【読書メモ】戦争で死んだ兵士のこと
今はのどかな森の湖のほとり
1人の兵士が死んでいる
そこからはじまる物語です。
黒い線だけで描かれた絵。
死んでいる兵士。
ページを捲るとその兵士の数時間前、数日前、と時間が遡っていきます。
そこで死んでいる兵士は、確かに生きていて、誰かを愛して、愛されていた。
この本は、多くを語りません。
そこで死んでいる兵士が、そこで死ぬまで、何をしていたか、何をしてきたか、淡々と綴ってあるだけです。
ですが、ページをめぐるたびに重くて悲しく、たとえそれが楽しいシーンだったとしても、いやそうだとしたら余計に苦しく写ります。
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人の命とは。。
『あの戦争で十万人の兵士が亡くなりました。』
『震災で◯万人が犠牲になりました。』
その膨大な数字は想像を曇らせてしまいますが、みんな確かに存在して、自分と同じように日々を暮らしていたわけです。
私は持ち前の想像力と言いますか、妄想力と言いますか、昔から感情移入しやすいんです。
思いを馳せてしまうんです、誰かの大切な人だったその人、明日の予定があっただろうな、食べようとしてたお菓子があったんじゃ?など、つい考えてしまいます。
戦争という愚かな行為の普遍性。この本はそれを独特なテキストと、線描写で描くシンプルな絵によって読み手の想像を掻き立てます。
一方、だれも特別ではない、私もあなたもみんな同じように生まれ死にゆくわけだけれど、その日々はとても呆気なく幕を閉じることがあるかもしれない。
毎日を大切に生きることの愛おしさも考えることができる本でもあります。
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物語は、1ページ目から始まるばかりではないんですね。
大変深い悲しみを感じるのですが、何度も読んでは新たな考えや気持ちが湧くんです。
とても短いので読むのは2〜3分です。
ですが、読み解く、想いを巡らせることは無限にできる、かなりの読み応えがある物語。
こんな本を、学級文庫などにおいて欲しいなとおもいました。
この短さで、こんなにも多くのことを考えたのは今のところこの本しかありません。
大変おすすめの一冊です。
子供から大人までたくさんの人に手に取って欲しいなと思ってます。
ここまで読んでいただき
ありがとうございました♡