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経営者の生き様とご飯#8
TECNIUMーテクニウムー
P氏は愛している。
数学を愛している。
科学を愛している。
物理学を愛している。
それが故に数字では表せない、現在の科学や物理学では証明できないことばかりの
彼が存在するこの世界を愛している。
Makingー作るー
朝食を作るのがP氏の休日の朝の楽しみでもあり、自分の脳内のイメージがいかに物体として目の前に現せられるかの確認作業でもある。
オムレツに注ぐ創意工夫。
オムレツを題材にした仮説検証。
静かで鋭利な高揚感を纏い、オムレツが皿へと滑り降りた。
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いつもの朝食を作ってご馳走して下さったP氏
モノづくりが好きな子供だった。
中学時代にはラジコンカーの改造に夢中になっていた。
「ご飯できたよ!」と1階から母親の声が聞こえた後、すぐに自室から出て晩ご飯を食べに降りたつもりが、呼ばれた2時間後だった時には本人も驚いた。
両親から小言を言われた覚えもなく、自由に育った。
校則などは自分を縛るものでさえないと感じていた。
あんなものは取るに足らないものでしかなかった。
その外側にある自由を知っていた。
変えたかったら変えればいいのだ。
作り出せばいいだけの話だ。
その自由がこちらにはある。
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ふわふわのオムレツ!美味しかったです!
Manufacturingー造るー
P氏は父親から受け継いだ、特注工業用ブラシを製造販売している会社を経営している。
手元にあるフライパンと卵を見つめてふと思う。
このフライパンが作られた工場で使われているであろうブラシのこと。
この卵が通ってきたブラシの通路のこと。
世の中の人の目に触れないところで活躍しているそれらを製造している会社の社長であることを誇らしく思っている。
子供の時に見たレースのピットクルーをカッコいいと思ったし、宇宙戦艦ヤマトの真田技師長や、徳川機関長が好きだった。
趣味で弾くのも、バンドサウンドを支える土台となるベースなのだから、そういう気質なのだ。
下支えのカッコ良さに惹きつけられる。
そういう天賦の才を持っているのだ。
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手作りご飯を作っているところを見るのも楽しかったです!
製造しているブラシは、誰かの頭の中にあるイメージを言語化し、設計するところから始まる。
設計するのは技術であり、それを物体としてカタチにするのは技能である。
工業製品は、物体にできるよう設計する技術があり、設計されたものを物体として作り上げる技能を伴い、世に生み出される。
P氏は社長として、会社全体が向かう方向を位置付け、指揮を取り、導き、結果を検証する。
いわば、経営している会社である共伸技研そのものを設計している。
会社の設計図を描いているのである。
社長である自分がイメージできないようなものはカタチにできない。
自分の内側から湧き上がる想いを、従業員である仲間たちが持てる技能を発揮し、時に新たな技能を身に付けながら、カタチにできるよう設計する。
その結果作り出された製品が世の中にソリューションを生みテクノロジーの進化の一助となる。という信念がある。
そうしてブラシの製造を通して作り上げられた成果を仲間と共に喜びあう。
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P社長の机も3Sそのもの!
Creatingー創るー
使命が何かと問われると言葉に窮するが、夢ならある。
後世の自分みたいな誰かが
「これ作った人すげえな。」
といつかどこかで呟くようなモノを作れればと思っている。
そう、例えばあのテーブルと椅子が折り畳みで一体型となっているアウトドア商品のようなものを。
名を残したい願望はない。
ただ、技術を残したい。
シンプルな。合理的な。そして美しい設計を残したい。
そんな思いで日々、設計と、会社経営と、仲間たちと、そして自分と向き合っている。
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設計は、自分の「知識」の総結集に「我」を混ぜ込み生み出される。
普段人が表に出さない内面が見て取れるという点でアート的な側面がある。
時に、生み出された設計を見て、我を知る。
非物資である内なる自分が物質を生み出し、必然と偶然の織りなす世界のイノベーションの一端となる。
オムレツを作ることも会社を経営することも、どちらも完璧に辿り着くことを目的としていない。
たった一つの完璧も正解もあるものではない。
たとえ途上の土に乾こうとも、遥かな地平に想いを馳せ、創意工夫と仮説検証を重ねていくこと。
そして壮大なテクニウムという空間における微細な瞬きとなること。
そうした軌跡を残し繋げていくことにP氏は喜びを感じ今を生きているのだ。
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ごちそうさまでした!
経営者#8
加藤克典さん
経営者のご飯#8
今回はお店ではなく、こちらのレンタルスペースを借りて下さり手作りご飯をいただきました!