FC展開は拡大スピードを落とす
うだるような暑さが続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
Liiの本社のある愛知県名古屋市はもはや沖縄よりもインドネシアも暑くて驚いています。そんな中、パリオリンピックに熱狂しスポーツの感動を味わいまくるまさに”アツアツの夏”を過ごしています。
さて、今日はLiiの事業のFC展開に対する考えを書こうと思っています。
Lii sports studioの1号店を2020年9月にOPENしてから3年10ヶ月。多方面から「FC(フランチャイズ)をやらせてもらえませんか?」というお声をたくさんいただいています。すでに別の事業をされている企業さんはもちろん、経営者仲間やLii sportsに通う保護者の方からもご要望をいただき、とてもありがたく思っています。
今は全国20店舗、全て直営のみで運営しています。
実はFC化を検討するためのブランド施設をテストで作ったこともあり、その経験も踏まえて「なぜやらないのか」「どんな条件でならやるのか」というお話ができればと思います。
その前に、前提です。
宣誓とLii ismと事業部ビジョン
Liiのあらゆる意思決定は全て、宣誓やLii ismに基づきます。常に川上から考えます。(詳細は以下のnoteを参照ください。)
宣誓・Lii ismの下が、各部門のビジョンとなります。Lii sports事業部は以下です。
Lii sports事業の中で「いつどこで誰とどのようにやるのか」という手段は全て、このコンセプトとビジョンから考えてベストな方法をとります。
それでは本題。
FC展開は拡大スピードを落とす
FCは短期的に見ればとても魅力的です。私たちのようなまだ体力も名もない会社が、数年で3桁店舗数をオープンするというようなスケールもFCなら叶えられます。資金調達の手段にもなります。そういう意味で「スピード感をもって展開するならFC一択だ」という考えはよくありますし、字面だけ見ると理解もできます。
私たちも上述した通り「最短最速で最大量を届ける」ことを目指しているので、当然何度もその可能性を検討しました。同業異業種に関わらず、フランチャイザーの話もフランチャイジーの話もたくさん聞いてまわりました。何度も試算し、実際にフランチャイザーをやってみる想定でのスタジオやサービスも作って営業もしてみました。そして、「Lii sports事業はスピードが落ちるのでFC展開をしない」という意思決定をしました。
なぜスピードが落ちると考えるのか
私たちは「良質な運動機会」を世に広める会社です。そのやり方として「美しく勝つ」ということも決めています。
FC化は、この「良質」「美しく」の部分がとても難しいと感じています。大きく分けると以下の4つの観点です。
1)法令遵守のクオリティ
事業所運営における法令遵守
Lii sports事業は児童福祉事業に該当し、児童福祉法に基づいて運営をしています。
Liiには「Lii Border Check(通称:LBC)」という仕組みがあります。必要な人員要件を満たし、顧客への良質な支援をし、付随する必要な実務や書類管理などが抜け漏れ滞りなく行われているかをチェックするものです。
各スタジオごとの月次のセルフチェックと、四半期に一度の本部チェックがあります。抜け漏れがあった場合には是正会議となります。これらの運用には会社としてもかなり工数を使っていますし、スタジオのスタッフたちも日々の支援や業務の中でこれを行っているので大変だと思います。
これは私たちが当たり前に果たすべき社会的責任です。でも、ここまでやれる会社はそう多くないと思っています。仕組みの構築はできても、運用の徹底は簡単ではありません。FC本部の仕組みによりある程度は担保できますが、最後はFCオーナーさんの「法令遵守の重要度をどこまで上げられるか、どこまで投資できるか」というところは間違いなくあると思っています。
LBCのおかげで「明日急に実地調査に来られても1ミリの不安もない」というリスクヘッジができているので、実際に透明性高く経営をすることの投資対効果はとても高いです。だからみんなもっとちゃんとやればいいのに、と思っていますが。(このnoteを読んでくれている経営者さんたちはきっとちゃんとやってる方ばかりだとも思う。笑)
報酬改定
