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私たちはどう生きるか:Netflix「今すぐ購入」を観て

いっちーです。この記事はアーバンジャングルクラファンのリターン(長文レポート)として書いています。

(これまでの経緯)
かつて存在していた伝説的なシェアハウス、モテアマス三軒茶屋。爆破した破片として誕生したのがアーバンジャングルというシェアハウスだった。新宿徒歩104分という好立地に爆誕した、8LLDDKKという複雑怪奇な間取りからも分かるジャングルには、今日も愉快な仲間たちが集っている。
去年6月にご縁で拾われ住まわせてもらった私は、7月に始まった旗揚げクラファンにご恩でリターンの立候補をしたのでした。

(指定のイベント等の希望がない方が多く、今回はそのうちの1人に充てさせていただきます)

昨年11月に公開されたNetflixのドキュメンタリー「『今すぐ購入』購買意欲はこうして操られる。(Buy Now: The Shopping Conspiracy)」を観た感想です。

お金がないから意識すること

ことの発端は友人に6万円ほどかかるツアーに誘われたことです。お金がないことを理由に断った際に、このドキュメンタリーを紹介してもらいました。

ようやく観る機会に恵まれ、思うことがたくさんあったのでFilmarksにてレビューを書いていたら1,000字を越えてしまいました。そこで加筆修正をしてnoteになりました。

内容についてはこちらの記事がよくまとまっていたので、観る予定がない方はどうぞ。

以下は感想になります。ネタバレがあっても楽しめるので、まだ観ていない方も読んでみてください。

立派な彼らと、素朴な私たち

ドキュメンタリーでは、ナレーションのAIが売り上げを上げるために消費者に購入させる方法を紹介しながら、一方でその負の側面をかつて大手ブランドで働いていた人たちが話している。

インタビューを受けていた彼ら(元Amazon UXデザイナーや元adidas役員)は“お金を持ち終わった”(レビューにあった面白い表現だったので使わせてもらった)後と感じた。そして大量の“ゴミ”を作ることに加担してしまった罪悪感が環境保護活動をする原動力になっている、とも感じた。

プラスチックは毎秒12トン生産されている

でもそうでない人は??日本でも普通に働いている人は、その対価として給料をもらっているのであって、ものを買うことはもはや当然の権利と捉えるだろう。そして生活必需品や衝動買いしてしまったもの以外にも、自分の見え方、ステータスに影響するものがたくさんあることを知っている。

おしゃれに見られたい、中古はみすぼらしい/汚い、誰かと共有するのは面倒くさい(1人1つがいい)。そういう素朴な感覚は否定すべきものではないと思う。でも同時に、そういう感覚は、この大量消費の時代に強化されたものだとも思う。

私たちはどうすべきか?一つの提案

利益を最大化して裕福になるためには「もっと売れ」「捨てさせろ」「ウソをつけ」「真実を隠せ」「洗脳しろ」…、その結果もたらさせた衝撃的な光景を見てしまったあと、私たちはどうすれば良いのか?

一つの実践方法は、お金を最低限しか稼がないこと。私自身がそうだけど、限界まで切り詰めていけば、本当に必要なものしか買わなくなる。シェアハウス暮らしだから家具は買わないし、服は古着屋で安いみっけもんを買う。化粧品もほとんど買わなくなった。メルカリをよく使うし、自分も売りに出す。時々ジモティも使う。待っていれば欲しいものを譲ってくれる人が現れるものだ。衝動買いしていた本も基本的に図書館で借りて、どうしても欲しくなった時だけ買うようになった。

それでもiPhoneやMacは使っているし、環境破壊には日々小さく加担している。

そして私はフリーターだから生活は不安定だし、社会的な成功はしていないので、憧れとか真似る対象にはならないだろう。

代わりのフィクションは?

例えばものをシェアして資源を節約できるシェアハウスで一緒に暮らして濃い時間を共にした人でさえ、住む目的はそれぞれで、深いところの価値観は相容れない。私は今もこういう価値観を持って住み続けているけれど、一方でひとたび稼げるようになれば、退去する人も多い。

仕事を頑張って会社の売上を上げれば裕福になれるという言説自体がフィクションで、私自身は金銭的に裕福になりたいモチベがほとんどないけれど、それに代わるような魅力的なフィクションは用意されていない。

普通は、都合の悪い事実よりも耳障りのいい、キラキラしたフィクションを信じたい。どうしたって普通に日本で暮らしているとそういう光景は“隠されて”いるわけで、気にせずに死ぬまで生きていけるし、それよりもおしゃれがしたいしモテたいだろう。たまたま眠れない1時間半をこのドキュメンタリーに割いたからといって、しばらくしたら忘れてしまうだろう。

ディストピアはこの世界かもしれない

そういう素朴な私たちも加担する大量消費社会で、今この瞬間にもものが大量に作られて大量に捨てられている。それが大気や海を汚染して、自分たちの健康や生活に少しずつ影響しているのは、もう星新一の「おーいでてこーい」の世界と一緒だと思った。いや、一生気づかなくても生きていけるという点ではもっとディストピアかもしれない。

アイヒマン“たち”

もう一つ、この動画を観てアイヒマンはこの世にたくさんいるし、アイヒマンにも良い顔がある、と感じた。

アドルフ・アイヒマンはナチスにおいて親衛隊の将校をしていた人物で、アウシュビッツ強制収容所へのユダヤ人の移送を指揮し、数百万人のユダヤ人の虐殺に関わった人物。

『エルサレムのアイヒマン』とは|アーレントの議論をわかりやすく解説

ユダヤ人の絶滅や、会社への忠誠があるにしろそうでないにしろ(アイヒマンは法廷では自身の行為を職務への忠誠からだと言っていたが、実際はユダヤ人絶滅に強い信念を持っていたとされている)、組織にいると何かしらへの悪に加担していることがある。

Amazonで15年もの間UXデザイナーとして貢献した彼女を「抗議活動が規約に違反した」として一瞬でクビにした人事はつまり会社を信奉しているということだけど、解雇された彼女だって、知らず知らずに環境への悪事を働いていた。そのことに気付いて行動し始めるまでは、やっていることは人事と同じだった。

マレン・コスタ(元Amazon UXデザイナー)

それに大手であればあるほど、世界に与えるポジティブな影響もたくさんある。Amazonのおかげで世の中は確実に便利になっていて、漏れなく私もその豊かさを享受している。買い物に充てるべきはずの時間でこんな風に文章を書くことができる。100%悪とは言えない。

それに大手は(たくさん買ってもらうための仕組みが整っているから)ものすごい大金が動いていて、その中で上に行けば行くほどたくさん稼げる。このドキュメンタリーやこのnoteに辿り着かないまま、それを目指す人は存在し続ける。アイヒマンは生まれ続けるのだ。

果たして世界はどうなっていくのだろうか。私は筆を取らずにはいられなかった。

ぜひ本編も観てみてください。

文責:市村彩(元アーバンジャングルインターン 過去の記事はこちら)

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