映画感想#66 「アンジェリカの微笑み」(2010年)
原題 O Estranho Caso de Angelica
英題 The Strange Case of Angelica
監督・脚本 マノエル・ド・オリベイラ
出演 リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、レオノール・シルベイラ、ルイス・ミゲル・シントラ 他
2010年 ポルトガル・スペイン・フランス・ブラジル合作 97分
絵画のような美しさ。
世界から切り取られた1つの額縁の中を覗いているような感じ。
一言でいうと「静かで美しい映画」だと思います。劇中に流れるショパンの優しいピアノ曲が、この映画にとても合っていました。
主人公の青年イザクは写真が趣味で、若くして亡くなったとある裕福な家の娘・アンジェリカの写真を撮ることになります。すると、シャッターを押す瞬間に雷に打たれたような衝撃が走り、一瞬にしてイザクはアンジェリカに恋をしてしまうのです。
カメラのレンズを通して、イザクはアンジェリカの霊(というか魂?)に取りつかれてしまったのでしょう。寝ても覚めてもアンジェリカのことばかり考えるイザクは、だんだんと正気を失っていきます。
夜の空を2人で飛んでいくシーン、シュールだけどとても綺麗でした。映画全体に鮮やかな色彩は感じられませんが、セピアで柔らかい印象です。
と、美しい話"風"なのですが、第三者からすれば、すごい怖い話でもありますよね。結局イザクは死んでしまう訳ですし、平たく言うと「霊に乗っ取られた」と言わざるを得ない。そもそも原題は直訳すると「アンジェリカの奇妙な事件」となるようで、ちょっとミステリー風なニュアンスも?
今更気になったのは、アンジェリカが結婚指輪を付けていること。既婚者だったのか、婚約者がいたのか、、、映画の中では特に何も言われていなかった気がしますが、意味深ですね。
そんな「世にも奇妙な物語」を、優しく、美しく描いている映画です。
☆鑑賞日 2016年1月12日
余談~初のオリベイラ~
オリベイラ監督の映画はこれが初めて。かつこれ以降に見ることができていないので、個人的には唯一のオリベイラ監督作品です。
ポルトガルの古き良き街並み、どこか中世のような空気感。私が好きな北欧映画とはまた違った良さがあり、やっぱりお国柄は映画にも影響大だなあとしみじみ思ったりしています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。