事業所運営の根拠となる法令については、2006年に障害者総合支援法(旧:障害者自立支援法)が施行され、以降、社会情勢や社会ニーズに合わせて原則3年に1度見直しが行われます。
これは、経営や事業所運営における意思決定に大きく影響します。
今回の報酬改定を超簡単に例出すると、お子さまへの「支援時間」により単価が変わるというものでした。長い時間支援をするほど高くなる、というものです。
単純に「じゃあLiiも支援時間を長くしましょう」とすることが、売上や利益が上がる(下がらない)という意味で会社にとって好都合です。でも、私たちLiiは単なる利益至上主義でLii sports事業を行なっているのではありません。
私たちが提供している価値は何なのか、利用してくれる保護者やお子さまはLiiに何を求めているのかということに立ち返ります。また、マーケティングの視点においても「ユニーク性」ということを常に大事にしています。ユニーク性を失うことはつまり「Liiである必要がなくなる」ということになります。
これらをしっかり議論して方針を固めた上で、次に売上や利益の議論となります。今回の報酬改定においては、私たちの存在価値や利用者ニーズ、ユニーク性の観点から売上が下がるかもしれない意思決定をしました。
この意思決定は、事業ポートフォリオが偏っていたり資金繰りの安定しないFCオーナーさんの立場だと、「はい喜んで!」とできるものではなかったかもしれません。
ちなみにLiiは今回の報酬改定により、結果的に売上・利益ともに下がることはなくむしろ順調に上がっています。これがLiiのスタッフの強さであり、後述する「3)人材や組織開発のクオリティ」にもつながるところです。
2)支援内容のクオリティ
ボトムラインの維持のために、プログラムのリストがあったり研修や教育体制を構築していたりします。ただし、お子さま1人ひとりの性格や特性、向き不向きや得手不得手を見ながら関わっていくことがこの仕事です。
研修や教育によってたくさんの引き出しを準備することは可能です。でも「いつどのタイミングでどの引き出しから何を出してくるのか」がとても重要です。みんなが同じ進度の集団指導塾や運動教室ではないので、結局マニュアル一辺倒では支援はできません。
お子さまにオーダーメイドで作ったプログラムが計画通りに進まなかったり、マニュアル通りにやってもお子さまにハマらない、なんてことはざらにあります。そのときに大事なのが「Liiが何を目指しているのか」「Liiがお子さまに提供する価値は何なのか」を腹の底から理解していることなのです。
常にそこに立ち返りながら支援をしていく。
この立ち返る場所は、社長である私から今日入社したスタッフまでが、常に言葉にしながら何度も何度も確認をしています。私たちはこういう存在になろう、私たちはこういう価値を提供しよう、こういう世界を作ろう、と。
あわせて、私たちが「やらないこと」も決めていますし、それも常にみんなで言語化しながら伝え合っています。具体的には、Liiに入ったらわかります。笑
これが、フランチャイジーで「会社が違う」場合に、どこまで同じ温度感で支援やサービス提供ができるのか、というところがとても難しいと感じています。Liiの社員と同じだけマネジメントコストをかけるなら、だったら直営の方がいいなと思ったりもします。
もちろん、基準値を下げればいくらでもできます。
でも、自分たちの信念を曲げたり、自分たちのここまで積み上げてきたブランドを毀損するリスクをとってまでFC化することの意味が果たしてあるのか、Liiのブランドを信じて通ってくださる方々にとってそれは果たして期待に応えられるものなのか、などを考えると、やはり「予定通りはいかない」ことの方が多いこのサービスにおいてFC化することの難易度は高いなと感じています。
3)人材や組織開発のクオリティ
ここでいう人材や組織開発は、エントリーマネジメント、評価制度の運用、イグジットマネジメントを指します。
まず、どんなにスキルや経験があってもどんなに著名な人でも、喉から手が出るほどほしい有資格者の人だったとしても、Liiのカルチャーにフィットしない人は採用しません。宣誓・Lii ismへの共感性と体現する意思なき人がLiiにいることは、その人自身も社員のみなさんも、誰も幸せになりません。
