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軍のワークショップ

先日の朝、学校に向かうバスから、ヴィクトワール広場に軍の関係車両が集まっているのが見えた。何事だろうと内心驚いたけれど、サイレンが鳴っているわけでもないし、周りはいたっていつも通りなので、私もすました顔をしてまた読みかけの本に目を落とした。

学校にいる間にそれを見たことをすっかり忘れていたが、その日はなんとなくヴィクトワール広場を通る道を歩いて帰ることにしていた。広場の門にさしかかったとき、はからずもその朝の答え合わせができた。

行われていたのは、軍のワークショップだった。

行軍装備体験
行軍装備体験
腕立て伏せの鍛錬。
毎回起き上がってジャンプしてからまた腕立て伏せをするという、一番しんどいやつ。
戦車試乗体験
銃装備体験

PEUX-TU LE FAIRE ? ーおまえにできるか?(※)という煽り文句の旗がそこかしこに貼られているなか、行軍装備や腕立て伏せの鍛錬や、銃の試弾、戦車の操縦席の試乗などの体験会が開かれている。体験しているのは男性ばかりだが、ギャラリーには女性も多く、軍人のなかにも女性を何人か見かけた。
※(フランス語ではTu(きみ)とVous(あなた)という二人称の使い分けがあって、見知らぬ人やお客さん相手にはTuとはまず言わない。それでも「PEUX-TU LE FAIRE ?」と書いてあるということは挑戦的なニュアンスが含まれていると解釈した。)


フランス軍について、『現代フランス社会を知るための62章』(明治書店 2010.11)の「48 国防」のページには次のようにある。

「武器を取るものが選挙権を有する(Aller aux armes, aller aux urnes.)」と言う大革命期の格言が端的に示すように、従来フランスの国防理念には「平等な市民から構成される政治的共同体=共和国は、その市民自らが守る」という意味での国民国家原理(「国民の軍隊」という意識)が色濃く反映されてきた。
(略)
1989年の冷戦終結以降は、(略)軍の少数精鋭化が進められている。なお、1997年にはフランスの共和主義の象徴ともいうべき兵役が停止された。(略)この兵役停止に対して、あくまでも「国民の軍隊」にこだわる左派、とりわけ共産党が最後まで反対しつづけたことは、とりわけ「左派=徴兵制反対」というイメージが強い日本と比べた際、留意してよいことだろう。

『現代フランス社会を知るための62章』明治書店 p286-

左派・共産党といっても、公的に軍隊の存在を認めているか・いないかという背景が違えば、日本のそれとは主張が180度異なるというのは興味深い。武力を所持するなら職業軍人だけが占有するのではなく「国民の軍隊」として皆で共有するべきという考えなのだろうか。

冷戦終結以降「国民の軍隊」という理念は変わりつつあるそうだが、フランスでは日本よりも軍の存在がずっと身近なのは間違い無いだろう。以前も銃を持った兵士たちとすれ違ったことがあったが、昨日も車に乗った兵士たちが、道端に車を停めてTabac(コンビニみたいなところ)で買い物をしているのを見かけた。日本だったら、迷彩服の軍人が二、三人店内に入ってきただけで物々しい雰囲気になるだろうけど、こちらでは馴染みのあんちゃんがまた来た、という感じで、店員のおじさんは姿勢を崩したままその兵士たちとおしゃべりをはじめ、傍にいたおじさんはチラリと見ただけでタバコを吸い続けていた。

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