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股旅堂さんの古書目録が面白かったといふ話(1)

で。(で?)

股旅堂さんの古書目録がそれだけで楽しかったのである。あ、いや、古書を買いもせずに楽しむだけでのようで申し訳ない。宮武外骨などは食指が動かないでもないんだが、それはまた別の機会に。

ようするに、こんなに付箋を貼ってしまった目録である。

股旅堂 古書目録 28

冒頭の特集が「明治大正昭和色街百景」。
その先頭が「芸者置屋、待合、写真貼込帖」。ようするにアルバムである。私の子供の頃はこんなアルバムだったな。スクラップブックのようなものに写真を貼り付けていくような感じ。パッと見たところ、人物はほとんど写っていないようだ。それにしてもすごいものがあるものだ。この文言でネット検索すればヒットします。

特集が色街百景なので、藝妓、花街等々に関するものが続く。ふとこんなものを見つける。

「序文:桐生悠々」

書籍は「尼になる迄/小林栄子」。

尼になる迄/小林栄子
長野市権堂の藝者「新駒」から婦人記者として「信濃毎日新聞」に連載した回想・ルポ。

股旅堂 古書目録 28

ああ。桐生悠々氏は信濃毎日新聞の主筆をされていたことがあったっけ。その頃かしらん。

あるいはまた、こういうようなものもある。

遊女恋物語/永井はつ子

股旅堂 古書目録 28

国立国会図書館デジタルコレクションで検索するとあったのでちょっと読んでみた。

一 妾の前身
神田つ兒
いくら妾のやうな、厚かましい女でも、初めつから、好き好んで恁麼(こんな)淺ましい稼業を爲やうとは夢にもぞんじませんでした。
それが、貴郎、不圖した動機(はめ)から、遂ゝ(とうとう)堕落、といふと些と生意氣ですが、平つたくいふと、まア身を持崩して恁麼身躰になつちやつたんで、かう申すと愚痴のやうでございますが、それには貴郎、一通りや、二通りの苦勞もいたしてまゐつたつもりでございますよ。

「遊女恋物語/永井はつ子」

あ。いかん。こんなことではちっとも進まない。
先を急ごう。

しばらく進むと「木下尚江」という名前が出てくる。

廃娼之急務/島田三郎、木下尚江

股旅堂 古書目録 28

この方は社会主義者ではなかったか。幸徳秋水を調べているとよく目にするお名前である。

さらに進むと、あら、神崎さんのお名前が。

娘を売る町 神崎レポート/神崎清

股旅堂 古書目録 28

昭和27年。1952年。戦後か。
南喜一氏も私娼解放運動をしてらして、そういうご縁なのかなぁ。南喜一氏の運動は戦前らしいけど。

グロテスク 第3巻 第1号(昭和5年新年特集号)/海原北明編、大泉黒石、中山太郎、尾崎士郎、稲垣足穂ほか

股旅堂 古書目録 28

稲垣足穂。この人も読もうとして挫折したなぁ。
いつか読んでみたいんだけど。

食人風俗考/寺石正路

股旅堂 古書目録 28

え? 食人?
え? 風俗?

高知の郷土史家による日本に於ける食人習俗について考察した珍本

股旅堂 古書目録 28

この後に◯◯の例とか、✕✕の例とか、なんだかたくさん並んでいて少々驚く。いや、でも、案外食してきたのか。明治31年版。

千里眼問題の真相 千里眼受難史/高橋宮二

股旅堂 古書目録 28

この前後には、催眠とか、心霊とか、霊感とか、ま、そんな風が並んでいるんだけど、これはなんだかタイトルがね、「千里眼問題の真相」って、「千里眼問題」というような事件でもあったのかしらんと思ってしまって。実際にあったのかどうかも知らないけど。さらにはまた「受難史」って。何か受難でも? 広く一般に認められないことが受難だったりするのかしら。などと、不思議に思ったのだった。

幽霊は語る/梶天真編、真継雲山題

股旅堂 古書目録 28

…………。
何を語ったんだろう。
「死者は語る」とかだったら社会派的だけれども、語ったのは死者ではなく幽霊なのね。

死刑囚11話/布施辰治

股旅堂 古書目録 28

あ。まさかの私が読みたいリストに挙げていた本だったりする。

(担当弁護士・竹内金太郎旧蔵)阿部定事件現場写真 ガラス乾板6枚+ネガ4枚+α 一括(昭和11年5月18日、於:荒川区尾久町・待合茶屋「満佐喜」)

股旅堂 古書目録 28

解説は割愛したが、なんか、ものすごいんである。すごすぎて書くのを躊躇うくらい。内容も。値段も。これはどれだけ検索しても見つからなかったんだけど、売れた、のかなぁ。

暗殺者 近代日本暗殺史/戸川幸夫

股旅堂 古書目録 28

あ。戸川幸夫氏って、動物文学とか書いてらっしゃった方? こういうものも書いていらっしゃったのか。この方の文章、好きだったんだなぁ。と言っても一冊しか読んだことないけど。タイトル的にも気になるよねぇ。これね。リンクしておこう。

日本週報324号 平沢貞通弁護士七年

股旅堂 古書目録 28

平沢貞通?
帝銀事件?
その弁護士さん?
が書いた?

