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私はこうして欲しかった〜其の1〜

創作大賞に応募した(中間にすら選ばれなかった作品です)記事をより詳細に連載していく其の1です。

私の人生は私にとっては「生き地獄」でした。
でも、私はいつか「白馬の王子様が迎えにきてくれる」「この人生を絶対にひっくり返してやる」とずっと思い続けました。

白馬の王子様なんてバカじゃないの?と思うかもしれませんが、そんなファンタジーの夢物語にすがらなければ生きていくことが出来なかったのです。
家も学校も先生も塾も警察も大人もすべてが敵と化していました。
小さな子どもの私のいうことを全く信じてもらえずに・・・。

人として愛されるのではなく、ただそこにいるだけで認められるのではなく「女」としてしか愛されてこなかった場合、人としての愛情を受けた時、本当に素直にその愛情を受け取ることが出来るでしょうか?

私が生まれてから今現在の私の本当の気持ちを真実と同時に語っていきます。
利用規約に触れないように連載していこうと思いますが、感化されやすいかた、精神的不安定なかた、辛い過去を思い出してしまうかたなどは読むのをお控えくださいませ。(性的表現、暴力表現、痛々しい表現などを含んでいます)

はじめのほうは無料公開いたしますが、途中から有料とさせていただく可能性がございます。

また、登場する人物名はすべて実名ではなく仮名です。
コメントは常に受け付けておりますが、批判的な感想やコメントなどはご遠慮くださいますようお願い申し上げます。
少しでも多くの人の気づきや参考に繋がればと願っています。
応援よろしくお願いいたしますm(_ _)m




私が大分県に引っ越してきたのは3歳の時。
テレビの箱が入っていた段ボールにも「カラーテレビ」と書かれていた時代。

私の家はトタンで出来ている家。
駐車場には砂利が敷いてあって1台だけ駐車できる。
家の前には川があって、中ぐらいの滝がある。
家の真裏は絶壁と言えるぐらいの山の斜面になっている。

春には「つくし」が大量に生える。
夏にはホタルがたくさん飛ぶ。
秋にはススキとコスモスの絨毯。
冬には「ふきのとう」が顔を出している。

家の周りには紅葉の木、ビワの木、いちじくの木、なんだかよくわからない他の木々が家を囲んでいる。
外から家の様子はわからず、玄関だけは見えるような状態。
家の中は台所、仏壇、寝室兼物置、居間という間取り。
それぞれ4畳ぐらいの広さ。
トタンで出来ているため、家の色はもちろん青色。
ところどころトタンが錆びていて、台所の上の屋根(トタン)は透明。
家の中に風呂もトイレもない。
風呂は銭湯だが、一人50円(当時の金額)で入れる。
トイレは家の離れにあった。

その家にオヤジの母親、つまり私の祖母は一人で住んでいた。
祖父はこの時すでに入院していた。
私はオヤジに連れられて、自然豊かな家で住むことになった。

3歳の私はすぐに保育園に通わされた。
同時に歯医者へも。

私の歯はすべてが真っ黒でボロボロな状態の虫歯だらけだった。

毎日、歯医者へ無理やり連れて行かれてギャンギャン泣いていた私。
保育園ではほとんど笑うこともなく、ただ一人ブランコに乗って「どうして生きているんだろう」「生きるって何なのだろう」と考えていた。

保育園のお昼寝の時間も眠ることができず、隣でスヤスヤと寝ている男の子が羨ましかった。
つきたての餅のようにプックリと膨らんだ頬っぺたが本当に羨ましくて、いつもジッと見つめていた。

オヤジは車で毎日、私を保育園に迎えにきていた。
夕方近くになると私は「このままずっと迎えに来なければいいのに」と強く願っていた。
その願いも虚しく、鬼のようなオヤジはいつものように大股でドスドス歩きながら保育園の門をくぐる。

「ほら、お父さんが迎えに来たよ^^」
「あ〜どうもどうも。先生いつも遅くなってすんません。おい、帰るぞ!」
「あゆなちゃん、また明日ね^^」

お昼寝の時間に眠れていないことに気づいて欲しかった。
私は決して眠ったフリをしていたわけではない。
目を開けたまま、ただジッと隣の子を見ていた。
たまに保育士の先生がコソコソ声で「ほら、寝なきゃ」と声をかけてくれていたけれど、なぜ眠れないのか、なぜいつも眠ろうとしないのかということを掘り下げて欲しかった。
毎日、眠れていない子がいたら、個別に話しを聞いて欲しかった。
保育園の年齢だと何を聞いてもうまく答えられない子が多いかもしれないけれど、中には答えられる子もいる。

