"DIVIN" Vol.5
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
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FacebookやInstagramなどのSNSを使っていてよかったなと思うことの1つは、不意に「◯年前の今日の投稿です」と数年前のその日に起きたことをリマインドしてくれることだ。
忘れかけていた小さな出来事や思い出を、色鮮やかな写真や熱のこもったテキストがその輪郭をぼんやりしたものから次第に濃くしてくれる。
投稿されたその日のことだけではなく、その場所に至った経緯や些細なやり取り、その時の生活などとともに。
自分の場合、最近のこの”リマインド”は、2016年から世界中を2年半掛けて旅した時のものであることが多い。
「3年前の今日」はオーストラリアに住み、メルボルンからブリスベンに引っ越した日であったこと。
「2年前の今日」はアマゾン川を約4000km、ハンモック船で旅をした日であったこと。
「1年前の今日」は日本に帰国し、池尻大橋で仲間たちと飲食店をオープンした日であったこと。
”SNSの素晴らしさ”の1つと先ほど述べたが、今思うのはそれが写真の投稿であれブログであれ、何かを伝え、何かを残すことの大切さだ。
数年経ってから見ることで何かを思い返させる言葉もあれば、その時点での未来の自分 ーつまり今ー に向けた答え合わせのようなものもある。
これからも自分のペースを守りつつ、発信していくことを続けようと思う。
1年後の自分は何をしているのだろうか?
5年後の自分がこのDIVINを読んだ時にどう思うのだろうか。
そう考えるとアウトプットを続けることはやはり悪いことではない。
そんなことを思いながら今日もDIVINを夜な夜な書き、更新している。
行動圏内のコミュニケーション
前回のDIVINで紹介したアムステルダムの街で起きている近所付き合いの変化。
「オーバーツーリズム」で観光者が増えすぎ、従来の住民の生活を送ることが難しくなっていたが、自主的ロックダウン以降に彼らが「日常の生活」を取り戻し、ようやくご近所付き合いが始まったというもの。
一方で、アメリカではこんな研究結果が出た。
Kaiser Family Foundationが出したレポート。それは、コロナウイルスと社会的距離(Social distancing)の経験についてアメリカ国内に住む1,000人以上の成人に調査したもの。
自分自身、一緒に住む人、隣人の3つを評価するように依頼されたこの調査。
回答者の半数以上が、「Social distancingのガイドラインに従っているか」という問いに対して「大変優れている」という評価を自分自分に与えた。
さらに彼らは、一緒に暮らしている人より自分の方が少し優れていると評価している。
つまり、回答者の90%は自分自分がSocial Distancingの対応について「優れている」または「良い」と回答したが、これが一緒に住む家族の他の人にも当てはまると確信しているのは、少し下がり83%となるのだ。
興味深いのは、近隣の人々への評価。
回答者の24%が近所の人にC以下の等級(「平均」「悪い」または「不合格」)を与えた。
自分や自分の家族に比べて、異様に厳しいジャッジとなっている。自分自信をそれほど評価しなかったのは僅か11%の人のみだ。
日本での人々の考え方はどちらだろう。もちろん首都圏や地方でも環境・状況は異なる。
なんとなく自分は、東京は「アムステルダム」というよりはこの「アメリカ」的な印象を受ける。
「ご近所付き合いがよくなる」というよりは、ウイルスという見えない恐怖に対し、自分や自分の家族以外の人々への心理的境界線がさらに高くなり、壁が広がっている気がする。
勿論、その国のある街、ある人のみに言えることであり、全体を指して言えることではない。
が、昨年日本に帰ってきたときに違和感を覚えた「人と人の心理的距離感」、「コミュニケーションの取り方」を再度思い出された。
例えばオーストラリアに住んでいた時。
バスに乗車してまず運転手さんと挨拶をする。「今日は暑いねえ。」なんて言いながら、ICカードをタッチ。
そして下車する時は、老若男女みな「ありがとう!いい1日を!」と運転手に言って降りていく。
そんな日常が大好きだった。
花を買い、花を抱えて家路を歩いていると、すれ違う人に「素敵なお花だね!」と声を掛けられる。
バレンタインデーには職場に恋人が来て、接客そっちのけでイチャイチャし始める。そんな2人をお客さんは両目の端にしわを作り、優しく見守る。
今は電車やバスといった公共交通機関の利用が一気に減り、行動は家から半径2〜3kmの近隣が中心となっている。
今までの生活では(特に東京では)、見過ごされていた近隣の人々との関わりがこの機会に深くなれば良いなと思う。
究極のエコプロダクト
従来のボトルの交換でなく、詰替え用のパッケージが一般的になるなど、エコ・フレンドリーへの取り組みは次第に浸透している。
新たにカテゴリーとして少しずつだが登場しているのは、「粉末から液体に」なるプロダクトだ。多くのものは、水を加えるだけで製品が完成する。
粉末であるため発送コストも抑えられ、パッケージに掛かるコストも低くなり、なにより環境にも良い。消費者には多くの点でメリットがある。
例えば、液体の持ち込みが面倒な国際線での移動でも、粉末であれば全く問題がない。旅行の際もパッキングも楽になる。
そんなプロダクトをいくつか紹介。
FORGOはスウェーデン・ストックホルム発のハンドソープのブランド。
Instagramの世界観は統一され、高級感も漂う。(スターターキットが7000円近くするので高級品ではあるのだが)
梱包においてもパッケージにおいても、プラスティックフリーを謳い、紙やコンポスト可能なものを使用している。
2020年9月から発送が開始となる予定で、今はプレオーダーが始まっている。
More sustainable with less.
