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映画感想#29 「野いちご」(1957年)

原題 Smultronstallet
監督・脚本 イングマール・ベルイマン
出演 ビクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、ビビ・アンデショーン 他
1957年 スウェーデン 89分



追憶、懐古、そして現実

老医師イーサクの追憶の旅を描いています。
過去と現在の時間軸は行ったり来たりしますが、その過去は追憶の中の過去であると同時に、実際目の前に広がる景色でもあるようでした。
クローズアップされるイーサクの表情は、懐かしさや淋しさそのものを表している。
それが全てでした。
かつての恋人であるサーラが蘇ってくる。失恋の痛みや、青春時代の眩しさ。
老いと共にやってくる懐古という瞬間を、優しく、悲しく映し出しています。

在りし日を思うイーサク

イーサクの夢の中の出来事は、かなりインパクトのあるものでした。
針のない時計。デスマスクのような顔の男。転がり落ち、黒い液体となる。棺から手を伸ばす自分の姿。これだけでも緊張感があるのに、その音がぴたりと鳴り止んだ時の静寂は、恐ろしいほどに美しかった。

夢の描写は様々に解釈できるとは思いますが、映画評論家の北小路隆志さんの説に惹かれました。若さそのものが、夢の中から呼びかけてきているのかもしれない。

おそらく、あの針のない時計は髭のない「顔」に似た何かであり、・・・

イングマール・ベルイマン3大傑作選パンフレット
REVIEW (文:北小路隆志さん)より抜粋

サーラが現代人となって登場してくるのも面白い。彼らの若々しさと対比することで、彼の”老い”というものが浮き彫りになっているようでした。
ラストも、悲しく終わらなかったところが良かった。それによって、映画全体が柔らかく収まっていました。

ベルイマンの映画はシーン自体の強烈さがすごい。まだまだ彼の作品を見てみたいと思います。

☆観賞日 2014年8月3日


投稿に際しての余談 〜映画館にて〜

渋谷・ユーロスペースで見たのですが、劇場に入るのがギリギリになってしまい、最前列で見て、首が疲れました。後悔。そんな映画館の思い出もまた、劇場での映画鑑賞の楽しみの一つです。
以前は、今みたいに事前にネットでチケット買えなかったですからね。料金は高くなったけど、好きな席を事前に確保できるので、便利になった、とは言えるのかな。

▼「第七の封印」(イングマール・ベルイマン):こちらも名作。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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