の優しい心がとうとう大きな音を立てて壊れてしまった
母は、祖母が物質へと還る事をずっと怖がって居た
目の前にある骨を見て、母は子供の様に泣いた
嫌だ
嫌だ
やめて
と泣き叫び、強く拒んだ
私は母の身体を支え、さすり
大丈夫と言い続けた
私の涙は出なかった
いつも母の優しい心が傷つく時
私は涙を絶対に流さない
母譲りの声と笑顔で母に向き合う
母の中の小さな女の子がえんえん泣く時
その時だけ私は母の母になる
母は自らを立て直し
しっかりと前を向いてまた歩き出した
とても優しく
とても強い女性
自然と人が集まる
祖母もそういう女性だった
「いつかまた会えるでしょうか?
何処かで」
笑う祖母のそばに寝転んで
絵を描きたい
祖母に出会えて良かった
母の娘に生まれて良かった
家族達と共に私は今
この時代を生きている
幸せはいつも自分の中にある
人を大切に思い
人との縁を知る
人の死は失う事だけでは無い
祖母の優しい温もりは絶えず今もここにある