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1ページに満たない映画感想<歴史を作った男たち>2016年①


アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち(2015年/ポール・アンドリュー・ウィリアムズ/イギリス)

元ナチス親衛隊アドルフ・アイヒマンの裁判をテレビ放送しようとする、2人の男たちの物語です。ナチスの蛮行に迫りながら、史上初の裁判放送というテレビの歴史を作った人物を描く、興味深い内容でした。

誰の内にも狂気はあるのか?それともアイヒマンという人間が"怪物"だったのか?人間は抑圧された状況下では狂気的になってしまうのか?
その真実に迫るべくリアリティを追求したい番組監督のフルヴィッツ。一方でテレビ番組としての成功を第一に考えていたプロデューサーのミルトン。2人の意見は時に対立しながらも、アイヒマン裁判を放送すべく奔走します。

結果プロジェクトは成功するのですが、アイヒマンが事実を認めた瞬間をテレビ放送できたことに対する達成感よりも、彼の行ってきたことに対する嫌悪感の方が勝ってしまった感じを受けました。でもそれはたぶん仕方なくて、それだけアイヒマン裁判の重みというものが感じられたように思います。
裁判中にひと時も目をそむけないアイヒマンの姿には、ぞっとするものがありました。実際の映像が使われているからこそのリアリティがあります。

フルヴィッツとミルトンのそれまでの過去があまり描かれていないので、登場人物に深く入り込めず。"バディもの"というほどではないけど、一応2人の関係性も見どころのひとつだと思うので、その点少し物足りなさが残りました。

☆2016年5月1日鑑賞


海賊とよばれた男(2016年/山崎貴/日本)

山崎監督らしいダイナミックな映像でした。さすがVFXの名手。タンカー船や列車の迫力が映画要素的に◎。
出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした本作は、岡田准一主役ということで期待感があります。

彼がいかにして石油産業の基礎を築いたのか、そして日本にとってそれがどういう影響をもたらしたのか。
主人公・国岡鐵造の生涯はもちろんのこと、彼の会社・国岡商店の従業員たちの苦労も描かれています。キャストには吉岡秀隆、染谷将太、綾瀬はるか、堤真一、小林薫などなど、なんと豪華なことか。さすが詰めこんでくるな~と思いつつ、でもそれぞれの話が濃くて、国岡という人物を描きながらも当時の日本人、日本の状況、そしてビジネスとは、というところまで見せている。

「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズ(同監督)の時も感じましたが、構造の組み立てとか、要素の入れ方が上手いのでしょうか?登場人物が多いながらも、すべての人物が深堀りされている感じがします。
山崎監督は映画でこそ生きるなあと、改めて思わせてくれました。

☆2016年12月27日鑑賞


★余談~アイヒマンをめぐる映画~

ナチス関連の映画は数多く制作されていますが、アイヒマン関連で有名なのは、「ハンナ・アーレント」(2012年/マルガレーテ・フォン・トロッタ)でしょう。アイヒマン裁判の記事を執筆した哲学者で、アイヒマンを絶対悪でないと主張し、賛否両論となりました。
アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男」(2015年/ラース・クラウメ)という映画では、戦後アルゼンチンで長らく逃亡していたアイヒマンの逮捕に尽力したフリッツ・バウアーという人物に焦点を当てています。
どちらも未見なので、ぜひ機会を見つけて見てみようと思います。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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