読書・読解の手順

読書して感想文を書くという行為は、
映画を観て内容を語り合う行為と似ている。

読み手Aが本の内容Bに触れ、なにかしら変容したこと(A')を記録する。

[1] 瀬尾正樹. 読書感想文指導の構想. 国語教育研究(26中), 476-485, 1980-11-04 (1980). 

瀬尾(1980)[1] によると、読書感想文を書く手順は次のとおりである。

1.注意深く作品を読み込む

①登場人物
(1) 主人公(あるいはおもな脇役)はどんな人物か(身分、性格、思想、心理、言動など)
(2) 主人公をめぐる人間関係はどうなっているか

②構成
(1) 作品の世界はどのように設定されているか(日時、場所、人物、事件)
(2) 話は誰の立場(どんな視点)から書かれているか
(3) 主題のためのプロット(筋)はどう立てられ、どう展開しているか

③主題
作品全体を通して、作者はなにを表現し、なにを言おうとしているか

④表現
用語、修辞、文体にはどんな特質があり、どんな効果を上げているか

2.考え、感想をメモする

1.登場人物の生き方と自分とを比べて、どんなことが考えさせられるか
2.主題についてどう思うか
3.最もよいと思うところはどこか。また、作品全体に対する印象はどうか
4.感銘の深い語はないか。あった場合、それはなぜそんなに感銘が深いのか

3.感想文のアウトラインを作る

各材料を集める→アウトラインを作成・・・のような一般的な方法
(ただし生徒に意欲が湧くのか謎。メモの段階で評価できれば…)
・・・
なにを書いてよいかわからないという生徒には、他人の書いた感想文もこのプロセスで提示する。


-------------------------------------------------------------


[2] 深川賢郎: 読書感想文の手びき : 書きたいことを明確に把握させて書かせるための工夫. 国語教育研究(25), 59-70, 1979-08-01 (1979). より 

深川(1979)[2] によると、読書感想文のコツは次のとおりである。

1.本の選び方

1.自分の力で読みこなせそうなもの
2.情報の求めかた(あらかじめその本について知る方法)

2.本の読み方

1.書き込み
2.正確・公平な読み
3.深い読み
4.反論・批判・疑問・同感・共感のメモ
5.資料を求める

3.読書のメモ

あらすじ・主題・意見感想 *1

4.考え(感想)のまとめかた

1.本に述べられている事実と自分の考えを大切に
2.心に残ったことに対して、考える材料を集める
3.「私」とのかかわりを大切に
4.自分のテーマは、(1)解決を求めることか、(2)自己の発露として出すのか、(3)他者への働きかけ・提案をするのか、などの立場からねらいをしぼっていく

5.構想について

1.段落のある文章
2.段落のつなぎかた

6.文章構成の例

(3例 省略)

7.書き出しについて

1.結論から(例文略)
2.全体の印象から(例文略)
3.主人公の紹介から(例文略)
4.一般論の引用から(例文略)
5.本文の引用から(例文略)
6.本論にズバリ入るやり方(例文略)

8.語・文について

1.わかりやすい語句を使うこと
2.文の吟味(一文の長さ・修飾など)

9.チェックポイント(自己点検)

1.意欲・心がまえはよいか
2.本の選び方はよいか
3.本の読み方はよいか
4.書きたいことはあるのか
5.どういう事実を扱うのか
6.どう反応するのか
7.なにを訴えるのか
8.アウトラインはよいか
9.文章表現はよいか
10.表記・起業の使い方はよいか
11.全体のまとまり・迫力はあるか

10.評価の観点

1.本の選び方
2.本の読み方
3.資料の使い方
4.訴えたい内容
5.表記
6.ことば使い
7.文章構成
8.全体の迫力

11.読書感想文の例文

(省略)


*1: A. 主題明示のヒント
・私はこの本の中に_____を発見した
・私はこの本の_____に心を打たれた
・私はこの本から_____を学んだ
・私はこの本によって_____を考えさせられた
・この本の___は_____である。
・___________

B〜C. 第一段(内容)のヒント
・この本にはまず第一に_____がある
・筆者は_____と述べている
・この本の世界は_____である
・主人公___(氏名)は___(場所)で_____している
・___________

D〜E. 第二段(古い自分)のヒント
・_____のことについては私は_____であった
・本来私は_____という考えを持っていた
・私の_____は_____であった
・_____ということは私の信念であった
・___________

F〜G. 第三弾(新しい自分)のヒント
・_____を読んで私は_____になった
・_____を読んで私は_____しようと思う
・_____によって私は_____と考えるようになった
・_____に対して私は_____といいたい
・___________

H. 締めくくりのヒント
・以上述べたように_____
・このように考えてみると_____
・だから(やはり・つまり・結局)_____
・___________

評価の観点

1.Aは以下の文章の主題文となりえているか
2.BDFはそれぞれの段の主題分となりえているか
3.CEGはそれぞれ段の主題分を拡充しているか
4.A〜Hまでの流れに統一性があるか
5.全体として訴える力はあるか
6.文章構成上、読書感想文の3つの要素が踏まえられているか
  ※3つの要素=本の内容、読み手、変容した読み手(?)

課題

作文の嫌いな生徒は多くの理由が「うまく書けない」「自分が表現できない」「まとまらない」「言葉が出てこない」、つまり言いたいことを表現するための支援が必要である。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集