そして、死刑は廃止された
ロベール・バダンテール。
1981年フランス、ミッテラン大統領のもと法相に任命され、死刑廃止法案を提出。1981年9月30日死刑廃止法案は可決された。
法相に就く前、バダンテールは弁護士の職にあった。死刑事件も扱い、死刑執行に立ち会ったこともある。フランスは1981年9月30日に死刑が廃止されるその日まで、処刑方法にギロチンを貫いた。『すべての死刑囚は頭を切り落とされる』。これがその条項である。バダンテールはギロチンに立ち会ったことになる。
彼は死刑廃止を強く望んだ。そして、同じく死刑廃止を求めたミッテラン大統領より法相に指名され死刑廃止法案を提出する。自らの手で死刑を廃止したのである。『フランスから死刑がなくなるまでわたしは力の限り闘い続ける。』そう誓った1977年から4年が経っていた。
死刑被告人の弁護をすると、時に脅迫されることもあるという。それはフランスだけでなく日本でも同じである。極悪人の弁護などもっての他と考える人がいるからだ。ましてや死刑の廃止を訴えようものなら、想像を超えて苛酷である。自分一人の身だけでなく家族の身さえもが危ぶまれる。そんな状況にあってもなお死刑廃止を訴え、のみならず実現したのである。その信念と行動には感嘆するだけでは足りない。
死刑を廃止するためには民意が必要だと、私は思っていた。だが、本書を読めばそれは間違いだとわかる。死刑が廃止できないのは民意がないからではない。政治力がないためだ。フランスで死刑が廃止されたとき、死刑廃止を望む民意は33%に過ぎなかった。過半数に遠く及ばない。それでも廃止できたということではない。それでも廃止しなければならないということだ。
遠くない日に、先進国から民主国から死刑制度がなくなるだろう。
司法が人を殺していいのか。
今一度考え巡らしても無駄ではない。
日本は死刑廃止の先進国だ。
平安時代の300年間死罪がなかったという。
こちらも随分前に読んだ本であるが、最近の法相の問題に触れて思い出した。
バダンテールについてはこちらの記事が素晴らしい。
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