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映画感想#65 「独裁者と小さな孫」(2014年)

原題 The President
監督 モフセン・マフマルバフ
脚本 モフセン・マフマルバフ、マルズィエ・メシュキニ
出演 ミシャ・ゴミアシュビリ、ダチ・オルウェラシュビニ、ラ・スキタシュビリ、グジャ・ブルデュリ ほか
2014年 119分
ジョージア・イギリス・フランス・ドイツ合作


リアリティと寓話性が共存する映画

なかなかに緊張感のある、苦しい映画です。
独裁政権を強いた大統領の視点から、政治とは?統治とは?という大変現実的な問題を投げかけてくる。
実話ではないみたいだけど、とてもリアリティのある話。でもところどころにユーモアもあり、なぜか牧歌的な雰囲気を醸し出してしまうのがグルジア(ジョージア)映画の良いところかもしれない。

映像自体に印象的な部分がありました。
白とびしているような、霞んでいるような色合いのシーンもあれば、コントラストの強い色合いのシーンもある。
クーデターで政権が崩壊する前の大統領時代は、どちらかというと霞んでいるような、ぼやっとした感じ。その後クーデターが勃発して逃亡し、孫と一緒に自然の中に出て、だんだんと視界は鮮やかになっていく。やっと1人の人間として、世界を見れるようになった大統領の心の内を表しているように思えました。

孫と一緒に過ごす日々はもちろん緊張と恐怖の連続だけど、腕相撲をしたり、ウズラの卵を見つけて喜んだり・・・なんだかのんびりした2人に逃亡中ということを忘れてしまう。
でも。
今まで残酷非道な大統領。自分の息子夫婦が殺されたと聞いた時には、つい傲慢な考えが浮かんでしまいます。
しかし実際は何も行動を起こすことなく、無言を貫きました。

終盤、大統領と孫を問い詰める男。群衆は大統領の殺害を望むも、彼が言うのは「殺したって民主化にはつながらない。」という言葉。
その強いメッセージが印象的で、本当にその通りだと思いました。
報復をしたところで争いが終わるわけではない。いつまで経っても平和な世の中は訪れない。

その代わりに、「踊れ」と言われる大統領。
結局、大統領は踊ったのでしょうか?そこまでは描かれていなかったけど、きっと平和のために踊ったであろう、と思いたい。

☆鑑賞日 2016年1月4日


☆余談~あるグルジア映画との共通点~

グルジアというと、どうしても紛争や内戦が多かっただけに、戦争や政治、貧困といったテーマが多いような気がします。
「花咲くころ」(2013年/ナナ・エクフティミシュビリ、ジモン・グロス)というグルジア映画も、争いが絶えないグルジアを生きる、2人の少女の成長を描いた瑞々しい物語です。

「大統領と小さな孫」と「花咲くころ」の共通点は、”「踊る」という行為に込められた抵抗”です。
「大統領~」でも、ラストシーンに孫が踊り、大統領も踊ることを求められます。「花咲くころ」では、主人公のエカが強制的に結婚させられる親友ナティアのために、男性の踊りを踊ることで抵抗を示します。
誰も傷つけることのない抵抗の方法だと思います。武力を使わず、自分の強い気持ちを表す手段としての「踊り」。グルジア(もしくはこの辺りの地方)の文化なのでしょうか。気になります。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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