オヤジもまるでヤクザのように迎えにくるのだから、そういった様子も含めて「この子には何かある」「この子の家庭環境はあまり良くないのかもしれない」と疑って欲しかった。

もちろん、あからさまに疑って子どもに事情を聞こうとすると、子どもは聞かれたことを親に言ってしまう可能性があり、トラブルへと発展することがあるかもしれない。
だからこそ、よく観察して、そしてトラブルにならないように子どもの「心の状態」を把握してケアという方向性で大人としての愛情を注いで欲しかった。

ただただ「大丈夫だよ^^」「いつでもなんでも言っておいでね」「ずっとそばにいるからね」「あなたの味方だからね」「私はあなたが大好きだよ^^」ということを言って欲しかった。

ギュッと抱きしめて、頭を撫でて、ヨシヨシして欲しかった。
親でなくてもいいから愛されたかった。

私はオヤジに怒鳴られまいとすぐにオヤジのもとへ駆け寄る。
大股で歩くオヤジの後ろを走りながらオヤジと同時に車へ乗り込む。

無言のまま、窓の外はすごい速さで景色が通り過ぎていく。

--------いつまでこの景色を見続けなければならないのだろう。

ギーッ!
サイドブレーキを引く音で私はハッとした。

--------早く降りなければ!

オヤジは車を降りて振り向きもせず、ガラスで出来たドアを乱暴に開け階段を登っていく。

キーン!キーン!ガガガッ……ズォー……!

歯医者独特の嫌な音と共にツーンとした匂いが鼻をつく。

「大春さん、こんにちは^^16時30分の予約ですね」
「うん、そう」
「もう少々お待ちくださいね〜」
「はいはい」

オヤジは待合室のソファーにドスンと腰をおろした。
私は幼児用の本を手に取るわけでもなく、幼児の遊び場で遊ぶわけでもなく、オヤジの隣にソッと座った。
ほどなくして受付の女性から声がかかる。

「大春さ〜ん、どうぞ〜!」
「おい、さっさと行ってこい!ワシは銭を稼いでこないかんのじゃ!」
「大春さ〜ん!」
「返事せんか!貴様!」
「はい」
「そんなちっせえ蚊の鳴くような声で聞こえるか!」

私は逃げるように、呼ばれている女性のもとへと駆け寄った。
おそるおそる後ろを振り返ると、そこにオヤジの姿はもうなかった。

「あゆなちゃんのお父さんはお仕事に行ったのね^^」
「……」
「歯の治療が終わる頃にはお父さんが迎えに来てくれるから頑張ろうね!」
「……」

私は踏み台を使って「歯科用ユニット」に寝そべる。

「はい、アーンしてね〜」

私の口の中を口腔内ミラーがうごめく。

「ふんふん……まぁ、良好だね。今日はここを治療するからね」

今度はゴムのようなものと金具のようなものを口の中にいれられた。
口は開いたままになり閉じることさえ出来なくなった。

目の前のライトがピカっと光り、口の中を照らされる。

「あゆなちゃん、ちょっとそのまま待っててね」

女性は私のそばから離れた。
遠くからその女性の声と男性の声が聞こえてくる。

「先生、あゆなちゃん準備できましたのでお願いします」
「あゆなちゃん?」
「あ、はい。そうです。16時30分予約の大春あゆなちゃんです」
「あ〜あの子ね。はいはい」

ジャー!と水道で手を洗う音が聞こえた。
コツコツという足音が近づいてくる。

--------嫌だ嫌だ、来ないで来ないで!神様お願い!

ギュッと目を閉じて私は心の中で何度も願った。
その願いも虚しく、私の頭上で男性の声が聞こえた。

「はい、あゆなちゃん、こんにちは。今日も頑張ろうね〜」

恐る恐る目を開けると、そこにはマスクをした男性が私を見下ろしていた。

「今日は泣かないでね。痛く無いからね」

男性はそう言うと歯の治療を始めた。

キーン!ゴゴゴォ……キーン!

「ギャー!わーん!あー!ギャー!」

ヒックヒック……

「痛くないでしょ!?泣いてると治療できないでしょ!」
「わーん!ギャー!あーーー!」
「もう知らん!痛くないでしょ!なんでそんなに泣くの!?ほんっとにもう!!!」

「こだま」が返ってきそうなぐらい部屋中に響き渡る声。
男性は手に持っていた器具を乱暴に放り投げた。

ガチャン!