そして、私たちは性弱説で制度を作り、性善説で制度を運用しています。「人はみんな、いい人である」と本気で思っています。もちろん、弱いところや悪いところもあるでしょう。私もそうです。でも、そんな人でも誰かにとっては大切な父親だったり母親だったり、また誰かにとっての大事な息子や娘です。その人が「自分のいいところを発揮したくなる」ような仕組みや制度を設計し運用していくことが、良いチーム強いチームになっていくことには必要であると考えています。
どんな結果であれ善意を持って行動をしたことに対しては承認をするし、それが人よりも優れていれば賞賛をするし、さらにそれが圧倒的な成果であれば評価をする。
一方「悪意をもった行動」に対しては厳格に対処をしていくこともまた同時に必要です。例えば厳格な対処により社員が退職して加算(一般的に言うオプションのようなもの)がとれなくなり売上が下がるとしても、仮に人手が不足して事業所の閉鎖をしなければならなくなったとしても「Liiを信じる人が残る」組織を作ることを選びます。ここに甘んじることは、頑張っているスタッフを無下にすることになり顧客や社会への信用を失墜することだと思っています。目先の売上や利益をとるためにカルチャーを毀損することは絶対にLiiではしません。
これを、1人目を雇用したときから徹底しています。なので150名になった今でも各ロールでLiiらしい意思決定ができるようになっています。また、お互いがお互いを承認、賞賛する文化が根付いていることでとてもいいモメンタムが形成できています。このモメンタムにより、Liiの「やる」と決めたときの実行力とスピード感は凄まじいものがあります。みんな手を抜きませんし、それを面白がって楽しみながらやりきる強さがあります。私はLiiの社員のみなさんを尊敬していますし、誇りに思っていますし、本当にありがたいと思っています。
「事業のスケールにおけるセンターピンは組織開発だ」と、ここは起業当初のボードメンバーも信じて重要視してくれていましたし、現取締役の羽田においてはここを強みとするCOO /CHROであり、私の起業前からずっとずっと話をしてこだわり抜いてきた部分でもあります。
これらは、これまでこの習慣のない企業さまからするとなかなか骨の折れることだったりします。この3年半を思い返しても、なかなか胆力のいる日々だったなと思います。(今は組織規模が当時よりは大きくなり、みんながそれぞれの責任の範囲を広げてくれるようになりありがたい限りです。)
短期的に利益につながると考えにくいこれらのアクションに投資しエネルギーが使えるかどうか、ということはとても重要です。
また、Liiでは人事異動を意図的に行なっています。全国に転勤異動できるスタッフがたくさんいます。これにより、好ケースを全国に即波及させることができたり、垂直立ち上げができたり、人材育成のスピード感を高められます。また、1つの勤務場所に長くメンバーが変わらず勤めることのメリットも理解はしていますが、イノベーションを起こすには人も環境も変えた方がいい。
これは我々の戦略の1つでもあります。そしてこれも、規模の力があってこそできることでもあります。これが、フランチャイジーが1、2スタジオだけで運営していくとなるとレバレッジが効きません。つまり「戦略が実行できない」ということになってしまいます。
4)空間のクオリティ
私たちは「Liiの世界観」をとても大切にしています。各ブランドで使うカラーの意味やその機能なども考え抜いて作っています。そして、それらは私たちがそのときに伝えたいメッセージや表現したいイメージによって変化させていくものでもあります。
この4月にもVIをリニューアルしました。冒頭にも紹介しましたが、こちらに記載してあるのでまた貼っておきます(笑)
例えば、ロゴやブランドカラーのリニューアルによりファシリティを変更することになるとします。これらは利益アップのためではなく、Liiの作りたい世界のメッセージを伝えるための意思決定です。やってもやらなくても目下の売上がそう大きく変わるものではなく、FCオーナーさんからするとシンプルにコストアップになります。
また、Liiの品質管理「Lii Boader Check(通称:LBC)」には、美観維持のチェック項目もあり、例えば壁紙が少し剥がれていたりすれば「修繕」の対象となります。壁紙の剥がれなどは、直接的な危険を及ぼさない限り放置されるような事業所さんも多いですが、Liiでは修営繕を尽くします。
