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ネコと犬

家から最寄りのバス停まで歩いていると、向こうからトテトテと真っ直ぐこちらに向かってくるネコがいる。

「ミャー」と鳴きながら近づいてくる

あ、この前のネコだ。Bonjour〜!

グレーの毛並みが滑らかで、よく整えられているから野良猫ではないだろう。撫でられに来たのか、差し出した手に自ら顔を擦り付ける。
近所にはこのネコの他にもう一匹、まだら模様のネコがいて、そちらは私の足に胴をこすりつけるようにぐるぐるとまわったり、道にごろごろ転がったりしたが、こちらのグレーのネコはそういうことはしない。ネコにも性格がある。グレーのネコは比較的気高い。

まだら模様の方のネコ
道に転がるネコ

ネコはつれないイメージ、ふてぶてしいイメージがあったが、こちらのネコは人懐っこくて、積極的に撫でられにくる。これまでインターネットやテレビでネコを見てもかわいいと思わなかったが、こうして触れてみてはじめてかわいいと思った。

バスが来るのでもう行こうとしたら前足を上げて膝に足をかけてくる。ひっかかった爪が少し痛いが、つい引き止められてしまう。撫でながら目を細めた顔を見ていたらバスが行ってしまった。まぁ、早めに家を出ているから約10分毎に来る次のバスでも問題はない。

そろそろ行く時間になって、バイバイ、とバス停に向かって歩き始めても後ろからついてくる。でも、ここまで、という範囲が決まっているのか、その道の曲がり角で足を止める。座って見送ってくれる姿はネコではなくむしろ忠犬ハチ公を思わせた。

見送ってくれるネコ

毎週水曜日はちょっと特別な日で、先生に連れられてボルドーの街を散策する。それは良いのだが、毎回ではないものの、道行く人たちに話しかけるミッションが課せられることがある。

はじめての水曜日は最低三人にインタビューしなければならなかった。私もペアのメリーナもろくに話せずつっかえつっかえしていたので、訝しがられたり、話すこちらとしても自信がなく憂鬱になっていたが、親切なおばさまと若いカップルが答えてくれて、なんとかミッションを終えることができた。

今回はJardin public という公園で、その場所に関する質問をするというミッションが与えられた。三人一組で行動し、インタビューする相手は一人でいいので、初回よりはマシだ。

アメリカ人のジェフェリーが「誰がVictime になる?」と冗談めかして聞いてくる。それはつまり誰が最初に話しかける?ということだ。グレタが「やってくれない?」と言うので、当たって砕けろの精神で「わかった」と答える。

問題は誰に話しかけるか。ベンチに座っているおじさんがいるが、スマートフォンを見ていて話しかけづらい。一人ベンチに座っている人に、立っている三人組が話しかけるのも変だから、歩いている人にインタビューしようよ、とグレタが言う。ごもっともである。

少し先の方を歩いていた親子はこちらには向かって来ず、方向を変えて遠くへ行ってしまった。だが右手の芝生の方を見ると、犬を散歩させている三人組がいる。こちらも三人、あちらも三人、バランスもいい。何より、犬を連れている。話しかけるのにいい口実になる。
彼らの方に近づくと、ありがたいことに犬がこちらに興味を示して向かって来てくれた。

Bonjour !わんちゃん、かわいいですね!

そこからはスムーズにことが運んだ。私たちは学生で、この公園についていくつか質問したいのですがよろしいですか?と聞くと、もちろん!と優しく答えてくれた。

ネコと犬に触れたからか、その翌朝目を覚ますと、寝ぼけて毛布の黒い影がモモ(日本の家の飼い犬)に見えた。ちょこんと小さく丸まるようにして寝るモモの、毛布のようにほあほあした毛に触れたくなった。

モモ

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