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1ページに満たない映画感想2015年③<シニカルでメタフォリックな世界>
ある官僚の死(1966年/トマス・グティエレス・アレア/キューバ)
キューバの映画は初めて。独特の空気感がありました。
模範的な労働者が急死。労働者証と共に埋葬された。だが、未亡人が年金を受けとるためには、その労働者証が必要だった。未亡人の甥は、墓の掘り起こし許可を申請するが、あちこちをたらい回しにされ、挙げ句の果てに、自ら遺体を掘り起こすことに・・・。
叔母のために走り回る甥のフアンチンは、労働者証を取り戻すために奔走するも、行く手を阻むのは分かりにくく、面倒くさい決まりごと。行政や官僚に振り回され、真面目な青年が狂気を見せる変容っぷりが面白い。
官僚制度への批判だけでなく、きちんとブラックコメディに昇華されているところが良い。
ラテン系の言葉にはリズムや勢いがあって、見る人のテンションも上がっていくような感じ。日本語ののんびりした言葉に慣れていると、この言語のセリフ全てが早口ことばにも聞こえてくる。
そんな言語の違いを実感できるのも、洋画を見る楽しみの一つです。
☆2015年5月1日鑑賞(ラテン!ラテン!ラテン!@K's cinema)
ゼロの未来(2013年/テリー・ギリアム/イギリスほか)
なんともギリアムワールド全開!な感じですね。とにかく「荒廃したディストピア」を描けって言われたらギリアム様にお願い申し上げるしかないんですよ!(笑)それくらい、唯一無二の独特の世界観があると思います。
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主演はクリストフ・ヴァルツ演じる天才数学者・コーエン。また気持ちの悪い役多いねー、この人。でも少し可愛げがあるんだよな。メラニー・ティエリー演じる女性ベインズリーがコーエンを好きになったのは、このピュアさであろう。
キーパーソンになる少年ボブ(ルーカス・ヘッジズ)の存在感も良かったし、父親役がマット・デーモンというのも豪華。
ベン・ウィショーとかティルダ・スウィントンとか有名な人がちょい役すぎて、発見するのが楽しい。(キャストに名前がないのに出演しているなんてずるい…)
人生の謎を解明する数式「ゼロ」を解明するーー
というSFっぽい設定は、刺さる人には刺さると思います。
監視社会・ネット社会を生きる人々の孤独や他人との触れ合いがテーマではありますが、現代社会を皮肉ってるところはあるのでしょう。
そういう意味ではハードな映画です(絵面的に目も疲れるし)。
☆2015年6月5日鑑賞
さよなら、人類(2014年/ロイ・アンダーソン/スウェーデンほか)
これストーリーあるの…?と思わせるような、なかなか謎な映画。
シーンの一つひとつがまるで動く絵かのような、そんな作品でした。それはカメラが固定されていて、見る人が完全に傍観者になっているから。
ロイ・アンダーソンの独特な感性を感じることができます。
全39シーンを、固定キャメラ、1シーン1カットで撮影。CG全盛の時代に、ロケーションはなく巨大なスタジオにセットを組み、ミニチュアやマットペイントを多様し、膨大な数のエキストラ(馬も)を登場させ、4年の歳月をかけて創り上げた。
親友であり、面白グッズを売り歩く仲間でもあるサムとヨナタンは、仕事はうまくいっていないみたい。だって面白グッズはことごとく面白くなくて。お互いに意地悪を言ってみたりするけど、やっぱり唯一の友達だから、一緒にいたいんだって。かわいいな。2人の友情もちょっとだけ感じられます。
この2人を軸に小話がいくつかある、という構成のようです。
カフェに突然陛下がやってきたり、いきなり歌い出したり、なんとも言えないシュールさ。奇妙な画面なのに、なぜかどことなく現実味のある人物たち。
絶妙なバランスの上に成り立つ、自分にとっては新しいタイプの映画でした。
原題がなかなか面白い。スウェーデン語で「En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron」ということで、直訳すると「ハトが枝に止まって人生について考えた」となるようです。上映当時のタイトルは「実存を省みる枝の上の鳩」だったらしい。何かのことわざとか引用なのでしょうか?
一般公開時のタイトルは「さよなら、人類」とかなり異なっています。小難しくてちょっと哲学的な雰囲気は、直訳タイトルの方が伝わってきますね。
☆2015年9月9日鑑賞
放浪の画家 ピロスマ二 (1969年/ギオルギ・シェンゲラヤ/ソ連)
少しだけ寝てしまったので、ストーリーが全て把握できずに残念でした。
グルジアの画家ピロスマニの生涯を描いたこの映画。木の家を作って、チーズやバターを売って、そのあとは絵を描くようになって。
彼の絵を好きだと思って、この映画を観ました。映画全体も絵と同じく、暖かくて、物悲しいような雰囲気に満ちていました。
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2度目のグルジア映画。(本作品の制作当時はソ連でしたが)
「孤独と哀愁」というテーマがピッタリ。画家というのはそういうものなのかもしれない。機会があれば、眠くない時にぜひもう一度。
▼最初に観たグルジア映画:イオセリアーニ監督「汽車はふたたび故郷へ」
☆2015年12月17日鑑賞
★余談〜岩波ホールの思い出〜
最後の「放浪の画家 ピロスマニ」は、かつての岩波ホールで鑑賞。
岩波ホールが閉館してしまったのは寂しいですよね。この映画は、まさに"岩波らしい"映画だと思います。
静かで、深くて、優しい映画。
だからこそ、岩波で観る映画は寝てしまうのです・・・。岩波では通算5回くらいは見に行けたと思うのですが、おそらく毎回少しだけ寝てました。
シアターの雰囲気自体がとにかく静か!客層も割と高齢でガヤガヤしていないし、シートがふかふかしていて、寝るのにとても良いんですよね・・・。
こんな素敵なミニシアターが、また新しく生まれて欲しいなあ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。