一般的に「儲かるか」を重視するフランチャイジーにとって、投資の意味でのファシリティ変更や、細かいコストのかかる修繕にどこまで前向きにやれるかというところがあまり見えていません。(もちろん、理解のあるFCオーナーさんもたくさんいらっしゃると思いますが)
つまり、結果的にFCは拡大スピードを落とす
一般的に早くスケールしたいからFC化するはずなのに、「良質な運動機会を作ること」や「美しく勝つ」というビジョンの実現から考えると、むしろFCオーナーさんたちの理解と協力を得るための余計なコストやエネルギーが必要になると考えました。
人材もお金も時間もエネルギーも要する法令遵守の仕組みの徹底運用、Liiの価値に立ち返り、どのコーチでも同じ方針で支援ができるクオリティの担保、真にLiiに共感し体現しようとする人材が輝く組織開発、Liiの世界観を作るために投資できる空間へのこだわり、これら全てを常にPDCAを回し仮説検証し即改善を続けています。
この仮説検証と改善にはスピードが命だと考えており、例えば「売上も上がってるしうまくいっているから、新たにお金や時間を使うのはちょっと…」と拡大に必要な投資を渋られるのは、到底容認できないのです。このLiiの改善スピードについてきてくださるFCオーナーさんでないとLiiの思うスピード感でLiiの描く世界が作れないと考えています。
FC化をするということは、Liiから見ると「 エンドユーザー」という顧客の手前に「FCオーナー」という顧客を持つことになります。エンドユーザーのニーズとFCオーナーのニーズは時に相反することになります。これらに時間とエネルギーを使わねばならなくなることが結果的に遠回りになると、ということです。
今後FCをやる可能性
現時点でFCはやりません!と言っていますが、今後Liiという会社がFCをやる可能性があるとすれば以下2つのパターンだと思っています。
①Lii sports以外の事業
今、Lii sports事業以外の新規事業の立ち上げも進めています。「良質なサービス」のボトムラインが担保できると検証できた事業であれば、FC展開をしていくこともあり得ます。もちろん、Liiの宣誓やLii ismに共感していただけて、働くスタッフの幸せを心から願えるFCオーナーさんであることは必須ですが。
②Lii sports事業なら、中核都市未満での暖簾分け
来年以降は東京23区をはじめ出店をさらに加速させます。一方、物理的に距離のある離島や人口が少ないなど、出店優先度が極めて低く直営で管理するのには適さない地域に出店する場合には、FCの可能性もあると思っています。
ただしこの場合も「Liiの社員として成果を出した人への暖簾分け」のみで考えています。「Liiの社員として成果を出した人」というのは、定量的にももちろんそうですが、定性的な部分も大事ですね。
私たちは秘伝のタレを卸してFCを運営させるサービスではないため、数店舗うまくいって自分のやり方を見つけることができれば「ロイヤルティがもったいない」という考えも出てくるかもしれません。そうやって「Liiの看板をおろして自分でやりたい」と言われたときに、私たちが「こんにゃろー!」と思わない人、というイメージ。心から「今までありがとう!頑張ってね!」と言えるような人。そんな人だったら、いいかな。
私たちが創業期から丁寧に組織を作りながら事業を拡大してきたこと、Liiには簡単に代替できないようなとても素晴らしい社員のみなさんがいること、自分たちのブランドに誇りを持ちつつもっともっと良くしていきたいことが本noteで伝わると嬉しいです。
見せかけの素晴らしい店舗数よりも、360°どこから見られても恥じない、自分たちできちんと説明のできるサービスを、最短最速最大量を届ける。こだわって、質も量もどちらもとる。まだまだ完璧でないからこそ、できる限りクオリティを早く速く上げていくためにFCという選択肢を取らない。
※同業含む他社のFC展開に関しては各社いろいろなお考えがあるかと思いますので、何も言及しませんし一切何とも思っていません。笑
これは2024年8月4日時点における、私含むLiiのボードメンバーの考えです。引き続き私自身が誰よりも学び、誰よりも成長して、そのときどきのベストを選択しながら1分1秒でも早く「良質な運動が当たり前にある世界」を作っていきます!
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