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ユグチスト流【湯口の魅力とは?】
ライオンやクマのような動物の形のもの、ドバドバで気持ちのいい湯量を感じられるもの、温泉の析出物が付着しモコモコになったもの、などなど。温泉の「湯口」にはたくさんの魅力が詰め込まれています。
そんな感じで湯口の話をすると、「湯口、良いよね、わかるよ」と言ってくれる方も、少数派ではありますがいらっしゃいます。そこに共感してもらえるのは死ぬほどうれしい。ですが、湯口の話をしても感覚的に7~8割くらいの方は「あ、そう」とか「別にいいとも思わない」とか「そんなこと言われてもちょっと気持ち悪い」とか、ネガティブ寄りの反応が返ってきます。湯口の素晴らしさを発信していきたい「ユグチスト」としては、そんな皆さまにも「湯口の魅力」を少しでもわかってもらえるといいなと思います。
ということで、今回はユグチストが考える「湯口の魅力」をまとめてみました。
なぜ湯口が好きになったのか
本題の湯口の魅力をすぐに紹介したいところではありますが、ユグチストがなぜ湯口好きになったのか、を書きたいと思います。ユグチスト的に、ここは結構大事です。
交通事故の後遺症を「湯治」で癒す
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きっかけは、2008年の大学時代。当時、北海道の網走で学生生活を送っていた私は、友人とのドライブで訪れた知床で、車が大破する大事故に見舞われました(車でヒグマに突っ込み、車が吹っ飛び2バウンドする)。その際に頸椎を骨折し、1か月入院。幸い、骨折は手術なしで完治しますが、折れるタイミングで頸椎周りの神経を傷めたため、右手にマヒが残ります。その後遺症は入院中のリハビリでは治りきらず、思い立って温泉療法の「湯治」をやってみることにしました。
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退院後、湯治宿として有名な北海道長万部にある「二股らじうむ温泉」へ。1日8時間、温泉につかる湯治ライフを2週間決行。最初の1週間は特に症状に変化がなく心配でした。8日に発熱と発疹の「湯あたり」の症状が出てから劇的にマヒと痺れが良くなり、最終的に後遺症は完治していました。「温泉って本当に効果があるんだ!」ということで、温泉にハマるターニングポイントとなります。
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温泉の「鮮度」を求めて
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湯治を経験した私は、温泉の「効果・効能(薬効)」を求める嗜好になり、行きついたのが「鮮度」でした。温泉は湧きたてが一番、成分が濃厚で活き活きとしているので「薬効」も高いと考えたわけです。湯船の中で、温泉が最もフレッシュなコンディションなのが「湯口」なのですね。鮮度の良い温泉を求めて湯めぐりをしていると、無意識に湯口と向き合い、気づけば私の温泉写真の半分以上が「湯口」になっていました。
湯口の魅力とは?
というわけでやっと本題です。結局のところ湯口の魅力は挙げればキリがないのですが、思い切って2つに集約しました。1つ目は「温泉の鮮度が良い」こと、2つ目は「絶景でありアート」であることです。
①温泉の「鮮度」が良い
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湯船で最初にお湯が出るところが「湯口」。その温泉の中では、湯が生まれる場所ですので、もっとも「鮮度の良い」源泉を味わうことができます。いくら源泉かけ流しの湯船でも、空気に触れた瞬間から成分のエイジングが始まり、どんどん変化してしまうものです。特に硫化水素や二酸化炭素といったガス性の成分は、湧出後すぐに気化してしまうため、フレッシュさがとても大切。つぎたてのビールが、時間の経過とともに炭酸が抜け、美味しくなくなるのと似ていますね。
②湯口=絶景・アート
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源泉がドバドバ大量に流れて爽快だったり、ライオンやクマ、女神様などのオブジェのような形だったり、硫黄や炭酸カルシウムなどの成分が析出し、モコモコやコテコテになっていたり、湯口はその見た目も魅力的です。形容すると、 美しい、フォトジェニック、可愛い、萌え、感動、癒し、驚きなどでしょうか。
人工物である元々の湯口に、天然の温泉がゆっくり時間をかけて作り出すその姿は、どんな露天風呂の景色よりも「絶景」だな、と思います。また、自然のめぐみが多分に含まれるその美しい絶景には、「アート性」も感じられます。そんな湯口を眺めながらお湯につかっていると「美術館に展示したいくらいの芸術作品だな」と思うこともしばしば。湯口は浴室のシンボルになるような存在。それであれば、「湯口=絶景・アート」なのではないでしょうか。
湯口の楽しみ方
ユグチストが考える湯口の楽しみ方は大きく2つあります。1つ目は「五感で味わう」こと、2つ目は「再訪して湯口の変化を見守る」ことです。
①五感で味わう
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湯口好きを自認する前から、「源泉の個性を感じられること」が私の温泉の楽しみ方でした。もちろん、湯口そのものの見た目(視覚)も大きな楽しみのひとつですが、湯船の中で最高な鮮度の源泉を味わえるため、より聴覚、嗅覚、味覚、触覚でその個性をダイレクトに感じることができます。
何もせずにゆっくりと湯につかる湯浴みも気持ちいいし、癒されるものです。しかし、自分から湯の個性と対峙するように、アグレッシブに湯口と源泉に向き合うことで、もっと深い癒しと温泉との一体感を得られると感じます。絶景やアートは眺めるだけ、見るだけですが、湯口は五感で味わうことのできるアクティビティな「絶景・アート」なのですね。
<五感別で感じる湯の個性>
〇視覚…絶景・アート性
〇聴覚…ザバザバ、チョロチョロなどの湯の流れる音
〇嗅覚…硫黄、アブラ、モール、鉄などの香り
〇味覚…塩ダシ、甘味、鉄、炭酸などの味
〇触覚…硬い析出物、やわらかい湯の花、湯のスベスベ、ヌルヌル、キシキシなどの感触
②再訪して湯口の変化を見守る
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私たち人間と同じで湯口も生きています。訪れた際はまだ若い湯口でも、数年後に再訪すると、析出物が大きく育っていたり、源泉が染み込み良い色合いになっていたり、湯に磨かれて丸くなっていたりと、その変化を感じることができます。まるで親戚や友達の子供の成長を見守るように、こんなに大きくなったのだなと、賑やかでうれしい気持ちになるものです。
逆に、少し寂しい気持ちになるけれど、大きく育った析出物がトリミングされてスッキリしていたり、湯口そのものが老衰や故障により、子の代に引き継がれていたりすることもあります。でも、それは生きている限り仕方のないこと。湯口たちも大きな命の循環の中にいるのですね。歌舞伎の世界のような「世襲制」と考えれば、次の世代まで続くことは喜ばしいことです。
魅力的な湯口4分類
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本記事の最後にユグチストが勝手に考える魅力的な湯口4分類をご紹介します
〇析出物アート
温泉成分の析出物が織りなすアートな湯口たち
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〇オブジェ、デザイン
湯口そのもののデザイン性が高いもの
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〇湯量ドバドバ
圧倒的な湯量が爽快で気持ち良い
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〇ミックス型
析出物、オブジェ、湯量の2つ以上がミックスされた湯口
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いかがでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございます。皆さまの素敵な「湯口ライフ」のご参考になれば幸いです。