黄金と紅に染まる奈良
11月28日(火)
奈良を訪れるのは中学校の修学旅行ぶり。
大人になってもう一度来ることの大きな意味を感じました。
私は新横浜から、友人は愛知から、ご一緒いただくもうお一方は京都から。
現地の法隆寺駅で待ち合わせをしました。
ほんの数時間前の帰宅時に、疲れた顔をして見上げていたお月さまが位置を変えていた。
6:00始発の新幹線でまずは京都へ。
前日は遅番で帰宅時間もてっぺんを過ぎ、始発の新幹線に無事に乗れた安堵からか、いつの間にか眠ってしまっていて。
はっと気づいた時には朝日の昇る車窓に。
京都に近づくにつれて平地でも靄がかかり始め、山々は深い霧に覆われていく。
「曇り時々晴れ」のお天気予報を信じて、潔く一切の雨具を置いてきました。
8:00、京都着!
間髪入れずに奈良線にすぐさま乗り換えます。
絶対に遅れることのできない待ち合わせ。失敗の出来ない乗り換え。
新幹線のホームを降りると、大きな改札が左右に2つあり、どちらも過去に利用したことがありましたが、奈良線に通じる細い改札の存在を知らず、駅員さんに聞いて良かったと思いました。
1つめの関門である京都での乗り換えに成功し、奈良線で木津へ。ボックスシートの進行方向を向いた席に座り、次々と人の降りてゆくローカル線ののんびりとした電車の旅は最高でした。
駅に到着しても、自分で「開ける」ボタンを押さないと永遠にドアが開かなかったりするのも、地方ならでは。そしてドアが開くと靄が入る。
京都を出たときには満員だった車内も、最終的に1両に乗っていたのは私を含めて3人だけ。
温かい飲み物を掌くらいの小さなテーブルに乗せて旅気分を思いきり味わう。
2つめの関門は木津。
どうみてもここが鬼門でした。
乗換案内には、普段表示されているはずの到着のホーム番号は疎か、乗り換えるホーム番号も載っていません。
奈良行きが決まってから、木津駅の構造やホームの数を調べたり、どなたかがあげてくたさっている奈良線や大和路線のことが書かれた記事やブログを読んだり、取り除ける不安はすべて取り除いてきました。
木津駅で電車を降りたあと、一度改札口へ上がる。乗りたい電車と行先を駅員さんに伝えて乗り場を教えていただくと、たった今乗ってきた電車が停まったホームに、これから乗りたい電車が入って来るとのことで、ようやく深く息を吐けた。
木津に辿り着くまではどこか気が抜けず、ずっと緊張状態が続いていたので、支えが取れるとゴールの法隆寺駅もいよいよ見えてきて、高揚を隠せませんでした。
ところで。
旅に出ると、記事が進みます。笑
中途半端なまま抱えるいくつもの記事、ちょこちょこと合間をみつけては書き進める前の旅の記事が、移動中のまとまった時間でかなり進むからです。
旅に出ると、前の旅の記事の投稿率があがるということに気づきました。
参道に続く松の木が、ぽつぽつと降る雨から私達を守ってくれました。
記憶力に自信のある私でも、この参道を歩いた記憶が全くなく。一度通ったことのある道を歩くと大抵記憶が蘇るのですが、大きなバスに乗ってわいわいと団体で来たからか、おそらくきちんと参道を歩かずに駐車場からの脇道で南大門へ来たのでしょう。
“参道からきちんと歩きたい”は、今の私には譲れない最大の礼儀と感謝。大人になってから無礼を回収できて本当に良かったです。
数年後にはまさかご縁があって『お寺』に長く勤めることになるなんて、当時の私には知る由もなく。
柿を練り込んで打った『柿うどん』というものがあるということを、旅の前に友人から教えてもらい、ものすごく気になっていました。
今回の旅では行きたいお店が他にあったので、次の機会にはぜひ食べてみたいです。
参道へ入って少し進んだあたりでさっそく鐘の音が聴こえてきました。
思い浮かぶ俳句はたったひとつ!
『柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺』
家庭科の授業で作ったと思われるお揃いのデザインのリュックを背にした修学旅行生と一緒になりました。
私も作ったなぁ…!と急に懐かしくなる。紐1つ選ぶにも色で迷ったりして。
出来上がったリュックに荷物を入れて臨む旅だなんて、どんなに楽しいでしょう。
同行のカメラマンさんも、グループごとに動く生徒を撮るのに行ったり来たりと大忙し。
私達の時代の修学旅行時は、グループごとにフィルムカメラを持たされたよね、なんてジェネレーションギャップを感じるお話も飛び出しました。
砂紋で整う場所はどうも踏んではいけない気になり。
慣れた現地のガイドさんは臆することなく入っていかれていました。
回廊の連子窓に閉じ込められた紅葉にうっとり。
一陣の風が吹き抜けると、カサカサと枯れ葉の走る音とともに松の木の低く唸るような風鳴りが耳に届いた。
葉っぱばかりを眺めてしまう。
お日様も出てきました!
東院伽藍へ向かう、東大門と四脚門の間で見かけました。
引率の先生からの問題に、
「桃!」「柿!」と子供たちの元気な声。
「答えは、ドラゴンボールです」と先生。笑
違う門ではドラゴンボールとおなじ高さと場所に鯱も配置されていました。鯱がなぜお城やこのような重要な建築の門上に戴くのか、その由来や意味も小学生に便乗して学びました。
門を出て、住宅街をしばらく行く。
法隆寺→長谷寺は少し離れているので、先に昼食に。
中央に集められた枯れ草や木の葉の山。
どんど焼きやお芋を焼いてみんなで集まった幼少期の光景が懐かしく目に浮かびました。
こちらで玄米を炊いたり玄米餅用のもち米を炊くのだとか。
お餅も店内でのつきたてを出してくださるそうです。最高!
ランチは2種類から選びます。
お味噌汁と、
炊きたて 焼きたて 揚げたての
玄米ご飯と玄米餅と唐揚げも加わる。
お出汁からすべて、ヴィーガン仕様です。
ヴィーガンの方は動物性のゼラチンも摂取しません。こういったデザートには必ず寒天を使います。
少しずつたくさんのお品数を食して、玄米でかなりお腹も膨れました。
このあとの長谷寺ではさらに草餅を食べる予定であることを恐る恐る明かすと「食べましょう!別腹よ♪」と返ってきて、その場が笑いに包まれた。
再び雅な玄関とお庭をもう一度ゆっくり拝見しながら敷地をあとにする。
先程出たお料理に使われていた柚子はすべてこのお庭で採れたものだと伺いました。素敵。
法隆寺駅までは徒歩で戻りました。
そこから長谷寺を目指します!
途中、長谷寺目前の乗り換えの駅で土砂降りになりました。
雨雲レーダーをみてみると、このあと少しだけあがって、また土砂降りになるようで…。
誰でしたっけ、
お天気予報を信じてすべての雨具を潔く置いてきた人は…!笑
長谷寺のどこかのお土産物屋さんのきっと鮮やかな柄の傘を買う覚悟を、この時点で決めました。
電車に乗ってからも降り続いていた雨。
なんと!現地はあがっていました。
そして空気が一気に変わりました。
一段と冷たく、法隆寺では途中から邪魔もの扱いして外していたマフラーが、ここにきて急に大活躍です。
奈良で有名なお土産と言ったら…?
の質問に、奈良漬と鹿せんべいしか出てこなくて笑いました。鹿せんべいはもはやお土産ではない。笑
柿の葉ずし、三輪そうめん、髭茶も!
よもぎ麩もとっても美味しそうでした。
草餅を蒸す湯気の上る門前通りをゆき、長谷寺到着。
仁王門をくぐり、登廊スタートです!
上り続ける登廊途中の紅葉や桜に癒やされる。
参道と門前通りを戻ります。
草餅屋さんが数ある中、
行きに湯気の上っていたお店の草餅に決めました😋
ふわっふわのとろとろ!
たっぷりと練り込まれたよもぎの香と焼き目の香ばしさ。ぺろりでした。
行きが下りで楽々だったということは…!
最後に待ち構えていたのは、坂と階段です。
登廊も上りましたが、帰りの長谷寺駅までも坂と階段を上ります。
電車に乗って少しすると再び土砂降りに。
鮮やかな和柄のお土産物用の傘を買うこともなく、雨雲と雨雲の間で長谷寺を巡ることができました。本当に感謝です。
鹿に逢うことはありませんでしたが、
たくさんのお土産とお土産話を引っ提げて帰ってくることができました。
二十年以上の時を経て再び踏むことのできた奈良。次に来るのは何年後になるでしょう。誰と来るのかな。
懐かしさと大人になってから改めて訪れることの新鮮さ、心が洗われた忘れられない1日になりました。