Choose Less.
の言葉がサイトデザイン、書体などにも共通していて気持ちがいい。(Appleの製品を眺めているときと同じ印象)
スキンケア商品やCBDグッズを取り扱う「Prima」は、CBDショットを販売。水やコーヒー、お茶に加えるだけで特別なドリンクとなる。
共通点としては、オーガニックやサステナビリティ、エコ・フレンドリーなパッケージングなどを元々追求していたブランドがこの領域に進出しているという点。
その方針は一貫性があるし、何よりブランドとしての信頼感、説得力は更に増す。他にも乳幼児フードや歯磨き、シャンプーなど多くのブランドがこの”粉末プロダクト”を販売している。
聞いただけだと、従来の液体製品などに比べて品質が悪そうな印象を正直受ける。仕方無しに使う「代替品」のようなイメージ。
しかし、そんな考え方も古いのだろう。いま出てきているブランドのどれもが試してみたくなるものばかりだ。
Find more enjoyment.
アメリカの大手ブランドコンサルティングエージェンシーであったGin Lane。
彼らは、Everlane、Hims、Harry’sといったアメリカでも特に成功を収めたD2Cブランドのブランディングを担ったことで、世界でも指折りのブランディングエージェンシーとなった。
彼らがブランディングエージェンシーとして、育てたブランド全体の市場価値はなんと約150億ドル(約1兆6000億円)。
そんなGinLaneが2019年8月にブランディングコンサル事業を辞め、自らが事業会社に転身し、自らプロダクトを作ることを宣言した。それがPatternである。
PatternはブランディングカンパニーからDNVBの事業会社に転身した。
DNVBとは、Digitally Native Vertical Brandのこと。
DNVBという言葉の定義はアメリカ・Walmartが買収したことでも有名なオンライン男性アパレルの「BONOBOS」の創業者・CEOのAndy Dunnの造語を語源とする。
「デジタルをネイティブ」とした起源で立ち上がった事業が「バーティカル産業に特化」し、「ブランドを育む」ことを目指すと定義する。そして、それは単なるD2Cとは区別して紹介している。
たとえば、2000ドルするエアロバイクを展開する「Peloton」(ペロトン)。ジムが休業する今、さらに人気となっている。
Pelotonはエアロバイクを売る(D2C)だけでなく、エクササイズのためのオンライン動画コンテンツを自社のスタジオで製作し、同じクラスを受講している人同士とつながることができるコミュニティサービスも構築。配送のバンまで自社で整備し、バリューチェーンを統合している。
つまり1つの販売チャネルを持ち、ユーザー・消費者と繋がっているD2Cと異なり、DNVBは商品を売るだけでなく、それ以外に無料・有料のサービス、コンテンツでブランドを作っていると言える。
そんなGin Laneがブランディングエージェンシーをやめ、Patternを始めるときのステートメントはとても素敵。
彼らがどんなことを考え、どんなことをしていくのか完結に伝えている。
In this state of chronic burnout, our generation has lost the ability to find enjoyment in everyday moments — the simple pleasure of doing something (or even nothing) for the joy of it, rather than the end result of improving oneself.
彼らが過去に手がけていた各ブランドのクリエイティブがとても好きで(Hausというアルコールブランドもかっこいい)、自分はPatternのニュースレターも登録している。
Patternがいま手がけているブランドは2つ。Equal PartsというキッチンブランドとOpen Spacesというインテリアグッズのブランドだ。
Patternのミッションは、「To help our generation find more enjoyment in daily life.」。
10年以上のブランディングエージェンシーの経験を踏まえ感じたミレニアムズの生活の課題に対し、1つのブランドでなく複数のブランドで取り組む。
それを「ワンミッションマルチブランド戦略」と彼らは呼んでいる。
この戦略を取る理由を「人々の習慣を変えるのは難しい」と言っており、「消費者とより深い、より個人的な関係を、長期に渡って作っていくことで、顧客にサービスを提供する」としている。
まさにその通りで、1つのものが変わったからと言って、ライフスタイルまでが変わるとは言えない。人々の生活は色々な点の集まりで形成されており、複合的に捉えていかなければいけない。
どんなに素敵な食器を持っていても、植物も無く、アートも心落ち着く寝具もない生活は、本当に生活の中にenjoymentを見つけられたと言えるだろうか。(もちろん人によるが)
さて、そんなPatternのブランド、Open Spacesが今週出したインタビュー記事が素敵だったので紹介。
ブルックリンを拠点に活動するフォトグラファーのJustinのインタビュー。質問も彼の回答も、彼の撮影する写真もどれも自然体でいい。
Photography gets me out of bed in the morning. Photography keeps me up late at night.
encourage people to slow down and appreciate how beautiful simple moments can be.
最後にはJustinがオススメするOpen Spacesの商品の紹介がされている記事なのだが、記事の内容はまさに「find more enjoyment in daily life」に通じているし、サイトの色味も好み。
GinLane(現Pattern)はミレニアルズたちはつねに「Do more」、つまり「何かしなければならない」「もっとこんなことをしなければいけない」というような強迫観念にかられ、それが彼らを疲弊させていると言っていた。
その強迫観念から人々を解放するために自らブランドを興し、始めた挑戦。これからもPatternが作るプロダクト、世界がとても楽しみだ。
さて、今回のDIVINはここまで。
本当はあともう2つ紹介したいトピックがあったのですが、文字数が結構いってしまったので、また次回。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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illustration : @mihirayuta