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生活テスト

昨日、初めて寝坊した。目覚ましは毎日かけているが、勉強するからとサイレントモードにしていたことをすっかり忘れていた。目が覚めたとき、まだ外は暗いし目覚ましも鳴っていないから6:30前なのだなと思ったけれど、今まで早く起きるということはあまり無かったので一応何時か確認したら、7:30だった。

まずい。
でも、バタバタと起き上がるわけにはいかない。もしイザベルがまだ寝ていたら起こさないように静かに支度をしなければいけない。彼女は、「更年期のせいなのか、朝、小さな物音でも目が覚めてしまう」と悩んでいて、「もちろん起きて支度をしたり、トイレや洗面台を使ったり、朝ご飯を食べたりしていいわ。でも、気を使わせて悪いんだけど、ドアを閉める時や階段を降りるときに音を立てないように気をつけてくれる?」と言われた。それを言われる以前からバタバタと音を立てないように気をつけてはいたけれど、それからさらに気を配るようになった。

だが、彼女を起こさないように支度するのは至難の業だ。なにせ、床を歩くときに木材が軋む音や、一階のガラス板がついた重めのドアを開ける音でさえ気づかれてしまうのだから。最近は彼女が起きるまで朝はトイレも使わないようにしているが、どんなに気をつけても起こしてしまうときがあり、その都度申し訳ない気持ちになる。

幸い、昨日は私が起きたときにはもうすでにイザベルは起きていて、音に気を使う必要はなく、学校にも間に合った。

でも、週に3日間だけ仕事の都合で泊まりに来るもう一人のホームステイ利用者のリザは、ドアをバタンとは閉めないものの、普通にトイレも使えば、靴が床と擦れる足音も聞こえる。彼女は私がこの家に来る前からいて、イザベルの悩みについても知っているはずだが、そんな感じた。それでイザベルが起きても、あまり気にしていないらしい。イザベルも特に何も言わないし、仲は良さそうだから問題ないのだろうけど、ちょっと気になる。

昨日から、また新しく住人が増えた。フランス人のカップル。ボルドーで家探しをする間滞在するらしい。彼らが来たので、どうやらリザと彼らの部屋が入れ替わったらしいが、ドアは閉められていて部屋を使っているところを見たわけではないのでわからない。

今朝、ガタッという物音が右隣の部屋から聞こえた。そんなに大きな音ではなかったので、起きてきたイザベルに「さっき何か物を落とした?」と聞かれた時も忘れていて、「いや、何も」としか答えられなかった。「じゃあ、きっとジャックね」と言っていたが、少しでも疑われるのはストレスだ。人から迷惑をかけられることよりも、自分が相手に迷惑をかけていること(かもしれないと思うだけでも)の方がよほどしんどい。これだけ気をつけているのに、濡れ衣を着せられたらたまらない。

リザのようにそんなに気にしなくても良いのかもしれないが、どうしたって気になってしまう。居候の身で生活をテストされているような感覚が、ある。

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