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"DIVIN" Vol.28
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
プライベートブランドのデザインの変化
アメリカの大手スーパーのプライベートブランドのパッケージデザインの変化についてのある記事を紹介。
アメリカ・Targetが2019年夏に発売を開始したプライベートブランド「Good & Gather」は、それまでのプライベートブランドとは異なり、買い物客が予算内で買い物を済ますために選ぶ、というよりも「それがほしい」という気持ちにさせるようデザインされている。
プライベートブランドは「安いものを買う」選択肢であったが、ここ最近はそのポジションが大きく変わってきているというものだ。
買い物にいったことのある人ならイメージがつくと思うが、スーパーの売り場では、ひとつの商品に対して何十もの選択肢がある。
トマト缶一つでも数種類あり、どれが一番いいのか、”いつものお気に入り”が特に決まっていないものであれば尚更その判断は難しい。
Targetのブランドは(1)最も安い価格で、(2)良い品質のものを手に入れることができる、というコンセプトを取った。
一般的に、パッケージデザインを含むデザイン・クリエイティブに力を入れる理由として、「より高いものを買ってもらう」ためであるとこの記事は説明している。
「欲しくなる」デザインにして、単価を少し上げる。手が届かない、敬遠されてしまいそうな高単価の商品を高級感のあるデザインにすることで、思わず買いたくなるマインドを作る。
オーガニック系ブランドが洗練された印象のパッケージをつくり、そのロゴに大金を掛けるのはその一端である。
しかし、プライベートブランドの場合は理由が異なる。
デザインは消費者に商品を「より高く買ってもらう」ためのものではなく、むしろ、安くてもいいモノであると思ってもらえるようにすることが目的だ。
プライベートブランドを購入することを「妥協した結果」ではなく、シンプルで魅力的な、見た目にもこだわった1つの選択肢に置き換えさせることで、利益率を向上させつつ、ブランドロイヤリティを高めている。
ShopRiteの「Bowl & Basket」というラインも良い例だ。
(ShopRiteは南アフリカ発のスーパーチェーン。アフリカに住んでいたときによく通っていたので懐かしい…)
2009年の不況の中、プライベートブランドの人気は急上昇した。利益率を大きく取れる小売店は主食だけでなく、スナックや飲料、調理済み冷凍食品などの新しいカテゴリーにも進出した。
プライベートブランドは、ある意味いま流行りのD2Cブランドの原点である。
流通コストは他のナショナルブランドに比べてはるかに低く、小売店の利益に大きく貢献する。
小売店は、第三者の共同製造業者(パートナー)のと直接取引し、独自の食料品の製造を委託する。様々な食品ジャンル、カテゴリーでそのパートナーを見つけやすくなったことで、小売企業にとっては「イノベーションは簡単に購入でき、スイッチを入れるだけ」という状況になっていると言う。
つまりオーガニック食品も、それを扱うパートナーを見つけ、提携することで自社発での販売が可能となる。0から育て、品種を考え…といったプロセスは無い。
また、このようなモノを作る力の向上に加えて、小売店、小売企業の大きな強みは顧客データだ。
買い物の傾向を把握し、その情報をもとに人々が欲しがるであろう商品を自社で製造できることは彼らの大きな強みである。
メーカーが調査するよりも、毎日生きたデータで様々なブランドを横並びで分析することができる。日本でもセブン-イレブンに代表されるような、「強いPB(プライベートブランド)が多く誕生し、ヒット商品が開発された。
もう一つ代表的なリブランドの一つが、ホールフーズ・マーケットの「365」だ。
全米でリブランディングを行ったこのブランドは、そのパッケージデザインで(高級品とまではいかないが)、明らかにブランドイメージを向上させた。
1990年に発売された「365 by Whole Foods Market」は、パスタソースとトマトソースだけでスタートした。今では3,000種類以上の商品があり、そのうち400種類が2020年に発売された。まさに急成長だ。
同社のクリエイティブ&デザイン部門のエグゼクティブ・リーダーであるWillは「今回のリブランディングでは、モダンでクリーンな美意識を表現しつつ、同時に喜びと”気まぐれさ”も表現したいと考えた」と言う。
「喜び」は、今回紹介したブランドたちを特徴づける言葉である。
TargetはGood & Gatherのブランドは「食の日常的な喜びを発見する」ことを目的としていると述べている。Bowl & Basketは「喜びの瞬間の出発点を象徴している」のだそうだ。
大胆だけど刺激が強すぎない。温かみがあるが、古臭くはない。遊び心がありながらも洗練されている。
そんな温度感のブランド作りを心がけていると言う。
ドバイでのフードデリバリーアプリ市場
Talabat、Deliveroo、Careemなどのデリバリーサービスを利用すれば、ドバイでは、高級レストランからカジュアルなレストラン、ファーストフードまで幅広いジャンルの食事をすぐに楽しむことができます。
しかし、この湾岸都市のレストランにとってはデリバリーアプリ間の激しい競争により、ただでさえ減少している利益に加え、より高い料金が課せられている。
デリバリーアプリは、広大な配送インフラと確保するドライバーたちを活用して、顧客を確保しようと必死になっているレストランに利用料金を要求する。
30億ドル規模の中東のフードデリバリー市場の過半数のシェアを獲得するために、デリバリーアプリはレストランに対して、1件の注文につき35%もの高い手数料を請求していた。
しかし、最近ではその手数料でレストラン業界が苦しむ中、大手のデリバリーアプリ各社はレストランに対して優しい措置を取り始めている。
Uberが支援するCareemはタクシー事業、食料品の買い物代行、自転車のレンタルなどを行っているが、手数料を完全に廃止し、その代わりにレストランに対して月額固定の利用料を請求すると発表した。
ドバイの低迷するレストラン業界は観光に大きく依存している。2020年の海外からの訪問者数は例年の3分の1以下となっており、フードデリバリーが彼らにとって大きなウェイトを占めるようになったのだ。
日本でもUBEREATSに加え、多くのフードデリバリーアプリが2020年からのコロナの影響を受け、登場し急成長した。
ユーザー側だと、この注文にいくらの手数料をレストランが支払っているのか、どんな利益になるのか、といったことは中々想像しづらい。
遠く離れた、この中東の都市でも飲食業界が苦しむ中でアプリ各社とレストランとの対立、そしてアプリ各社同士での熾烈な戦いが続いている。
今週見つけたブランド:Yola
女性のみで製造されているメスカルブランド。ファウンダーの一人でもあるYolaのメキシコ・オアハカに住む彼女のおじいさんのレシピをもとに製造している。
ファウンダーのYola、Gina、Lykkeの3人が出会ったのは10年以上前。
長年の友人関係を経て、またオアハカにあるYolaのおじいさんの農家を何度も訪れた結果、女性が酒類業界で表現することの必要性に気づき、Yolaを設立した。
Yolaは地域で珍しい女性だけのボトリング施設を作り、直接給料を支払い、とよい環境での育児を提供している。
そんなYolaは3週間前にリブランディングを行い、パッケージデザインも新しくなった。
以前はYolaのロゴはゴシック体のものだったが、新しいものはその特徴的なフォントが目を引く。揺れた、イラストのようなラインが、メキシコやトライブ感を表現している。
シンプルな色使いながら印象に残る強さがあり、Instagramの写真はどれも美しく、アート性が高い。
カリフォルニアの各都市で販売されているこのYola。是非一度飲んでみたい…
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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illustration by @mihirayuta