就業規則をWordでいい感じにするためのお作法
私、Wordのこと、何もわかってなかった・・!
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの人事の渡邊です。今年の2月に会社の就業規則を大幅改訂しました。残業代計算や労働時間管理の方法を見直すことになったことがきっかけです。
これまでちょこちょこと改定を重ねてきた結果、ケンブリッジの就業規則は熱海の旅館のようにツギハギの状態。条文間の整合がとれていないなど、全体の構成に歪みが出ていたのです。
なのでこれを機に、厚生労働省のモデル就業規則をベースに大きく書き換えることに決めました。
社労士の先生にお金を払って全部お願いしてもよかったのですが、自分の勉強になるかもという思いもあって、あえて自力での改訂に臨みました(もちろん、最後に顧問社労士チェックは通していますが)。
その結果、めちゃくちゃ大変な思いをしました。就業規則の内容にも苦労しましたが、Wordの機能にも苦しみました。
就業規則×Word機能という文脈で言及しているnoteはあまり多くないので、同じことで悩む人事担当者の力添えができれば・・と思い書き記しておきます。Wordに詳しい人からすると「お前、そんなことも知らなかったの?」というレベルかもしれません。
改訂前の困りごと
前述のとおり、今回の改訂以前は就業規則の条文をWordでちょこちょこ修正するレベルでした。その結果、書き方の点では以下のような困りごとがありました。
・条文の書き出しの位置(インデント)が微妙にずれてしまう
・箇条書き番号のインデントも微妙にずれてしまう
・条文を追加・削除することで、「第XX条に定めるところにより~」という参照先がずれてしまう
以前の私はインデントの位置や箇条書きを手作業でちょこちょこ修正したりしていました。今から思うとなんと無駄なことをしていたのか・・。
2カ月くらい就業規則と向き合った今、過去の自分にアドバイスしたいのは以下の3つです。
①アウトラインを使いたおす
②見出しを使いたおす
③相互参照を使いたおす
Wordのお作法①アウトラインを使いたおす
まず、就業規則のアウトラインを整えることから始めます。「アウトライン」とは、Wordの文章を構造的に表現したものです。
Word上部の「表示」→「アウトライン」をクリックすると表示されます。
就業規則に代表されるような制度文書は、第1条・第2条・第3条、その下のレベルに第1項・第2項・第3項と、きれいなツリー状の構造になるものです。
改定前の就業規則のWordファイルをアウトライン表示で見てみると、こんな感じでした。全然ツリー状になっていない。
今回の改定では↓のように階層化しました。章の下に条、条の下に項がぶらさがっています。このツリーの階層のことを「レベル」と呼びます。
厚生労働省のモデル就業規則はPDFでしか配布されていません。そのため、まずはまっさらなWordにモデル就業規則(PDF)の文言を貼り付ける作業から始めます。地味な作業です。
その後、アウトラインで章・条・項・号ごとにレベルを割り当てていきます。この間、フォントやインデントは気にしなくてOKです。
なぜアウトラインから作るのが重要かと言えば、「まず中身をつくり、見た目を最後に整える」という手順を徹底できるからです。
Word作業で最も非生産的なのは「中身を書く→ちょっと見た目が気になって修正する→また中身を書く→見た目を修正する」の行ったり来たりです。
アウトライン表示では見た目に関する情報が一切排除されるので、中身を詰めることに集中できます。
ここで、ちょっとお悩みポイントが。
厚生労働省のモデル就業規則は、以下のような条文の構成になっています。
(見出し)
第XX条 条文
2.条文
3.条文
つまり、
・「第XX条」の前に見出しが来る
・第2項から項番が振られる
わけです。これ、Wordのアウトライン機能とすこぶる相性が悪いんですよね。ケンブリッジの従来の就業規則も同じ構造になっていました。なので、今回の改訂を機に、以下の構造に改めました。
第XX条 (見出し)
1.条文
2.条文
3.条文
こうするとWordのアウトライン機能をしっかり使え、かつ後述する相互参照機能もフル活用できます。
ちょっと試行錯誤はしましたが、最終的にアウトラインにおけるレベル定義はこのように落ち着きました。
レベル1:本編、附則
レベル2:節
レベル3:章
レベル4:条
レベル5:項
レベル6:号
Wordのお作法②スタイルを使いこなす
アウトラインが固まったら、「アウトラインを閉じる」を押して標準の表示に切り替えます。ここからは、見た目を整えるステップです。
「ホーム」タブの右側に「スタイル」という表示があります。
スタイルは「文章の見た目のパッケージ」だと思ってください。フォントの種類、サイズ、インデント、行間などをまとめて指定できます。
まずは難しく考えず、レベルとスタイルを割り当てるところから始めます。レベル1の文章のところにカーソルを置いた状態で、「見出し1」を選ぶ。こうすると、レベル1の文章がすべて「見出し1」というスタイルに変わります。特にこだわりがなければ、以下のように割り当ててみてください。
レベル1(本編、附則):見出し1
レベル2(節):見出し2
レベル3(章):見出し3
レベル4(条):見出し4
レベル5(項):見出し5
レベル6(号):見出し6
次に、スタイルを修正します。大事なのは、文章を直接いじらないこと。文章を直接いじってしまうと、その文章だけ変更が反映されてしまい、同じレベル同士で見た目が不ぞろいになります。必ずスタイルの方を修正しましょう。
変更したいスタイルにカーソルを当てた状態で右クリック→「変更」をクリック。
左下の「書式」をクリックします。
「フォント」あるいは「段落」を選んで修正します。
スタイルを修正後、スタイルにカーソルを合わせて右クリック。「選択個所と一致するように見出し〇を更新する」を押せば、同じレベルの文章に同じスタイルが適用されます。便利!
