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2021年5月に生まれた歌『平原の草』

訴えるように弾けて炭酸はさわさわさわさわ爽やかに主張

青き実のわが空洞に生りをればその光沢を命と思ふ

空洞の青き実に差す薄き日は鋭く脆き玻璃のやうなる

羽をもつ生れしばかりの虫をりぬ葉の上にわれをただ危ぶまず

虫生れて新緑の葉と同じいろキレキレの彫刻のごとくに

順調な夢だったような気がするけど残像に力む顔のわたしが

きゅっきゅっと可愛い音のして締まる昭和のままの蛇口がよくて

風ゆるくゆわゆわゆわゆわ葉もゆれる春のいちばん最後の日なり

気まぐれを責める気まぐれお互いにそこここにある棚とか倉庫

晴れるかな晴れてね未熟なわたしには天気も要素なのでなのです

音もなく雨が降ってる音もなく降っても皆がそれを知ってる

飴のように終わらせる言葉舐めながら溶けてなくなるまでの冷静

永遠に鼓動に添えよ心臓を揺らし続けよ愛しき歌よ

平原に少しは草も生えていたみたいな今日も終わってくれる

半袖はまだ寒かったどこからか鳥の雛らの囀りと風

洞窟に住まふ時代も一日の終はりに歌ふ歌のありしか

洞窟に歌響くとき星々のその瞬きの殊更なるか

東へと西へと飛行機雲のびる空おおらかに御所の上にあり

(※上にあり→読み「へ(え)にあり」)

透明な言葉が見えて透明な空気の色が見えたりもして

どうしてもキュウリは曲がりたいのだと育ててみたらわかるかもです

鳥よりも早く目覚めてしまったかやがて雛らもかびすましきよ

鳥たちは夜は静かに眠るんだ我らも朝を待とうじゃないか

大切に仕舞ったはずのものだった仕舞ったものは幻想だった

そのツンと立つ生意気なクリームが箱に触れないように仕舞おう

詩心のなき一日もまたありて空も何かに堪えて曇らん

翻弄の風強く深く厚く覆う過去も未来も揺るがせながら

浜辺には適宜落ちてる棒があり空に向かって夢を描かせる

猫になる物語など多々あれど大切なのは自分のケース

初々しき今年の棘をあらはにし薔薇不器用に開き切りをり

つながりも空しきものよ晴天のはずの五月はどうしたんだろう

その件はわからないけどわかるから無言なんです五月尽

朝焼けは久しぶりだな太陽のいる方に回っていくんだなぁ

混沌は掘り返されてやがて乾きこんな嵐の晩に戻る何かに

葉の付いたままのニンジン自転車のかごでさわさわしてて可愛い

静寂なこの空間に充ちている時間は粒子のようなものかも

失敗の多い自分も楽しんでいますよどうぞ梅雨に入って

わが窓に足長蜂も黒蝶もゆらゆらと来てゆらゆらと去る

風が作るあまたの音と添い寝しつつ幼き子らの笑い声聞く

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ちょっと昔の五月に生まれた歌


絡まりし糸はそのまま解かぬまま塊のままで私はよいの

よき友よよき忘却をありがたうみどりとりどり耀ふ五月

ざくろざくろ石榴の花が咲き初めぬ情け濃きものがための雨に

白きこと唯一のこと貴きこと香りを持たぬ本当のこと

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