犯罪公論 第2巻第9号(昭和7年9月特輯号)/田中直一編、坂ノ上言夫、中山太郎、宮川曼魚、丸木砂土、濱尾四郎、佐藤春夫ほか

股旅堂 古書目録 28

佐藤春夫?
実は読んだことないけど。
「犯罪公論」などにも書くのか。

犯罪科学 第1巻第1号(昭和5年10月号)好き田中直樹編、後藤朝太郎、大隅為三、石角春之助、喜多壮一郎、宮川曼魚、丸木砂土、岩田準一、島洋之助、室生犀星ほか

股旅堂 古書目録 28

室生犀星?
これまた読んだことないけど。
「犯罪科学」とは意外かも。

犯罪学雑誌 第9巻第2号(昭和10年3月)/主幹:三田定則・泉二新熊、編輯:古畑種基正木亮、顧問:原嘉道

股旅堂 古書目録 28

古畑種基氏は、確か四大死刑冤罪事件のうち三つに関係していらっしゃるのよね。個人的にいい印象がない。正木亮氏は死刑廃止を提唱していらっしゃった方でいつか本を読んでみようとして果たせていない。私の中では相反するお二人が並んでいたりする。

臍/福富織部 全390P
屁/福富織部 全408P

股旅堂 古書目録 28

え? 臍? で390ページ?
え? 屁? で408ページ?

臍と屁でそんなに書けるのか。

放屁学概論/金澤恒司

股旅堂 古書目録 28

誤字じゃありません。
「放屁学」です。

蝿と人生/堤勝

股旅堂 古書目録 28

だから誤字じゃないってば。
「蝿人生」なんです。
このタイトルで何を語る。

夜の東京/秋田貢四編、岡野栄装幀、岡落葉挿絵、田山花袋、上司小剣、泉鏡花、長田幹彦、高浜虚子、田村西男、北原白秋、久保田万太郎、泉鏡花、濱田撫松、川村古洗ほか

股旅堂 古書目録 28

花袋とか、鏡花とか、虚子とか、白秋とか、なかなかのメンバーですな。値段もなかなかですがな。

コレクション・モダン都市文化 第59巻 アナーキズム/高橋修編、和田博文監修、堺利彦、小野十三郎、岡本潤、室伏高信ほか

股旅堂 古書目録 28

この「コレクション・モダン都市文化」というのはゆまに書房から出ている比較的新しい(2000年代)もので、しかもなかなかの巻数である。初めの巻には、ファッション、築地小劇場、デパート、カフェ、などと並んでいて、ふんふんと思ってたんだけど、第58巻が「マルクス主義」で、この第59巻が「アナーキズム」とあるので、ちょっとびっくりしたわけで。しかも堺利彦も載せているようだ。しかも全100巻になるそうだ。しかもしかも、一冊がなかなかの高額図書だ。世の中、いろいろな書物があるものだ。

チンドン屋始末記 街頭のピエロたちにみる広告宣伝のパフォーマンス/堀江誠二

股旅堂 古書目録 28

ああ。私が子供の頃は、まだ普通にチンドン屋さんが歩いてたなぁ。
「あ! チンドン屋さんが来たで!」
子供にはちょっと楽しい見世物だった。

(個人日記)〝夫に盡す妻〟〜〝阿波丸事件遺族〟〜〝「あまとりあ」を読んで目覚め、不倫する未亡人〟へと変貌!する 或る女教師の個人日記8冊

股旅堂 古書目録 28

なんか。すごい。
不倫する未亡人…………それでいて、教師なのか。
股旅堂さんはずいぶん細かく解説して下さっていて。全部読まはったんかなぁ。

(個人日記)〝或る女生徒・初子への想いを綴り苦悩する〟某女学校・女性教師の日記11冊一括

股旅堂 古書目録 28

こちらも教師なのか。
こちらは、もう、2ページに渡って解説して下さっていて。
圧倒されました。

犯罪実話 第5号(昭和23年2月)情痴犯罪特集/金光好雄編

股旅堂 古書目録 28

これだけだと「だから、何?」なんだけど、内容が。

「帝銀事件毒殺事件大写真特集」

え?
帝銀事件って、いつだっけ?

帝銀事件(ていぎんじけん)とは、1948年(昭和23年)1月26日に東京都豊島区長崎の帝国銀行(現在の三井住友銀行)椎名町支店(1950年に統合閉鎖され、現存しない)に現れた男が、行員らを騙して12名を毒殺し、現金と小切手を奪った銀行強盗殺人事件。

Wikipedia

え?
ほぼ直後くらいの出版?
「大写真特集」って…………なに?。


長くなったので2回に分けます。



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