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採譜

今にフランス語で夢を見るよ、といわれていたが、とうとうフランス語で話している夢を見た。
なぜか小学校の教室で、特別に招かれたBarbaraが先生として授業をしているという奇妙なシチュエーション。「枯葉」を彼女だったらどうアレンジするかというレクチャーをしていた。その授業後、私がたどたどしいフランス語で、あなたに憧れてフランスに来ました、と伝えている間、彼女はまっすぐにこちらを見ていて、私が話し終わると猫のように目をきゅっと細めて笑った。

こんな夢を見たのは、学校からの帰り道に立ち寄った書店でBarbaraの写真集を見つけたことが影響しているに違いない。定価€35のところ、およそ半額の18€で販売されていた。とはいえ2,800円。1ヶ月間の出費を検討してから判断することにして、その場では購入しなかった。

Barbaraの写真集

それに加えて、Barbara が「枯葉」の弾き語りをレクチャーする夢だったというのは、毎週金曜日の朝に学校でピアノの弾き語りを披露することになったことも影響しているだろう。

アメリカ人のジェフェリーがケンタッキーに帰る金曜日、彼もピアノを弾くと言っていたので、ぜひ弾いて聞かせてもらいたいと思い、ロールピアノを学校に持っていった。彼は頻りにロールピアノに驚きながら、アメリカンジャズのスタイルでLa vie en roseを弾いてくれた。ジェフェリーが何が弾いてよと促してくれたので、私もComplainte de la butte を弾き語りで演奏した。はじめは教室で二人で遊ぶように弾いていただけだったのが、ピアノの音を聞きつけてギャラリーが集まっていて、それぞれの演奏が終わると暖かく拍手してくれた。

後日、先生の一人が、「金曜日はどうもありがとう、Megumi。金曜日は週の平日最後の日だから疲れていてぐったりしていることが多いのだけれど、演奏を聞けて、おかげで一日をとても晴れやかに始めることができたわ。もしよかったら毎週やってくれないかしら。」と言ってくれたことをきっかけに、先週の金曜日から朝にプチコンサートを行うことになった。

提案をいただいた時はできるだろうかと一瞬不安になった。が、人前で演奏するいい練習になるし、レパートリーを増やすモチベーションにもなる。その時演奏したComplainte de la butte だって、歌詞をど忘れしながら歌ったのにそう言っていただいているのだし、こんなにありがたい機会が今後得られるとも限らないのだから、とりあえずやってみるべしと思い、その場で「ぜひ!」と返事をした。

週に2曲。できるだけ毎回違う曲をやりたいとなると、どんどん採譜して練習しないと今の私のレパートリーでは到底足りない。そのため、この土日は採譜にかかりきりだった。

採譜中。パソコン、音源、ロールピアノ。

採譜を本格的に始めたのは大学生でタンゴを演奏するようになってからだ。タンゴの楽譜はほぼ無い、あるいは、Astor Piazzollaの楽譜は稀にあっても、高額なので自分たちで用意する必要があった。ピアノの弾き語りも同様で、ピアノソロは楽譜があっても弾き語り用のものは多くない。それに、弾きながら歌うのは困難なので自分が弾きやすいように自分で用意した方がいい。

あまり好きではないという人もいたが、私にとって採譜はとても楽しい。大学卒業後も誰に聞かせるわけでもないのに採譜し続けていた。楽譜だって曲ごとに買えば高い。そもそも、私が好きになる曲はタンゴにしろシャンソンにしろ、日本であまり知られていないものがほとんどで、楽譜が存在しないから自分で書かなくてはならない。
なんとなく聞いていた曲を、採譜するために分析しながらより集中して聴くことで、さらに味わえるようにもなる。「ここでこのコードもってくるのカッコいい〜!」とか「この副旋律、たまらない。むしろ主旋律より好きだ」とか、一人でニヤニヤしながら採譜していると時間を忘れてしまう。

明日はハロウィンなので、今週の授業のテーマは「怖い話」だった。怖いものとして「ピエロ」「暴力」が挙げられていたので、そこにつなげてサーカス団Cirque du soleil の「Let me fall」と、Johnny Hallyday の「Douce Violence」を選曲する。 ちなみに、先週は「Le temps des cerises」とBarbaraの「Je ne sais pas dire」を演奏した。演奏が終わったあと、あるマダムに「なんていう曲?とっても素敵な曲だったわ」と曲名を改めて聞かれた。曲の魅力を伝えられたことが嬉しい。
学校には様々な国から色々な人が来ている。ブラジルから来たマルセラがブラジルの音楽を紹介してくれると言ってくれた。まだまだ知られていない素敵な曲がたくさんあるに違いない。それらと可能な限り多く出会いたい。

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