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腐らせないように

たぶん、今は無意識のうちに一種の興奮状態にある。色々な変化があるし、動きすぎていると言って良いくらいなのに、疲れをさほど感じていない。自分で元気だと言いきれるくらいに、元気だ。日本にいた時に何度も試みては睡魔に負けて失敗していた朝の早起きも、二日連続で成功している。明らかにおかしい。ちょっと危ないのかもしれない。

16日から学校が始まって、一日の時間の流れがさらに速くなった。まだまだ時間がある、と思っていたらあっという間に帰る日になるだろう。流れる時間に抵抗するために、時間を縛ってコントロールしようと、時間割を作ることにした。

朝食は朝8時から1時間、学校は15:00から18:15まで。学校までは歩いて1時間半弱くらいかかる。バスを使えば35分くらいだが、片道€1.9(約300円)ユーロかかる。毎日往復で乗っていたら一年間で約20万円だ。街も見て回りたいし、運動のためにも歩くことにした。
すると13:30〜20:00までは学校に時間がとられることになるわけで、あまり時間に余裕はない。それ以外の空白に、お弁当の具材を詰め込むように、予定を詰め込んでいく。そうすれば、ダラダラと時間を腐らせずに済む。

早速、昨日はこれに従って一日を過ごしたが、ほとんどは予定通りにいき、良い感じだった。

ほとんど、と言ったのは、本来の予定には無かった料理を昨夜はするはめになったからだ。16日の朝に買っておいた玉ねぎとニンジンが、もう腐りはじめていたのである。どちらも常温に出していたとはいえ、こちらは気温も湿度も低いし、一週間くらいは保つと思っていたのに。冷蔵庫にしまっていなかったからなのか、店頭に並んでいた時点でもう既に日が経っていたのかわからないが、腐るのが早い。いや、もしかしたら、日本の野菜が腐らない方がおかしいのかもしれないけれど。

パプリカと玉ねぎはピクルスに、ニンジンはグラッセ(甘煮)にする。ニンジンは一個が10-15cmと小さくて細い。それが15本くらいある。腐ったところを除きながら、ピーラーで一本一本皮をむいていく。日本の大きなニンジンはザクザク皮を剥いてスパスパ切れば5分もかからないのに、小さいとやたら時間がかかる。

ピクルスとグラッセをやっと作り終えたところで、ホストファミリーの旦那さんージャックに「朝5時に起きて、歌を歌って、歩いて学校に行って、今は料理をしているなんて、体力があるんだねぇ!もう今22時だよ!」と言われた。「こんなに料理に時間がかかると思ってなかったんですよ」と返す。「元々予定してなかったのに、野菜が腐りはじめたから仕方なかった」と言いたかったけど、フランス語で「仕方ない」とどう言うのかわからなかった。

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