「ちょっと!あの子泣き止んだらまた呼んで!」
「あ、はい。わかりました」

私は泣き喚きながら男性が遠くへ行くことを目で追っていた。
男性の姿が見えなくなると私は泣き止む。

「は〜い、あゆなちゃん、泣き止んだかなぁ?泣き止んでくれないと先生が困っちゃうんだって。頑張ろうね〜^^」

女性は涙でぐしゃぐしゃな私の顔を覗き込んで話しかけてきた。
30分ぐらいは時間が過ぎたかもしれない。
すっかり落ち着いた私のもとに突然、男性がまた現れた。
男性は無言で治療を始めた。
私はまた泣き喚いた。
しかし、男性は手を止めることなく、舌打ちをしながら治療を続けた。

キーン!ゴゴゴォ……キーン!

「ギャー!あーーー!あー!あー!」

ズォー!キーーーーーン!

私はただただ怖くて、ひたすらに泣き喚いた。

「はい!今日はもう終わり!はぁ……疲れた」

男性はそう言い残し、その場を離れた。
遠くでジャー!という手を洗っているような水道の音が聞こえた。

「あ〜あの子終わったし、片付けといて〜」
「はい、わかりました」

今度は女性が私のもとへ訪れて顔を覗き込む。

「あゆなちゃん、頑張ったね〜!もう先生来ないから大丈夫だよ^^」

口を開けたまま小さく頷く。
ゴムのようなものと金具を外され、私の口は自由になった。

「はい、あゆなちゃん、うがいしてね」

水の入った紙コップを渡され、うがいをした。
苦い味と匂いが鼻をつく。
歯科用ユニットから降りた私は待合室にトコトコと向かう。

--------もう来てるのかな。来なければいいのに。……いた!

そこには足を思い切り広げて、3人分のスペースを占領しているオヤジの姿。
偉そうに腕組みをしている。

「終わったんか!?」
「うん、終わった」

私とオヤジは受付から呼ばれるのを無言のまま待った。

オヤジはきっと私が辛い想いをしているのをわかっていたのだと思う。
でも、それなら「痛くなかったか?」「痛かっただろうけど我慢やな^^」「今日も頑張ったな!」という言葉をかけて欲しかった。

お金もかかる、仕事の時間も制限される、娘の辛そうな姿を見なければならない、歯の治療もしてあげたい、そんな複雑な想いもあったのだと私は思う。

でも、怒っているような態度はして欲しくなかった。
素直にその気持ちを言って欲しかった。

オヤジが怒っていると私は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
虫歯になりたくてなったわけでもないし、治療をして欲しいわけでもなかった。
オヤジが辛いなら私は死んでも良かった。

オヤジのそのままを、そのままの気持ちを素直に教えて欲しかった。

歯医者の男性医師も私が泣き喚くことで、唾が気管に入ったり、呼吸困難になる恐れがあったり、多少なりとも口が動いたり、頭が動いたりすることで治療の妨げになり、イライラしていたのだと思う。

でも、器具を投げ捨てたり、怒鳴ったり、ほったらかしにしたりは、して欲しくなかった。
他に患者さんもたくさんいて忙しいのだろうけれど、子どもの私にとっては、男性医師であるあなた自身が怖かった。

革靴のコツコツという音だけで、男性医師だとわかるぐらいに怖くて怖くて仕方がなかった。
男性医師もそれはじゅうぶんにわかっていたことと思う。

だからこそ、ちょっと笑わせてみたり、一緒に遊んだり、ほんの少しの時間でもいいから一緒に絵本を読んだり、男性医師は怖いという印象を書き換えて欲しかった。

女性のほうはおそらく歯科衛生士だったのではないかと思う。
いつも優しくしてくれていた。
でも、やっぱり男性医師の肩を持つかんじで「先生はあゆなちゃんが嫌いなわけじゃないからね」というようなことを言っていたこともある。

そういったことを聞くと幼い私でも「あ〜私の味方じゃないんだな」と感覚的に感じ取ってしまい、一瞬、安心感が生まれても一気に引いてしまう。
自分の立場や、医師の立場を第一優先とするのではなく、コッソリでもいいから私だけの味方でいて欲しかった。

例えば「先生、怖いよね、あそこまで言わなくていいのにね」「もっと優しく言えばいいのにね」といった具合に。



私はこうして欲しかった〜其の2〜へ続く
更新は不定期です。
出来るだけ早く更新していきたいと思っていますが、その当時のことを思い出しながらになるのでゆっくりしか書けないのが現状です。
気長にお待ちいただけると幸いですm(_ _)m
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気が向いたらよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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