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映画感想#70 「ルーム」(2015年)

原題 Room
監督 レニー・アブラハムソン
脚本 エマ・ドナヒュー
出演 ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー、トム・マッカムス 他
2015年 アイルランド・カナダ 118分



<部屋>から<世界>に出た親子は

拉致・監禁という許されざる犯罪によって傷を負った1人の女性の物語です。辛いシーンもありますが、彼女の人生と決断から、誰しも得るものがあるのではないかと思います。

2部構成となっていて、前半の<INSIDE>では監禁中の生活と脱出までを、後半の<OUTSIDE>では解放された親子のその後の葛藤を描いています。
苦しいのはむしろ<OUTSIDE>で、監禁されていたという事実から好奇の目を向けられることの辛さが、ひしひしと感じられます。

母ジョイと犯人との間に生まれた息子ジャック。<INSIDE(部屋)>の生活は彼にとってどのようなものだったのでしょう。生まれてからこの部屋を出たことのないジャックにとっては、ただただママと2人きりの楽しい時間だったのかもしれません。
そういう意味では、<部屋>は何らかの秩序を保っていたのでしょう。

でも、本当は2人だけしかいないのではない。もっとたくさんの人がいて、たくさんのものがあって・・・そういう本当の世界を教えたいと思って、ジョイは脱出を決めたのだと思います。

脱出した後のジョイは、とにかく目の前にある現実と向き合わなければなりませんでした。うまく順応できなかったのは、初めて世界に出てきたジャックよりも、むしろ母の方だったようです。
過去と未来が急に入り込んできて、ジャックにも初めて怒りをぶつけるようになり。5年もの間ジャックと2人きりで<部屋>にいたことが、ジャックの人生にとって最良の選択でなかったのかもしれない、と自分を責めるジョイ。でも、ジャックは母の隣でしっかりと成長していたことに気付くのです。

これは1人の女性ジョイの物語でもありますが、そこには事件や被害者をどのように報道するか?その報道に苦しめられる人はいないか?という社会的な視点も含まれているようです。
誹謗・中傷が溢れているこの世の中で、「放っておく」ということも選択肢に加えられたら良いのにな、なんて思いました。

☆鑑賞日 2016年4月22日


余談~"世間の目"という面倒なもの~

なぜ、誰かに自分の生き方や選択を批評されなければならないのか?と思ったことはありませんか。

ジョイはメディアからのインタビューによる、いわゆる「世間の目」というものに苦しめられます。今までこんなにも辛い思いをしてきたのに、なぜ彼女の精神状態を優先して、「そっとしておく」という選択肢を選ぶことができないのでしょう。
ジョイが誰かに批判されるなんてことはあってはならないのに。そうやって「世間の目」は、軽率な言動で誰かを傷つけている。

「表現の自由」とは都合の良い言葉で、そこに思いやりや優しさがなければ、ただの暴力と同じだと思うのです。
他人だから言えることもあるでしょう。でも、相手の立場になって考えてみたことはありますか?あなたがそれを言われたらどう思いますか?
と、もう少しのんびりと考える時間があっても良いのにな。日々にそういう余裕が欲しいものですね。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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