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映画感想#74 「とうもろこしの島」(2014年)

原題 Simindis kundzuli
監督 ギオルギ・オバシュヴィリ
脚本 ヌグザル・シャタイゼ、ギオルギ・オバシュヴィリ、ルロフ・ジャン・ミンボー
出演 イリアス・サルマン、マリアム・ブトゥリシュヴィリ、イラクリ・サムシア、タメル・レベント
2014年 100分
ジョージア・チェコ・フランス・ドイツ・カザフスタン・ハンガリー合作



争いにより歪められる善行

独立を主張するアブハジアとグルジアとの紛争(アブハジア紛争)を背景に、争いの中でも人間としての尊厳を守るアブハズ人の老人と孫娘の物語です。
川を挟んで戦闘が起こる中、その中州で淡々とトウモロコシの畑を耕すふたり。まるで争いなど起きていないかのよう。
しかし時折銃声が響き、船に乗った兵士が通り過ぎていきます。

老人と孫娘が暮らすこの中州は、洪水のたびに流されてしまうような一時的な小さな土地です。そんな「耕す者のための土地」でただ人間としての生活を送っています。

ともに畑を耕す孫娘

そこにジョージアの負傷兵が助けを求めてやってきます。
兵士である前にまず同じ人間。2人は彼を助けることにするのですが・・・
結局、あの兵士は助かったのか。そして突然の洪水から2人は逃げられたのか。かなり余韻を残す終わり方でしたが、この展開が何を意味するのか、少し考えてみたいと思います。

紛争に無関心でいたはずなのに、負傷兵の出現により、状況は一変する。
争いに一歩踏み込んでしまったことで、その後洪水に巻き込まれてしまう。
そこに因果関係を見出すのは深読みかもしれないですが、紛争に少なからず加担したことへの代償(といっては重いけど)のようにも思えます。

もちろん、この2人は悪いことをしているわけではありません。行為としては「傷を負った人を助けた」だけ。
しかしその事実は「敵軍の兵を助け、それを自民族であるアブハズ人に隠す」という裏切り行為に発展してしまいます。
洪水でこれまでの積み重ねが全て流されてしまうという出来事も、ただの自然の脅威ではないように思えてくるのです。

どんなに善い行いも、争いの下では事実が歪められてしまう。
そんな愚かしい現実を嘆く映画であるように感じました。

☆鑑賞日 2016年11月4日


余談~困っている人を助ける、というシンプルなこと~

この映画の中で、老人と孫娘は敵軍の兵士を助けます。
困っている人を助けるというシンプルなこと。それができるか、できないか。

大好きなアキ・カウリスマキの映画「希望のかなた」を見た時にも同じことを感じました。この映画は、不法入国した外国人を助けるために奔走するフィンランド人のユーモアと優しさの話。
移民だから、外国人だから、知らない人だから、ということは関係ない。同じ人間、「困っている人を助ける」というシンプルで大切なことを忘れてはならないと思いました。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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