なお、すべての段落に対して「箇条書き」を適用してください。第1条、第2条と条数を手入力すると、後述する相互参照がうまく使えなくなってしまいます。
誰の参考になるか分かりませんがこの記事の一番下に、私が使ったレベルごとのフォント・段落の設定を書いておきます。
このアウトライン+スタイルを使うことで、就業規則という構造化された文書は見た目も整い、かつメンテナンスしやすいファイルに変わります。
Wordのお作法③相互参照
・条文を追加・削除することで、「第XX条に定めるところにより~」という参照先がずれてしまう
というお悩みに対しては、相互参照を使います。相互参照というのは、簡単に言えばリンクです。↓の画像で言うと「第19条1」と「第21条1」は手入力ではなく相互参照になっています。「項」の文字は手入力です。
仮に19条より前の条が削除されて条数が前倒しになった場合、↑は「第18条1」「第20条1」に自動で置き変わります。便利ですね。
相互参照を入れたい場所にカーソルを置いて、「挿入」タブ→「リンク」→「相互参照」を選びます。
「番号付きの項目」「段落番号」を選び、挿入したい条や項を選んだ状態で「挿入」を押します。
相互参照はちょっと使いづらいところも確かにありますが、条数ズレのメンテナンスの手間を考えると、使うメリットが大きいはず。
まとめ
アウトライン・スタイル・相互参照を駆使して、楽しい就業規則ライフをお過ごしください。
このほかにも、地道な人事の取組みに関するnoteを書いています。興味があればご一読ください。
・人事評価を"選択的公開制"にする試み
・15年続いた福利厚生制度、やめました
・給与・賞与の計算ロジックは1円単位まで公開している話
最後に、私が使ったスタイルの情報を書いておきます。
【見出し1】
フォント : (日) +見出しのフォント - 日本語 (游ゴシック Light), (英) +見出しのフォント (游ゴシック Light), 12 pt, インデント :
左 : 0 mm
ぶら下げインデント : 4.25 字, 間隔
段落前 : 1 行, 次の段落と分離しない, レベル 1, 段落番号 + レベル : 1 + 番号のスタイル : 1, 2, 3, … + 開始 : 1 + 配置: 左 + 整列 : 0 mm + インデント : 7.5 mm, スタイル: リンク, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準
【見出し2】
フォント : (日) +見出しのフォント - 日本語 (游ゴシック Light), (英) +見出しのフォント (游ゴシック Light), インデント :
左 : 7.5 mm
ぶら下げインデント : 4.26 字, 次の段落と分離しない, レベル 2, 段落番号 + レベル : 2 + 番号のスタイル : 1, 2, 3, … + 開始 : 1 + 配置: 左 + 整列 : 7.5 mm + インデント : 15 mm, スタイル: リンク, 使用するまで表示しない, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準
【見出し3】
フォント : (日) +見出しのフォント - 日本語 (游ゴシック Light), (英) +見出しのフォント (游ゴシック Light), インデント :
左 : 15 mm
ぶら下げインデント : 4.25 字, 左揃え, 間隔
段落前 : 1 行, 次の段落と分離しない, レベル 3, 段落番号 + レベル : 3 + 番号のスタイル : 1, 2, 3, … + 開始 : 1 + 配置: 左 + 整列 : 27.5 mm + インデント : 35 mm, スタイル: リンク, 使用するまで表示しない, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準
【見出し4】
インデント :
左 : 22.5 mm
ぶら下げインデント : 2.27 字, 左揃え, 次の段落と分離しない, レベル 4, 段落番号 + レベル : 4 + 番号のスタイル : 1, 2, 3, … + 開始 : 1 + 配置: 左 + 整列 : 22.5 mm + インデント : 30 mm, スタイル: リンク, 使用するまで表示しない, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準
【見出し5】
フォント : (英) +見出しのフォント (游ゴシック Light), インデント :
左 : 35 mm
ぶら下げインデント : 4.2 字, 左揃え, 次の段落と分離しない, レベル 5, 段落番号 + レベル : 1 + 番号のスタイル : ①, ②, ③ … + 開始 : 1 + 配置: 左 + 整列 : 35 mm + インデント : 42.4 mm, スタイル: リンク, 使用するまで表示しない, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準
【見出し6】
インデント :
左 : 40 mm, 左揃え, 次の段落と分離しない, レベル 6, スタイル: リンク, 使用するまで表示しない, スタイル ギャラリーに表示
基準: 標準
次のスタイル: 標準